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『出版禁止』は第2弾も、やっぱり、すごかった!

出版禁止 死刑囚の歌

長江俊和/著

1,728円(税込)

本の仕様

発売日:2018/08/22

読み仮名 シュッパンキンシシケイシュウノウタ
装幀 E+/写真、Getty Images/写真、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 295ページ
ISBN 978-4-10-336173-2
C-CODE 0093
ジャンル 社会学、事件・犯罪
定価 1,728円

幼児ふたりを殺した罪で、確定死刑囚となった男。鬼畜とよばれたその男、望月は、法廷でも反省の弁をひとことも口にしなかった。幼い姉弟は死ぬべき存在だった、とも――。本書の「編纂者」はこう書いている。「人の悪行を全て悪魔のせいにできるなら、これほど便利な言葉はない」。あなたには真実が、見えましたか?

著者プロフィール

長江俊和 ナガエ・トシカズ

1966年、大阪生まれ。映像作家、小説家。深夜番組「放送禁止」シリーズはたくさんの熱狂的な支持者を生み出した。芸能人や小説家といった著名人にも番組のファンが多く、3作が劇場公開されている。2014年には『出版禁止』を刊行し、小説の世界でも注目を集めた。他の著書に『ゴーストシステム』『放送禁止』『掲載禁止』『検索禁止』『東京二十三区女』がある。

書評

私が『出版禁止 死刑囚の歌』を編纂した理由

伊尾木誉

 犯罪とは川の流れのようである。人と人とが無限につながりあう社会のなかで、犯罪も無数に発生し、複雑に連鎖している。一つの犯行を事件として切り取るのは容易いが、それでは決して、その本質までとらえることはできまい。どんな事件でも背後には、人間によって生み出された、犯罪という名の大河が流れているのだ。
『出版禁止 死刑囚の歌』は、実際にあった事件を取材した記事やルポルタージュを編纂したものである。それらは、時代や書き手、テーマが異なっており、一見独立したものであるかのように思えるのだが、意外なところで関連していた。そこで、関係各所の承諾を得て、一冊の本として纏めさせてもらった。
 まず最初に取り上げたルポルタージュは、『流路』という総合月刊誌に掲載された、ある誘拐事件についての記事(「鬼畜の森――柏市・姉弟誘拐殺人事件――」2008年8月号)だ。今から二十五年前に起きた事件なので、覚えておられる方は少ないと思う。
 1993年2月7日、千葉県柏市に住む小椋克司さんの長女、須美奈ちゃん(当時六歳)と長男の亘くん(当時四歳)の行方が分からなくなった。二人が失踪した翌日、望月辰郎(当時四十三歳)というホームレスの男が派出所に出頭する。望月は、公園で遊んでいた須美奈ちゃんと亘くんを連れ出し、近くの雑木林で二人を殺害、遺体を雑木林の土中に埋めたと供述。「被告人には反省の様子もなく、人間性の片鱗すら感じることができない」として死刑が確定、2011年に執行された。
 ルポルタージュは、残酷な犯罪を行った望月辰郎元死刑囚の「見えない動機」に迫ったものだ。幼い姉弟を毒牙にかけた望月。彼は被害者家族とは縁もゆかりもないホームレスである。身代金の要求もなく、誘拐は金目的でもなかった。一体なぜ彼は、見ず知らずの幼い姉弟を殺害するに至ったのか? このルポは、その真相に肉薄した、迫真のドキュメントである。
 次に取り上げた記事は、短歌雑誌「季刊和歌」2012年春号に掲載されたものだ。「罪を詠む」と題されたその記事には、望月辰郎元死刑囚が詠んだという、六首の獄中歌が紹介されている。

血反吐吹く 雌雄しゆう果てたり 森の奥 白に滲むな 死色しいろの赤よ
鬼と化す ては暗闇くらやみ 今もなお 割った鏡に 地獄うつりて
川面かわも浮く はなき花冠かかん せいの地を つ子とがなき 流れては消え
耳すまし 三途さんず渡しの いと真綿まわた死のしょく 在世ざいせ死のどく
姉が伏す 身鳴き身は息 ろう少女 命におこれ 手よや雲に
暮れゆくも 薄く立つ霧 闇深き 妖花ようかえる 呪いぐさかな


 犯行の過程を、克明に描写した恐ろしい和歌である。雑誌が発売されるとすぐに、遺族が販売の中止を要請、回収騒ぎにまで発展した。「季刊和歌」2012年春号は、事実上の出版禁止処分となっている。
 さらに本書では、今から三年前に、向島で起こった一家殺傷事件についての記事も取り上げた。2015年4月、東京都墨田区向島のマンションの一室で起こった惨劇。何者かに家族が襲撃され、両親は死亡、一人娘も瀕死の状態で見つかった。三人の口のなかに押し込まれていた、くしゃくしゃに潰れた紙。それは、望月辰郎の鬼畜の和歌が書かれた短歌雑誌の記事だった。二十二年前の事件との符合。一家を襲ったのは誰なのか?
 複雑に絡み合う数々の事件。臨床心理学の研究者である私は、ある事情からこれらの事件に取り組むことになった。そして、全容を理解するために、事件について調査し、記事やルポを編纂したのである。
 最後に、本書を編纂して感じたことを述べる。二つの事件は氷山の一角に過ぎなかった。事件の背後にはやはり、人間のどす黒い悪意の奔流が、渦巻いていたのだ。私はその事実を知り、戦慄する。「悪魔」という言葉は人類の最大の発明だ。人の悪行を全て悪魔のせいにできるなら、これほど便利な言葉はない。

(2018年8月11日記)
(いおぎ・ほまれ 国立大学准教授・編纂者)
波 2018年9月号より
単行本刊行時掲載

目次

はじめに
「鬼畜の森――柏市・姉弟誘拐殺人事件――」橋本勲
「罪を詠む」草野陽子
「隣室の殺戮者――向島・一家三人殺傷事件――」『インシデント』編集部
「妻が消えた理由」海老名光博
「検証――二十二年目の真実」橋本勲
年表
編纂者のことば
『二〇〇三年六月五日――小菅』
追記 伊尾木誉
渡海

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宛先

〒162-8711 東京都新宿区矢来町71
株式会社新潮社出版部 「口外禁止認定証」係

締切

2018年9月30日(当日消印有効)

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