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yom yom ヨムヨム 23号 特別定価:780円(743円)

村上春樹・安西水丸『日出る国の工場』

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 今月27日のvol.11発売に向けて、目下編集作業の真っ最中です。
 作業が佳境に差し掛かると、昼夜逆転した生活が続きます。家に帰るのが明け方になることもしばしばなのに、そういう時に限って、翌日余計に辛くなると分りつつも、しばらく積んだままになっていた本やDVDについ手が伸びてしまいます。枕元に積んだ本の中には、予約して買った村上春樹さんの『1Q84』もありますが、これに手を伸ばすのだけは我慢しています。まっさらな状態で読みたいので、書評やネットの評判はもちろん、すでに読んだ人の話もなるべく聞かないよう、聞きたいけれど耳に入ってこないようにして、vol.11が出来上がったらじっくり読もうと今から楽しみにしています。 

 私が本を読むようになった頃には、村上春樹さんはすでに“ハルキムラカミ”として、日本はもちろん世界中に読者をもつ作家でした。私も多くの愛読者の例に漏れず、その小説世界に熱中し耽溺しましたが、小説だけでなく、イラストレーターの安西水丸さんとタッグを組んだエッセイ「村上朝日堂」シリーズも、小説とは違う春樹さんの愉快な一面に触れられるようで、夢中になって読んだ記憶があります。

 特に好きだったのは、『日出る国の工場』です。
「××はいったいどういう工場でどんな風に作られているんだろう?」という春樹さんの純粋な好奇心から選んだ7つの工場――人体標本工場、結婚式場(これは式場そのものの工場性に魅せられて)、消しゴム工場、酪農工場、コム・デ・ギャルソン工場、コンパクト・ディスク工場、アデランス工場――を水丸さんとともに見学します。
 が、そこは春樹さん。ただの探訪記ではありません。
 例えば結婚式場の章では、架空のカップルを作り上げて、結婚式の段取りが決まっていく様子を描いたりもします(新郎・鈴木力、新婦・沼津みどり、式場担当者・荒木、という設定)。
 荒「えーと。十月十二日の日曜日というお申し込みでございますね、人数は八〇名様と……、少々お待ち下さい。ぱらぱら(と予定表をチェックする)、はい、大丈夫です。いちばん大きい『慶雲の間』があいております」
 力「あー、よかった。十月の日曜日で大安だからもう駄目かと思ったんだけど」
 荒「ただお時間が午前の部しかあいておりませんので、一〇時半挙式、一一時半から御披露宴で、二時間半でお開きということになりますが……」
 力「ま、いいんじゃない?」
 み「仕方ないわね。焼津から来る人は大変そうだけど」
 力「ま、仕方ないね。じゃあ、それで決めちゃいましょう」
と、架空の打ち合わせは進んでいき、二人は無事に結婚するのです。実際の取材と春樹さん独特の妄想とがうまく混ざり合っているようで、思わず笑ってしまいます。
 
 また、春樹さんは消しゴム工場を見学されてまず思ったこととして、世界はだんだん我々の理解不能な方向に進みつつある、というようなことを書かれています。この取材をされたのは1986年ですが、これより2年前の1984年を舞台に描いた『1Q84』は、果たしてどのような物語になっているのか。今号が落ち着いたら、いち愛読者として確かめてみたいと思っています。

「yom yom」編集部(M・T)

2009年06月15日
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