ホーム > 書籍詳細:剣聖―乱世に生きた五人の兵法者―

凄腕作家が描いた五人の剣豪。新陰流・上泉伊勢守、新当流・塚原ト伝、二天一流・宮本武蔵、巌流・佐々木小次郎、柳生新陰流・柳生石舟斎。文庫でも読めなくなっていた傑作たちが大復活!

剣聖―乱世に生きた五人の兵法者―

池波正太郎/著 、津本陽/著 、直木三十五/著 、五味康祐/著 、綱淵謙錠/著

529円(税込)

本の仕様

発売日:2006/10/01

読み仮名 ケンセイランセイニイキタゴニンノヘイホウシャ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-115695-8
C-CODE 0193
整理番号 い-16-95
ジャンル 歴史・時代小説、文学賞受賞作家
定価 529円

剣の境地はいずれにあるのか。戦乱の世にあって、兵法を練り上げていく剣客たち──新陰流・上泉伊勢守、新当流・塚原卜伝、二天一流・宮本武蔵、巌流・佐々木小次郎、柳生新陰流・柳生石舟斎。男たちは、ときに師弟となり、ときに死命を争いながらも、その心技を受け継いでゆく。歴史時代小説の名手五人が描いた剣と戦の世を生きる人々の真の姿。名篇・傑作を選りすぐった剣豪小説集。

著者プロフィール

池波正太郎 イケナミ・ショウタロウ

(1923-1990)東京・浅草生れ。下谷・西町小学校を卒業後、茅場町の株式仲買店に勤める。戦後、東京都の職員となり、下谷区役所等に勤務。長谷川伸の門下に入り、新国劇の脚本・演出を担当。1960(昭和35)年、「錯乱」で直木賞受賞。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の3大シリーズをはじめとする膨大な作品群が絶大な人気を博しているなか、急性白血病で永眠。

津本陽 ツモト・ヨウ

1929(昭和4)年、和歌山市生れ。1978年、文明開化の時代の波濤のなかで滅びていく紀州の古式捕鯨を描いた『深重の海』で直木賞を受賞。『明治撃剣会』で剣豪小説に新境地を開き、その系列の作品に『柳生兵庫助』『人斬り剣奥儀』『薩南示現流』等がある。また、『下天は夢か』など戦国を舞台にした長編歴史小説を意欲的に執筆し、1995(平成7)年『夢のまた夢』で吉川英治文学賞を受賞した。1997年には、長年の文学業績を認められ紫綬褒章を受章、2005年には菊池寛賞を受賞した。

直木三十五 ナオキ・サンジュウゴ

(1891-1934)大阪生れ。昭和初期に活躍。その業績を記念して直木賞が設立された。代表作に『南国太平記』などがある。

五味康祐 ゴミ・ヤススケ

(1921-1980)大阪に生れる。早稲田大学英文科中退。様々な職業を転々とした後、文芸評論家保田与重郎に師事する。1952年「喪神」が芥川賞を受賞して注目された。以後、時代小説家として活躍し、剣豪ブームをまきおこした。『秘剣』『一刀斎は背番号6』『柳生連也斎』『柳生天狗党』など時代小説の他、音楽の造詣を生かした『西方の音』はじめ、趣味が高じた野球評論、麻雀、占い等も玄人はだしであった。

