「アイガモ農法」をご存じでしょうか? 私は少し前テレビ番組で見て知ったのですが、農薬を使わずにアイガモを使ってお米を育てる農法のことを言います。
アイガモは雑食性で、水田にアイガモのヒナを放すと、ピチピチと泳ぎながら稲の敵となる害虫や雑草を喜んで食べてくれます。また、そのフンは肥料となり土を豊かにし、水が掻き回されることで稲の成長を促すそうです。農薬を使わないので稲だけでなく水田周辺の環境にもやさしく、また、お米と同時にアイガモも育てられ、最終的に食肉として出荷できるのです。
この農法を実践しているのが、福岡在住の“百姓”古野隆雄さんです(古野さんはご自分のことをあえて百姓と呼びます)。番組は2ヶ月間古野さんに密着取材し、アイガモ農法だけでなく、古野さんの生き方、信念を紹介していました。「農薬を使わない」と決めてからの試行錯誤は大変なもので、奥さんと二人、朝の4時から夜の9時まで、ひたすらに手で雑草を抜き続けたこともあったそうです。
真っ黒に日焼けした古野さんがアイガモを見つめるその瞳は優しく、アイガモ農法を「一鳥万宝」と話す笑顔には、信念を貫いてきた折れない強さを感じました。
その古野さんが学生時代に出逢い、「無農薬で米や野菜を作りたい」と決意したきっかけが、有吉佐和子さんの『
複合汚染』だったそうです。30年以上前に書かれたこの本ですが、冷凍餃子事件など食品汚染が騒がれている昨今にも通ずるところが多々あり、時代を感じさせません。
お米に虫がわかなくなったのは防虫剤のおかげ。ティーバッグの紅茶が二杯目からは味も香りも薄れていくのに色だけは濃く出るのは、着色料がしっかりと含まれているから。日常で感じた疑問から、有吉さんご自身(「私」)が学者・農家・医者・技術者など多くの専門家に話を聞き、専門書を読みあさる“ノンフィクション”的な部分――表やグラフもたくさん出てきます――と、「私」が「横丁の御隠居」――環境問題に敏感な、という設定――と交わすユーモア溢れる“会話”がうまく混ざり合って、専門的なことをオモシロく分りやすく理解することができます。
BHC、DDT、水銀農薬、排気ガス、ディルドリン。農業だけでなく水質汚染や排気汚染、食品添加物など環境全般に話は及びますが、私が何より恐ろしくなったのは、「複合汚染」ということそのものでした。単体では悪影響のない毒性物質も、例えば体内に蓄積され他の化学物質と相乗的に作用し、人体に影響を及ぼす「複合汚染」は、現代人の誰の身にも起こり得る現象なのです。実際のところ、私は何を食べているのだろう……と、恐怖さえ感じてしまいました。
有吉さんは、この著書の目的は「告発」でも「警告」でもなく、少しでも多くの人に「現実」を知ってもらうことで、「私は、あとは祈りたいという気持でいます」とあとがきを結んでいます。有吉さんが込めた祈りは古野さんへと届き、この本が書かれた30年後の今、アイガモ農法は世界に広まっています。
「yom yom」編集部(M・T)