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国家の尊厳

先崎彰容/著

924円(税込)

発売日:2021/05/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

誇りある国として、生き延びるために。令和日本の道筋を示す、堂々たる国家論、誕生!

尊厳ある国へ――令和の時代、日本が誇りある国として生き延びるには、この道筋しかない。憲政史上最長に及んだ安倍政権を引き継いだ菅政権は、国家観を持たず、危機管理能力に疑問符が。世界ではグローバリズムが浸透し、中国に象徴される「力」が横行、アメリカの「自由」と「民主主義」は大きく揺らいでいる。混沌とした状況下、国は、個人は何に価値を置くべきなのか。ポストコロナを代表する堂々たる国家論の誕生。

目次
序章 アイデンティティーがゆらぐ日本
第一章 コロナ禍で対立した「二つの自由」
マイナンバー制度と人海戦術/自由をめぐる二つの問い/モイセス・ナイム『権力の終焉』/「障壁の消滅」/「3M革命」とは何か/「3M革命」がもたらす三つの危機/多頭化する権力、絶対化する私権/自由と義務のジレンマ
第二章 私たちは世界に素手で触れたい
野党とメディアの視野狭窄/「戦後民主主義」と「新しい民主主義」/丸山眞男の限界/「戦後のアイデンティティー」の危機/居酒屋店長の嘆き/政治家よりもYouTuber/「Anywhere」と「Somewhere」/不安な人びとのカリスマ/攻撃性と「遅さ」への嫌悪/非常事態とシュミット「例外状態」/異質なものの排除と殲滅/独裁ですらなかった安倍政権
第三章 空っぽなポピュリズム大国アメリカ
時代状況を背負った長期政権/TPPをめぐる「二つの保守」/中国を取り囲む経済戦略/レーガニズムからトランプ現象まで/アメリカの「保守主義」/「速度」を求めるポピュリズム/「アメリカ的」なるものの終焉/「ポスト・安倍的」という意味/ギリシアの歴史へ遡る/共同体を担う竈の火が聖火である/都市国家の王とデーモス/心をかき乱されるデーモス/グローバル化がもたらす害毒/戦後社会におけるデーモスたち/「戦後レジームからの脱却」の真意
第四章 戦後民主主義の限界と象徴天皇
陛下の「お言葉」/『国体論』に見る矛盾/三島由紀夫vs.東大全共闘/共通する戦後への懐疑と拒絶/自由民主主義陣営vs.中国版G77/戦後日本の三つの特徴/「文化概念としての天皇」という処方箋/「美的一般意志」としての天皇とは/「分裂」した人間/『社会契約論』が持つ意味/『金閣寺』に見る政治的主張/「行動」と天皇/自由と民主主義に代わる価値
第五章 自助・共助・公助とはなにか
理念型・安倍から実務型・菅へ/菅政権の三つの特徴/防災省提言に見る新たな国家像/暴力化する現代/「神話的暴力」と「神的暴力」/「〜からの自由」と「〜への自由」/フリーランス賞賛、非正規の不安/野球選手の例/進歩・変革・有用性の時代/オークショットが恐れたこと/オークショットの保守主義/ふるさとを捨て続ける歴史/他者へ寄り添うための「自助」/「互助」という思想
第六章 社会から正当な評価を受けたい
権力批判の耐用期限/「令和日本のデザイン」へ/地方創生とグローバル化/山崎正和『柔らかい個人主義の誕生』/自己決定は不安をともなう/三〇年間変わらない「ふるさと創生」/閉塞感と「中抜き」の思想/効率性は社会の目標か/孤絶した大衆、全体主義の誕生/大衆の三類型/社会からの正当な評価/コモン・センスとは
終章 国家の尊厳
令和日本のデザイン/「尊厳」なき時代/反原発デモという「行動」/「行動」は個人で行うべきもの/国を閉じるという精神の構え/日本社会の脆弱性/尊厳とコモン・センス/しなやかな社会とは/アメリカとは異なる国家像/「普遍性」という暴力/西側に対抗する歴史/尊厳ある国へ
ふるさとの尊厳――少し長いあとがき
注釈および引用・主要参考文献

書誌情報

読み仮名 コッカノソンゲン
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-610908-9
C-CODE 0231
整理番号 908
ジャンル 政治・社会
定価 924円
電子書籍 価格 880円
電子書籍 配信開始日 2021/05/17