綱淵謙錠 ツナブチ・ケンジョウ

(1924-1996)樺太生れ。「斬」で直木賞受賞。代表作に『戊辰落日』『怪』『武将名言集』などがある。

書評

波 2006年10月号より 剣豪小説は“時代小説の華”  池波正太郎・津本 陽 直木三十五・五味康祐・綱淵謙錠 『剣聖―乱世に生きた五人の兵法者―』  末國善己

末國善己

 ここ数年、読書界で最も勢いがあるのは時代小説ではないだろうか。新人、ベテランが続々と傑作を送り出しているのはもちろん、歴史的な名作は文庫で手軽に読むことができるし、書き下ろしの時代小説文庫からベストセラーが生まれることも珍しくなくなった。
だが、これだけラインナップが充実すると、何から読み始めればいいのか悩む人も出てくるはずだ。その時にナビゲーターとなってくれるのが、名作を集めたアンソロジーである。粗筋をまとめたブックガイドとは異なり、実際に作品を読むことができるアンソロジーは、その作家が本当に自分の好みに合うのかが判断できるので、より実用的といえるだろう。
時代小説の歴史が、虚無の剣を振るう机龍之助を主人公にした中里介山『大菩薩峠』から始まることからも分かるように、時代小説の歴史はそのまま剣豪小説の歴史と重なる。まさに“時代小説の華”ともいえる剣豪小説の中でも、戦国時代に活躍し、現在まで続く剣の流派を確立した実在の剣豪を描いた名作をセレクトしたのが、本書『剣聖』である。
『剣聖』に収録されているのは、相手を力で制する「殺人剣」ではなく、相手の攻撃を封じて勝ちを収める「活人剣」を理想とする新陰流を興した上泉秀綱の生涯を描く池波正太郎「上泉伊勢守」、塚原卜伝が剣の奥義に開眼するまでの厳しい修業に焦点を当てた津本陽「一つの太刀」、吉川英治が『宮本武蔵』を書くきっかけを作った直木三十五が、史実と伝説を峻別しながら武蔵の実像に迫った「宮本武蔵」、吉川英治の小次郎とはまったく違った人物像を作った五味康祐「真説 佐々木小次郎」、徳川家康が柳生家を剣法指南役に選んだ理由を明らかにした綱淵謙錠「刀」の五編。乱世に翻弄されながらも、ひたすら剣の道を追求した剣豪たちの人生をクローズアップする重いテーマを描く一方で、それぞれの作家が趣向を凝らした剣戟シーンを用意しているので、圧倒的な興奮を味わうことができるのが嬉しい。
多くの作品がロングセラーを続けている池波正太郎から、初期の剣豪小説だけでなく最近は重厚な歴史小説でも注目を集める津本陽、エンターテインメントの名作を顕彰する直木賞にその名を残す直木三十五、柴田錬三郎と共に戦後の剣豪小説を牽引した五味康祐、丹念な史料調査に基づくリアルな作品世界を作った綱淵謙錠まで、時代小説の歴史を語る時には必ず登場するビッグネーム五人が顔を揃えているので、これから時代小説に触れたいと考えている初心者には絶好の入門書となるはずだ。しかも、これだけの大家が顔を揃えているのに、収録作はいずれも文庫などで気軽に読むことのできない“幻の名作”ばかりなので、筋金入りの時代小説ファンも絶対に満足することができるだろう。
剣は武士の魂といわれてきた。だがこのような発想が生まれるのは、平和な時代となった江戸時代以降のことに過ぎない。武士が戦場で干戈を交えていた戦国時代は、槍、弓、飛礫などが主要な武器として用いられた反面、鎧を貫けない剣は無用の長物と考えられていた。それだけに、剣術を学んでいた武士は少なかったようである。だが戦国時代も末期になると、剣の流派が次々と興り、剣術の専門家を召し抱える大名も増えてくる。徳川家康に見出され、将軍家の剣法指南役として大名の列に加わった柳生家などは、その典型といえる。
剣の修業は、人を斬る技術を身に付けるというより、厳しい鍛練を通して精神を高めることを目的とした。戦場では使えず、人間修養に役立つからこそ、剣術は戦乱が落ち着いた戦国末期にブームとなったのである。これは武士道が、太平の世となり、戦う必要のなくなった武士に生きる目的を与えるために作られた哲学であるのと同じ構造といえる。
個人が一騎打ちを行うロマンチックな合戦ならば、剣の腕を磨く必要もある。だが集団戦闘が常識となった戦国時代では、一人が卓越した剣技を身に付けても、戦場に出れば簡単に蹂躙されてしまう。本書に登場する剣豪は、尊厳を奪われた人間がモノのように殺される現実を目の当たりにした経験から、剣を使って平和な時代を作る方法を真剣に考えるようになる。
その意味で本書は、戦争を体験した世代が、剣を通して平和への想いを語った作品を集めたともいえる。現代の日本は、観念の中で戦争を美化する勢力が台頭し、武力を持つこともタブー視されなくなってきた。このような時代だからこそ、単なる暴力を否定し、武力と平和の関係を模索する必要を説く本書のメッセージを、真摯に受け止める必要があるのではないだろうか。

(すえくに・よしみ 文芸評論家)

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