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それは、続く20世紀、政治と道徳が完全に分離する時代への預言だったのか?

世界終末戦争

マリオ・バルガス=リョサ/著 、旦敬介/訳

4,104円(税込)

本の仕様

発売日:2010/12/10

読み仮名 セカイシュウマツセンソウ
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 714ページ
ISBN 978-4-10-514507-1
C-CODE 0097
ジャンル 文芸作品、評論・文学研究
定価 4,104円

19世紀末、大旱魃に苦しむブラジル北部の辺境を遍歴する説教者と、彼を聖者と仰ぐ者たち。やがて遍歴の終着地に世界の終りを迎えるための安住の楽園を築いた彼らに叛逆者の烙印を押した中央政府が陸続と送り込む軍隊。かくて徹底的に繰返された過酷で不寛容な死闘の果てに、人々が見たものは……。1981年発表、円熟の巨篇。

著者プロフィール

マリオ・バルガス=リョサ Vargas-Llosa,Mario

1936年ペルー南部のアレキーパに生れた。1958年サン・マルコス大学卒業。1959年短篇集『ボスたち』、1963年『都会と犬ども』を出版、一躍脚光を浴びる。1966年、ペルー社会の複層性そのままに多様な人物群が交錯し乱舞する人間模様の壮大なる交響を、前衛的な手法を駆使して濃密に描いた大作『緑の家』が内外より絶讃され、ラテンアメリカ文学ブームの担い手の一人となる。1981年長篇歴史小説『世界終末戦争』など重厚な作品のほか、推理小説やポルノ小説風といった芸風の広がりを感じさせる作品も発表している。『ある神殺しの歴史』でG=マルケス論、『果てしなき饗宴』で〈ボヴァリー夫人〉論など本格的評論のほかエッセイ、ルポルタージュ、戯曲などがある。1993年回想録『水を得た魚』、1997年『ドン・リゴベルトの手帖』(邦訳『官能の夢』)、2000年『山羊の宴』、2010年『ケルト人の夢』。目下、プリンストン大学客員教授としてニューヨークに滞在中。2010年ノーベル文学賞受賞。スウェーデン・アカデミーが発表した授賞理由は以下のとおり――「権力の構造の見取り図を描き、個人の抵抗、反乱、敗北の姿を鋭く表現した」。

書評

文明と野蛮の共存する小説空間 ――バルガス=リョサとノーベル文学賞

木村榮一

 昨二〇一〇年にペルーの作家マリオ・バルガス=リョサがノーベル文学賞に輝いたことはまだ記憶に新しい。その知らせを受けた夫人が電話口で真っ先に「冗談でしょう」と言ったと伝えられるが、その背景には一九六七年から九〇年までの二十三年間にミゲル・アンヘル・アストゥリアス(グァテマラ)、パブロ・ネルーダ(チリ)、ガブリエル・ガルシア=マルケス(コロンビア)、オクタビオ・パス(メキシコ)と四人ものラテンアメリカの作家、詩人がノーベル文学賞を受賞したという事情がある。
 オクタビオ・パスが受賞した頃から、当分の間ラテンアメリカから受賞者は出ないだろうと言われるようになった。バルガス=リョサが毎年のように候補にのぼりながら選にもれていたのも、そのあたりの事情を考えると無理からぬことに思われた。
 ただ、彼のこれまでの創作活動を見ると、驚くほど豊穣多産である。彼は一九六二年、二十六歳の時に書いた小説『都会と犬ども』で一躍脚光を浴びた。この作品を原稿段階で読んだスペインの名編集者カルロス・バラルは当時を振り返って、「長年編集の仕事に携わってきたが、あの作品はそれまでに読んだ中でもっとも刺激的で大きな驚きをもたらした」と語っている。ペルーにある、軍人の養成を目指す《レオンシオ・プラード学院》を舞台に、内部の腐敗、堕落を内的独白、フラッシュ・バック、話者不明の語りといった斬新な手法を駆使しながら描いたこの作品によって、彼はラテンアメリカを代表する若手作家として注目され、ペルーの《怒れる若者》と呼ばれるようになった。
 その後も次々に話題作を発表し、そのたびに大きな反響を呼んでいる。たとえば、一九六六年には、ペルー・アマゾンの町イキートス、アマゾン源流地帯の町サンタ・マリーア・デ・ニエバ、アンデス山中にある砂漠の町ピウラ、この三つの土地を舞台に五つの物語が断片的に語られてゆくという特異な形式の小説『緑の家』を発表している。作品を読みはじめた読者は最初戸惑いを覚えるだろうが、読み進むうちに個々の断片がジグソー・パズルのピースのように徐々に組みあがってゆき、最終的には広大な地域にわたって繰り広げられてきたいくつものストーリーが互いに響き合い、結び合わせられるのを目のあたりにして、小説の面白さ、醍醐味を味わうことだろう。
 ついで、六九年に発表した政治小説『ラ・カテドラルでの会話』では権謀術数渦巻くオドリーア独裁制下の腐敗したペルー社会を余すところなく描き出している。また、一九八一年に発表した小説『世界終末戦争』では、十九世紀末にブラジルの奥地で起こった宗教的狂信者による《カヌードスの反乱》に題材を取っているが、この作品ではさまざまな過去、来歴をもつ人物たちの織り上げる無数の物語がいくつかの支流に集まり、やがてそれが、とうとうと流れるひとつの大河となって、読むものを圧倒する。この小説によって彼は、若い頃に影響を受けた中世の騎士道物語を現代によみがえらせたと言っても過言ではない。
 バルガス=リョサはこれらの作品の中で、先進国の文学には見られない、文明と野蛮の共存する世界と人間を鮮やかに描き出しており、またガルシア=マルケスとともに、現代小説において失われていた物語をよみがえらせている点も高く評価される。彼は二十世紀の小説の技法を貪欲に取り入れながら新たな小説空間の創造を目指す一方、すぐれた文学論や、過酷な政治状況を生きた作家ならではの独自の視点から政治的なエッセイもものしており、多岐にわたるその創作活動が高く評価されて今回の受賞に結びついたのだろう。

(きむら・えいいち ラテンアメリカ文学者)
波 2011年2月号より

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