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音楽

三島由紀夫/著

605円(税込)

発売日:1970/02/20

書誌情報

読み仮名 オンガク
シリーズ名 新潮文庫
装幀 Ryan McVay/カバー写真、Getty Images/カバー写真、新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-105017-1
C-CODE 0193
整理番号 み-3-17
ジャンル 文芸作品
定価 605円

私、音楽がきこえないんです。奇妙な訴えに潜む「人間」の謎。

精神科医である私の診療所のドアを、ある日、美しい女が叩いた。この患者は、兄との近親相姦で得たオルガズムの衝撃から抜け出せず、恋人とも愛し合うことができない不感症に思い悩んでいるというが、何か怪しい――。言葉に嘘の気配を感じながらも、彼女の美貌と気まぐれに翻弄され、治療は困難を極める。女性心理と性の深淵をドラマチックに描く異色作。

どういう本?

タイトロジー(タイトルを読む)

 するうちに、麗子は突然、わけのわからぬことを言い出した。
「先生、どうしてなんでしょう。私、音楽がきこえないんです」

 それはどういうことかと私がきくと、たとえばラジオ・ドラマをきいていても、セリフのところは明瞭にきこえるのに、伴奏音楽だけが、丁度日が急にかげるように、耳もとから消えてしまうので、索漠としてしまう、ということらしい。では、はじめから音楽だけの番組はどうかというのに、
『あ、音楽がはじまる』
 と思った瞬間に、いくらヴォリュームを高めても何もきこえなくなり、しばらくたって次の曲についての解説がはじまると、その解説は明瞭にきこえる。つまり彼女が、一旦、「音楽」という観念を頭に浮べると、その瞬間から音楽が消えてしまう。音楽という観念が音楽自体を消すのである。(本書18〜19ページ)

著者プロフィール

三島由紀夫

ミシマ・ユキオ

(1925-1970)東京生れ。本名、平岡公威(きみたけ)。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。

初めて出会う 新・三島由紀夫

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