23:58 - INARICHO - Tommy Echigoya

<BODY BGCOLOR="#222222" TEXT="#FFFFFF" LINK="#FFFFFF" VLINK="#FFFFFF" ALINK="#FF0000"> 　　　<A HREF="../inde/i58c.htm"><IMG BORDER=0 SRC="gif/tab-i.gif" ALT="インデックス"></A> <A HREF="../inde/cast.htm"><IMG BORDER=0 SRC="gif/tab-p.gif" ALT="人物インデックス"></A> 　　　　　　　　<A HREF="359cc014.htm"><IMG BORDER=0 SRC="gif/tab-n.gif" ALT="次の時刻"></A> <P> <H2>　　<IMG SRC="icon/014-b.gif">　23:58　稲荷町駅　越後屋トミー</H2> <HR SIZE=3> <TABLE BORDER=0 ALIGN=CENTER CELLPADDING=0> <TR> <TD>　　　　　　　　　　　　</TD> <TD> 　むろん、この《越後屋トミー》という名前は、[o:oo:..OO.]――つまり、<BR> この惑星のホモサピエンスどもの慣習に倣って仮につけているものであっ<BR> て、彼生来の識別コードではない。<BR> 　<BR> 　故郷へ帰れば、彼には[.oOo.oOo.]という立派な個体識別コードがある。<BR> ホモサピエンスどもには、まず発音のできない優美な波形を持ったコード<BR> である。<BR> 　<BR> 　第二次調査隊の一員として派遣されることが決まったとき、[.oOo.oOo.]<BR> は派遣地のデータから最もポピュラーな名前を選択し、組み合わせること<BR> によって《越後屋トミー》と名乗ることにした。まずもって、実に自然な<BR> ネーミングであったと、自らこれを評価している。<BR> 　<BR> 　トミーは、岩石を切り出してタイル状に張り合わせた床の上へ降り立ち、<BR> 慎重に自分の座標を確認した。計算に間違いがなければ、現座標は地下鉄<BR> 銀座線稲荷町駅第１番線ホームであるはずだ。<BR> 　まずは、地下鉄ホームというものの形状を正しく把握しておかなければ<BR> ならない。<BR> 　<BR> 　ほぼ直線に形づくられたホームの端から端までを、トミーはゆっくりと<BR> 移動した。途中で気づいて、ホモサピエンスどもの二足歩行による移動に<BR> 切り換えた。現在、このホームに奴らは１匹も存在していないが、やはり、<BR> 用心に越したことはない。なにせ、奴らは、ほとんど無能な生命体でしか<BR> ないくせに、きわめて獰猛な行動パターンを有しているのだ。<BR> 　<BR> 　トミーは、第一次調査隊が捕獲してきたホモサピエンスのサンプルが、<BR> 結構気に入っていた。<BR> 　<BR> 　なかなか美味だったのだ。<BR> 　<BR> 　特に、奴らが自ら「脳」と呼んでいる部分は、すこぶるおいしかった。<BR> 無能な生命体にも、なにか有用なところはあるものである。「眼球」もな<BR> かなかのものだが「脳」のとろけるようなおいしさにはかなわない。ただ<BR> し、「肝臓」だけはけっして食してはならない。奴らの「肝臓」は猛毒な<BR> のである。<BR> 　<BR> 　ホームの一番端まで移動して、トミーは、ふと、足を止めた。<BR> 　壁際に寄せて、細長い金属製の容器が二つ並べて置かれていた。<BR> 　休息機の形状に似ているが、かなり不潔であるし、報告にあった奴らの<BR> 休息機とは別のもののような気がした。<BR> 　見ると、容器の表面に赤い「文字」が書かれている。ホモサピエンスど<BR> もは、線を組み合わせた図形を用いて共振活動を行なっている。その図形<BR> のことを「文字」というのである。<BR> 　<BR> 　手前の容器には「防水板格納函」とあり、奥の容器には「防水板格納箱」<BR> とあった。<BR> 　<BR> 　奴らの腕時計に似せて作られた特別仕様のサーチパネルに、データを呼<BR> び出してみる。<BR> 「防水」とは水素と酸素の化合物からの攻撃を回避するためのシステムを<BR> いうものらしい。「板」とは、この惑星に存在するもっとも穏やかな生命<BR> 体を殺して作られた平面体。「格」とはクラスの意味であり、「納」は物<BR> 体を開かれたスペースから閉ざされたスペースへ移動することである。<BR> 　<BR> 　ここで、トミーは、やや戸惑った。<BR> 「箱」は、どうやら容器のことであるらしいのだが、「函」のほうは、不<BR> 明、という結果しか得られなかったのだ。<BR> 　<BR> 　しかし、トミーは、この二つの容器の発見に満足した。<BR> 　ホモサピエンスの弱点を知ることができたからだ。<BR> 　<BR> 　奴らは、水素と酸素の化合物からの攻撃に弱いのだ。<BR> 　だから、こうして「防水板格納箱」といったものを置いているに違いな<BR> い。<BR> 　<BR> 　トミーは、一つうなずいた。<BR></TD> </TR> </TABLE> <HR SIZE=3> <P> 　　　<A HREF="../inde/i58c.htm"><IMG BORDER=0 SRC="gif/tab-i.gif" ALT="インデックス"></A> <A HREF="../inde/cast.htm"><IMG BORDER=0 SRC="gif/tab-p.gif" ALT="人物インデックス"></A> 　　　　　　　　<A HREF="359cc014.htm"><IMG BORDER=0 SRC="gif/tab-n.gif" ALT="次の時刻"></A> <P> </BODY>