インタビュー/対談/エッセイ

令和日本のデザイン

先崎彰容

 僕らは、身の回りで起きている出来事を「常識」に従って判断している。例えば三日前に買った刺身の色が悪い。匂いも変だ。食べたら腹を壊すかもしれない。この時、色と匂いを参考に、僕らは危険を避けている。生き延びるために、人生で培ってきた「常識」を参照している。
 刺身と人生を並べるとは何とも大袈裟な話だが、政治や外交という生ものとなると、話は真剣さを帯びてくる。僕らは目下、三回目の緊急事態宣言の渦中にいて、「コロナ疲れ」あるいは「宣言慣れ」してしまっている。だが一回目の発令当時は、全く違う緊張感があった。新宿駅からは人が消え、僕らは要請に従っていたからだ。戦後初の緊急事態宣言発令を行ったのは、歴代最長政権の座にあった安倍晋三氏である。野党は宣言発令の可否をめぐり、発令以前は権力行使反対、発令後は後手の対策糾弾と、チグハグな批判に終始した。だが、こうした表面的な与野党の批判合戦を超えた視点、戦後日本全体を見渡す視点が必要だと、僕は考えていた。
 それが「戦後日本の常識」が通用しない時代が来た、という視点である。
 単純化して言えば、「戦後日本の常識」とは、二つに分けられる。第一に権力vs.市民という図式で政権批判をくり返すこと。第二に自由と民主主義というアメリカの価値観を自明視することだ。新型コロナ禍が僕らにとって深刻な事態なのは、この「常識」、戦後七〇年以上のあいだ、僕らが周囲の出来事を理解し、善悪の判断をくだしてきた「ものさし」が通用しなくなったことにある。
 いくつか例を挙げてみよう。例えば安倍政権は独裁政治を行っていると、くり返し批判されてきた。だが新型コロナ禍が明らかにしたのは、全く逆の事態であった。感染症対策の多くの権限は、実は地方自治体の長と各地域の保健所が行使できることになっている。つまりコロナ対策の主導権は、政府の側にはなく、地方自治体にあった。東京都知事や大阪府知事が連日、マスコミに登場するのも、彼らの判断が大きな影響力を持つからなのだ。
 また僕らは、コロナ禍の渦中で、アメリカ大統領選挙と、激しい米中対立を同時に目撃した。言うまでもなく、アメリカは自由と民主主義のリーダーである。しかしコロナ禍で明らかになったのは、自由と民主主義を重視する先進諸国が軒並み「ロックダウン」という強権発動を行い、中国同様の政策を強いられたことだ。自由と民主主義を「常識」とみなし、それを叫んでいるだけでは、もはや世界を正確に理解できない。そんな時代がやってきたのである。
 こうした、何ともシンドイ時代には、何が必要なのか。僕らはどんな「新たな常識」に切り替えていくべきなのか――「尊厳」というキーワードこそ、令和日本のデザインにふさわしい。こんな思いで『国家の尊厳』を世に問う次第である。

(せんざき・あきなか 批評家・日本大学教授)
波 2021年6月号より

担当編集者のひとこと

ポストコロナへ、令和の国家論

 我田引水のようですが、近年の国家論と言えば、やはり藤原正彦氏の『国家の品格』(新潮新書)が思い浮かびます。2005年に刊行され、270万部の驚異的ベストセラーとなった同書は、平成を代表する作品として今なお読者を獲得し続けています。
 その後も自社・他社を問わず、多くの国家論が様々な著者によって書かれてきましたが、残念なことに、それらの中で指摘あるいは提起された問題の数々は、解消されるどころか大して改善もされないまま、歳月ばかりが過ぎていくような印象があります。
 しかし、昨年来続くコロナ禍は、国境の機能や権力システム、自由と民主主義など、近代国家を形成してきた根本的な考え方にまで、大きな変更を迫っているように見えます。
 本書では、深化し続けるグローバリズムとアメリカ社会の分断、憲政史上最長となった安倍政権や菅政権を分析することで、「戦後」日本の限界を明らかにします。思えば、『国家の品格』とは、その国の人間の品格を問う内容でもありました。それに倣えば、そこで暮らす人々の「尊厳」をいかに守れるのか、暴力化する時代に令和日本が生き延びる道筋はどこにあるのか——東西の思想家の言葉を手掛かりにそれを考え抜いた、渾身の国家論の誕生です。

2021/05/25

著者プロフィール

先崎彰容

センザキ・アキナカ

1975年、東京都生まれ。東京大学文学部倫理学科卒。東北大学大学院文学研究科博士課程を修了、フランス社会科学高等研究院に留学。2024年5月現在、日本大学危機管理学部教授。専門は倫理学、思想史。主な著書に『ナショナリズムの復権』『違和感の正体』『未完の西郷隆盛』『維新と敗戦』『バッシング論』『国家の尊厳』などがある。

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