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家は埼玉なのに、気づけば車窓に日本海/起きたら部屋に薬局のサトちゃん人形が/目覚めたら二台連なった自販機の上――抱腹絶倒&危機一髪! 酔っ払いエピソード全173本。

酔って記憶をなくします

石原たきび/編

497円(税込)

本の仕様

発売日:2010/10/01

読み仮名 ヨッテキオクヲナクシマス
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-133691-6
C-CODE 0195
整理番号 い-105-1
ジャンル エッセー・随筆
定価 497円

酔っ払い、それは奇跡を起こす生き物。乗り過ごしや、モノの紛失は序の口。酔って海へ、気づけば鼻の辺りまで海水が。上司のハゲ頭に柏手を打って拝む。交番のお巡りさんにプロポーズ。タクシーで五万円払い「釣りはいらねえよ」。居酒屋のトイレで三点倒立の練習。ホームレスと日本の未来について語り合う……全国の酔っ払いの皆さまがやらかした爆笑失敗談&武勇伝が173連発!

著者プロフィール

石原たきび イシハラ・タキビ

1970(昭和45)年岐阜県生れ。塾講師、リクルート社勤務などを経て、現在、雑誌やウェブなどを中心に執筆するフリーランスの編集者・ライター。たき火の会主宰。「愛される酔っぱらい」を目指して、日々精進中。

書評

波 2010年10月号より 魔法にかかったとしか思えないファンタジー

石原たきび

世界には2種類の人間が存在する。それは、酔って記憶をなくす人と、なくさない人だ――。
本書はおもに前者の人々の、酔ったうえでの“お茶目でちょっと笑ってしまう”失敗談を集めたものです。たとえば、こんなかんじ。
「東京から大幅に電車を乗り過ごし、気づいたら富山だった」
「なぜか隣家の犬小屋に入ろうとして娘に止められた」
「夜中に全裸で物干し竿にぶら下がり、蝉の鳴き真似をした」
「駅から観光地のパンフレットを大量に持ち帰った」
「『岡山では桃を渡せばバスに乗れる』という嘘をついた」
どうですか、この魔法にかかったとしか思えないファンタジーは。これらは、すべてSNSサイト「mixi」内のコミュニティ、「酔って記憶をなくします」に寄せられた投稿。僕自身も完全に「酔って記憶をなくす派」なので、以前から面白いなあと思って読んでいたんですよ。そして、あるとき何げなく新潮社の知人編集者にその話をすると、「ぜひ、本にしましょう」というすばらしい展開に。
そこから、コミュニティ管理人の方(もちろん、彼も「酔って記憶をなくす派」でした)に直接お会いし、書籍化を打診。こころよく了解をいただいたのちに、膨大な面白投稿の中から、さらに面白い投稿ばかりを200件ちょっとセレクトしました。そのすべてに掲載許可を請うメッセージを送ったところ、なんと約180人の方々から「OKです!」との返信が。それどころか、ほとんどの方が見ず知らずの男(僕です)に、献本用の本名と住所を教えてくれたうえに、後日談などをまじえた追加エピソードまで添えてくれたではありませんか。断られたのはたった数人、残りは音信不通でした。コミュニティ全体を包み込む熱い団結力のようなものに、ひとり涙したことを今でも覚えています。
後日談といえば、こんなほのぼのとしたものもありました。当時好きだった彼女持ちの男性(要するに浮気ですね)と『かに道楽』へ飲みに行き、焼酎で記憶を喪失、いろいろとやらかしてしまった女性からのメッセージ。
「もう4年も前の話です。そんな私も今は結婚して、お腹には愛する人との子どもがいます。妊娠中は禁酒していますが、来年の夏あたりにはまた酔い潰れたいですね。もちろん、愛する旦那様と一緒に」
くうー、泣けますね。
あ、僕の失敗談ですか? 数え切れないほどありますよ。とくに、30歳を過ぎてからしょっちゅう記憶が飛ぶようになりました。友いわく、「髪をかきむしり始めると、記憶をなくすサイン」。そういえば一度、「石原はいつもふらふらと店を出ていくけど、じつはどこかに立ち寄ってるんじゃないのか?」と訝しんだ友人らに尾行されたこともありました。結果、急に立ち止まって空を仰いだり、知らないおじさんに話しかけたりしつつも、ちゃんと家に帰ったらしいです。
そうそう、ずっと不思議だったのは、記憶がまったくないほど酔ったときも、家にはちゃんと帰っていること。気になったので調べたところ、アルコールを過剰に摂取すると、新しい記憶の入力にかかわる脳の“海馬”の機能が一時的に低下するんだそうです。ただし、古い記憶は思い出せるので家には帰れる。そういうメカニズムでした。というわけで、僕の数ある失敗談の中から吟味した「コンビニ、ツケで買い物事件」「金縛り13時出社事件」の二つを本書にこっそりと入れておいたのでご笑覧ください。
何よりも、コミュニティの管理人さんが命名した「酔って記憶をなくします」というタイトルがいいですね。ある種の諦念の中に、うっすらと見え隠れする凜とした毅然さ。美しい。
というわけで、この本を全国の愛すべき酔っぱらいの皆さんに捧げます。僕自身も、愛される酔っぱらいを目指して、引き続き精進する所存です。
なお、あとがき代わりに作家の恩田陸さんと『酒とつまみ』の大竹聡さんという、豪華なお二人による「ほろ酔い対談」を収録しています。そちらも併せてお楽しみ下さい。

(いしはら・たきび ライター・編集者)

目次

まえがき
1 乗り過ごし編
2 恋愛編
3 お金やモノを紛失編
4 身に覚えのない行動編 パート1
5 身に覚えのない行動編 パート2
6 会社がらみの失敗編
7 痛い失敗やケガ編
8 買い物や持ち帰り編
9 眠り込んだら編
10 旅先編
11 その他編
あとがきに代えて
「ほろ酔い対談」 恩田陸×大竹聡

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