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許すまじ「北朝鮮拉致」! 帰国から三年半、その間の「最新情報」を大幅加筆。

奪還―引き裂かれた二十四年―

蓮池透/著

432円(税込)

本の仕様

発売日:2006/05/01

読み仮名 ダッカンヒキサカレタニジュウヨネン
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-128551-1
C-CODE 0195
整理番号 は-40-1
ジャンル 文学・評論、思想・社会
定価 432円

弟は帰ってきた、二十四年ぶりに“あの国”から――。海岸で忽然と消えた弟は、どこへ行ったのか。全くの手探り状態から、徐々に明らかになる驚愕の真相。立ち塞がる国交の壁。無為無策の日本政府との軋轢。そして再会の後に待っていた、“洗脳”との新たな苦闘……。北朝鮮による卑劣な国家犯罪「日本人拉致」に巻き込まれた家族の闘いを、兄が綴る。文庫化にあたり新事実を大幅加筆。

著者プロフィール

蓮池透 ハスイケ・トオル

1955(昭和30)年、新潟県柏崎市生れ。東京理科大学電気工学科を卒業後、エネルギー関連会社に入社。1997(平成9)年より「『北朝鮮による拉致』被害者家族連絡会」事務局長。現在、同会副代表。著書に『奪還 第二章―終わらざる闘い―』などがある。

インタビュー/対談/エッセイ

波 2006年5月号より 著者インタビュー 『奪還―引き裂かれた二十四年―』文庫化にあたって  弟の帰国から三年半が経って   蓮池 透 『奪還―引き裂かれた二十四年―』

蓮池透

――『奪還』を刊行されてから三年が経ちました。今回、文庫化にあたり、その後のことを大幅に加筆されていますが、この三年間を振り返っての感想を聞かせて下さい。
帰国直後はもう駄目だと、弟は北朝鮮の人間になってしまったんだと感じていましたね。金日成バッジも胸からなかなか外しませんでしたから。ところが、想像以上に北の“洗脳”が解けるのが早かった。このことは驚きでしたね。やはり故郷である柏崎に帰ったことが大きかったのでしょう。自分が生まれ育ったふるさとの偉大さに抱かれて感動したと、弟は言っていました。それで北朝鮮にはもう帰らないと決心したんだと。
――現在の弟さんの様子を教えて下さい。
弟は翻訳家として仕事をしています。すでに書籍を七冊、刊行しました。毎朝午前三時には起きて、机に向かっているようですね。あいつは学生時代から朝型人間でしたから、「朝のほうが集中出来る」と言っています。昼間は大学で朝鮮語を教えています。韓国などからの留学生の相談にもよく乗っているそうです。妻の祐木子は保育園での仕事を続けています。
――お子さんたちはいかがですか? 帰国して二年が経ちますが。
姪の重代も甥の克也も、日本語はとても流暢に喋れるようになり、今では蓮池家では普段の会話はすべて日本語です。重代は北朝鮮でイギリス人について英語を学んでいたこともあり、三ヶ国語が使えます。しばらく大学に残って勉強したいと希望しています。将来は語学を活かした職業に就きたいようです。一方、克也は今年から大学生になりました。東京で一人暮らしをしています。こちらは姉とは対照的に理工系に進みました。
――二人とも生まれ育ったのが北朝鮮ですね。日本での生活に抵抗はなかったのでしょうか。
まだ若かったから、柔軟性があったのでしょう。北朝鮮の思想にも凝り固まっていなかった。ただ、当初、弟は日本の生活に溶け込めるか、とても不安だったようです。「今、子供たちが、自分の手の中にいるというのは奇跡だ」と、しばらくしてから言っていました。弟の“洗脳”を解いたのが故郷の力だとしたら、子供たちを救ったのは家族の力によってでしょうね。弟は子供たちの幸せのために、自分を殺してまであの国で従順に生きていく覚悟を決めていたわけです。弟の子供たちへの愛情というのは、人並みではないなと感心します。
――ただし残念ながら、その後、未帰国の日本人については進展が見られません。今年になってようやく警察庁が拉致実行犯の国際指名手配を打ちましたが。
まだ帰ってきていない方々のことを考えると、とても辛いですね。弟も口癖のように言っています、「自分たちだけ帰ってきて、忍びない」と。「オール・オア・ナッシング」、全員帰国でなければ全員帰ってこられなかったほうがどれだけ楽だったかと、考えることさえあります。やっと帰国出来たのに、素直に喜べない、異常な状況が続いています。弟は全員に帰ってきて欲しい一心で、知りうる限りの情報をすべて国や該当する家族に話している。しかし、交渉するのは言うまでもなく国対国ですから、弟自らが何か具体的に出来るわけではないのです。
――「平壌宣言」から三年半がすでに経過しています。これほど膠着状態が続くのはどうしてでしょう。
政府、外務省、警察、それぞれに連携がないように感じます。すべて縦割りで。ただし、以前とは明らかに対応は変化しました。前は何もしなかったわけですから。それから根の部分には、日本と北朝鮮の感情的なものがあると感じます。互いに「被害者意識」を持っている。だからぶつかり合うだけなんだと思います。経済制裁にしても、あくまで救出の手段でなければいけない。経済制裁をすれば救出に直結するかというと、そうではないわけです。だから、その発動に当たっては相当な知恵を絞らなければなりません。
――北朝鮮という国は、ここ数年で変わったと感じますか?
いや、まったく変わってないでしょう。ただ、いずれはあの国も世代交代するわけですから、今後、その可能性は必ずあるはずです。弟が言うんですよ、「自分の子供たちは北朝鮮という国をよく知っている。早く日本のことを熟知して、将来、日本と北朝鮮の架け橋となってほしい」と。

(はすいけ・とおる 「『北朝鮮による拉致』被害者家族連絡会」副代表)

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