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満月の夜は生命に満ちている。地の果てから海の果てまで、無限に広がる月光空間。

地球月光浴

石川賢治/著

4,950円(税込)

本の仕様

発売日:2001/05/22

読み仮名 チキュウゲッコウヨク
発行形態 書籍
判型 B4判
頁数 44ページ
ISBN 978-4-10-435802-1
C-CODE 0072
ジャンル 写真集・写真家、画家・写真家・建築家
定価 4,950円

冴え冴えと硬い光を放つチベット・ヒマラヤの峰々の稜線、天と地の境目に動物たちがうごめくケニア・サバンナの地平線、マグマ噴くハワイの火山と、星影を映すタヒチの水平線、そして真夜中に開花する神秘の花、月下美人――地の果てから海の果てまで、その無限に広がる青白き空間を、地球規模でとらえた月光浴写真の集大成!

著者プロフィール

石川賢治 イシカワ・ケンジ

1945年福岡県生まれ。1967年日本大学芸術学部写真学科卒業。ライトパブリシティ入社。1976年フリーランス・フォトグラファーとして活動を始め、CFを数多く手がける。1984年秋より月光写真に取り組む。1990年ラフォーレミュージアム原宿における展覧会と初の写真集『月光浴』(小学館)が一大センセーションを巻き起こし、以後、満月の夜に月光写真の世界を探究しつつ世界中を撮影し現在に至る。写真集に『神の降りた夜/新月光浴』(1993年集英社)、『大月光浴』(1996年小学館)、『満月の花』(1998年小学館)、『月光の屋久島』(2000年新潮社)、『地球月光浴』(2001年新潮社)、『京都月光浴』(2003年新潮社)があり、展覧会も多数開催。

『月光浴』月光写真家 石川賢治 公式HP (外部リンク)

インタビュー/対談/エッセイ

波 2001年5月号より 月の光を手中にする  石川賢治写真集『地球月光浴』

石川賢治

 その夜、私はチベットのパンラ峠に立っていた。ヒマラヤ山脈から100キロほど離れた場所で、ここからチョモランマ(8848m)やチョーオユー(8201m)はじめ、ヒマラヤの高峰が連なる風景を一望にできる場所として知られている。峠の標高は5300m。空気は低地の半分の濃度しかない。息苦しい。しかも深夜。気温はマイナス20度に下がる。

 月が出た。と、漆黒の闇にひそんでいたヒマラヤの峰々が、突然、姿を現わした。新雪を戴いた峰は、青白い月の光を反射して、幻想的に浮かび上がってくる。私は息苦しいのも忘れて、夢中でシャッターを切った。

 この瞬間の感動、喜びがあるからこそ、次の「月光浴」写真を求めて、私は歩くのだ。

 初めて「月光浴」写真を撮影してから16年の歳月が流れた。きっかけは、サイパンで撮影した1枚の「月光写真」だった。ハワイやサイパンに行くたびに、都会では経験したこともないような、月夜のあまりの明るさに、私は感動していた。そんなある日、もしかしたら写るかもしれないと、遊び半分で月光写真を撮ってみたのだった。すると、これがみごとに写っていたのである。

 手の上に月光があった。

 予期せぬ成功に、私は大きな衝撃を受けた。

 偶然に成功してしまったその写真のイメージを追い求め、その日から私の試行錯誤が始まった。しかし、いくら明るく見えるといっても、満月の光は太陽光の46万5000分の1しかない。露出計の針はピクリとも動かない。これが半月になると、光量は半分ではなく、17分の1にまで減ってしまうのだ。

 もちろん、こんな写真を撮り続けた人は過去になく、だれもノウハウを持ってはいない。偶然に写ったその1枚を頼りに、何度も何度も失敗を繰り返しながら、私は月の光を我が物にすべくシャッターを押しつづけてきたのだ。

「海底から山の上まで」、月光写真を撮り始めて以来、私はそんなテーマを掲げてきた。前作『月光の屋久島』(新潮社刊)で、ある程度達成できたのだが、今回はもっと大きな空間、地球規模の“大スペース”に挑戦してみた。

 冒頭に述べたヒマラヤでは、まさに地球を実感させてくれる、広大なスペース感に圧倒された。世界最高峰の連なる峰は、私が抱いてきた「山の上」のイメージをはるかに凌駕した。

 大地の風景を求めて、ケニアのサバンナにも向った。はるかな地平線は、まさに地の果て。その地平線に夕日が沈むと、昼間、眠っていた動物たちのうごめく気配が(姿は見えないのだが)あたりの空気を震わせる。やがて月が昇り、満月の光に照らし出されたサバンナに、今度はくっきりと動物たちのシルエットが浮かび上がってきた。ライオン、キリン、チータ、カバ……。

 シマウマの叫びが呼ぶ方向に行ってみると、雄のライオンと遭遇した。距離はわずか10m。どうやら獲物のシマウマを獲り損ねたらしく、その飢えた目がキラリと光り、私の姿を捕らえた。身体中の筋肉が、金縛りになったように緊張して、しばらく動けなかった。幸い、彼の夕食にならずにすんだが、次にカバに出会ったときには、もうガイドも私も近づこうとさえしなかった。

 そして海。ハワイ島には今なおマグマを吐き続けるキラウエア火山があるが、夜はその赤い噴煙がひときわ鮮やかに見える。延々と流れる溶岩は、海を侵食し続けており、陸地が日に日に沖に伸びつつある。溶岩が積もって黒一色になったブラックサンド・ビーチに砕ける白い波が、月光の下ではより神秘的に見える。生き続けている大地を実感した。

 もうひとつ、タヒチの浜もすばらしい。満月の夜は真昼のように明るく、降り注ぐように輝く無数の星々を見上げる至福の時間は、なにものにも代えがたい。驚いたことに、金星の星影がくっきりと海面に映っているではないか! 想いは、はるか宇宙にまで飛んでゆく。

 ヒマラヤの峰々、サバンナの地平線、ハワイとタヒチの水平線、そして神秘の花、月下美人の開花の写真も加えてみた。きっと広大な“スペース”の感動を、私と共有できるはずです。

(いしかわ・けんじ 写真家)

▼石川賢治写真集『地球月光浴』は、五月刊

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