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人気のないホームは、どこか白々しく、スコーンと抜けたように見えた。
まいったなあ……と、綾佳は、そのガランとしたホームを一番奥まで歩
いた。タイルの壁に背中を押しつけ、ふう、と息を吐き出した。
ミチコのやつ、今度ぜったいニードロップをくらわせてやる。自分だけ、
男捕まえて「じゃあ」だって。あったまにくるなあ。
だから、コンパなんて嫌いなんだ。苦手なんだもの、ああいうの。
なんて言ったっけ、あの男――。
綾佳は、ポシェットの口を開けながら、送ると言い続けていたパズ研の
男の名前を思い出そうとした。
パズ研だって。パズル研究会?
綾佳は、クスッと笑った。
信じられないわ、そんな研究会に入ってる男。
「ダッセー!」
周囲に人がいないのを幸いに、綾佳は声に出して言った。
「だせえ、だせえ、だせえ」
ポシェットから、男に渡された紙切れを取り出した。
「これ、よかったら、解いてみませんか? 暗号クイズなんですよ」
男は、そう言いながら綾佳にこの紙切れを渡した。
そんなアプローチって、ある? 暗号クイズだって!
綾佳は、男の口調を思い出しながら、クスクスと笑った。
紙切れを拡げると、ワープロで打った文字が並んでいた。あのパズ研が、
自分で作ったクイズなのだそうだ。そういうのを作るのが趣味なんだって。
ああ、信じらんない。
プリントされた問題は、3問あった。上から、レベル1、レベル2、レ
ベル3と書かれている。
ふう、と綾佳は、また息を吐き出し、そのレベル1の最初の問題を読ん
だ。
【EXLI IBXVE XIVVIWXVMEP】は
【THE EXTRA TERRESTRIAL】であり、
【WCKJA SEPD PDA SEJZ】は
【GONE WITH THE WIND】である。
では【QIJQDT RO CU】は
何を表わしているのだろう?
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なに、これ?
綾佳は眼を瞬いた。
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