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世界を変えてきたのは、いつも一枚の海図だった――。

海図の世界史―「海上の道」が歴史を変えた―

宮崎正勝/著

1,512円(税込)

本の仕様

発売日:2012/09/28

読み仮名 カイズノセカイシカイジョウノミチガレキシヲカエタ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 302ページ
ISBN 978-4-10-603717-7
C-CODE 0322
ジャンル 世界史
定価 1,512円
電子書籍 価格 1,210円
電子書籍 配信開始日 2013/03/29

古来、地図には二種類あった。陸上で自分たちの知りうる範囲を描いた「マップ」、何もない海上に航海のため正確な経線・緯線を付した「チャート」。「チャート」すなわち海図を描くことは、世界を俯瞰する試みでもあった。新大陸発見から産業革命、資本主義の誕生、世界大戦まで、海の視点から読みとくと、全く新たな通史が見えてくる。

著者プロフィール

宮崎正勝 ミヤザキ・マサカツ

1942年、東京生まれ。東京教育大学文学部卒業。筑波大学附属高等学校教諭(世界史担当)、筑波大学講師などを経て北海道教育大学教授。2007年に退官、現在は著述業、中央教育審議会専門部会委員。1975年から1987年までNHK高校講座「世界史」常勤講師。著書に『イスラム・ネットワーク』(講談社選書メチエ)、『ジパング伝説』(中公新書)、『海からの世界史』(角川選書)、『世界史の誕生とイスラーム』『風が変えた世界史』(共に原書房)、『地名でわかるオモシロ世界史』(角川ソフィア文庫)、『海図の世界史』(新潮選書)など。

書評

波 2012年10月号より 海洋国家の国民として持つべき「海洋史観」入門書

山田吉彦

本書は、海洋国家の国民として持つべき「海洋史観」の入門書である。
海図から世界史をひも解く本書の試みは、海洋国家を自称する日本の歴史を考える上でも重要である。
現在、「リスク」という言葉は「危険」「予想通りに行かない可能性」の意味で使われているが、本書によると、この言葉の由来は「海図のない航海」というアラビア語の航海用語である。世界史は、海図の存在しない冒険的な航海により作られてきた。そして、リスクを乗り越えたものが、海図を書き換え、世界史をつづってきたのである。
2世紀にエジプトのアレキサンドリアで活躍したプトレマイオスの書いた世界図は、現代世界の形成につながっている。プトレマイオスは世界を俯瞰し、人の住む全ての土地「エクメーネ」を描いた。しかし、このエクメーネは地表全体の二割強にしか過ぎなかった。
このエクメーネを越えようとした冒険心の強い航海者たちが、リスクをおかし「海上の道路」を開発した。このあらたに刻まれた海上の道路網が海図となったのである。言い換えると、プトレマイオスの世界図を越えるため冒険者のおこなった航海の軌跡が、海図を作り世界史をつくったのである。
では、なぜ冒険者たちはエクメーネを越えようとしたのだろうか。大航海時代が訪れ、プトレマイオスの世界図に描かれていない世界が着目されるようになった。ヨーロッパの知識人たちの間で常識とされていたプトレマイオスの世界像を越えた情報が、冒険者の手で持ち込まれると、それを検証するために航海に出るものが現れ、海図が書き換えられてきた。多くの場合、それは黄金伝説を追い求めるものでもあった。たとえば、マルコ・ポーロの「東方見聞録」に登場する黄金の国「ジパング」。ジパングの伝説は、コロンブスを始めとした多くの航海者たちの関心を引いた。そして、1492年、コロンブスは大西洋へと乗りだし新大陸を発見することとなった。そして、あらたな海図は、世界史を作った。その潮流は、バスコ・ダ・ガマによる喜望峰航路発見、マゼランによる世界一周航海とつながる。
本書は、航海史のみならず航海に関わる技術開発史にも言及している。18世紀、時計職人ハリソンは生涯をかけ揺れる船内でも正確に時を刻む船舶時計を開発している。ハリソンの時計のおかげで本初子午線を基準とする正確な経度の測定が可能となり、海図の精度が格段に向上したのである。
海図の歴史は、すなわち国際交流史である。人間の営み、文化の伝搬、そして戦乱にも影響を与えてきた。現代、北極海を通過する新たな航路の開拓が進んでいる。海図は進化を続けるのである。

(やまだ・よしひこ 東海大学海洋学部教授)

目次

まえがき――ラス・パルマスでの着想
第一章 地球を構成する三つの「世界」
一、世界図とチャートとマッパ
二、「単一の世界」から「海上の道路」が結ぶ複合的世界へ
第二章 「第一の世界」を俯瞰したプトレマイオスの世界図
一、世界を描くことに情熱を傾けたギリシア人
二、知的好奇心が誕生させた世界図
三、プトレマイオスが描いた世界
四、イスラーム大商圏で蘇った世界図
五、鄭和の海図に紛れ込んだ世界図
第三章 大航海時代を支えたポルトラーノ海図
一、羅針盤による沖合航法と新海図
二、印刷術が蘇らせた「プトレマイオスの世界図」
三、ヨーロッパを覚醒させたアジアからの新情報
四、ポルトラーノ海図で大西洋に挑んだポルトガル
五、世界史を転換させた喜望峰
六、軌道に乗るインド航路
第四章 「第二の世界」の形式
一、コロンブスを後押ししたカナリア諸島
二、「第二の世界」をアジアと錯覚
三、海図の誤りを挽回させたモンスーン
四、一四九〇年代に一挙に拓かれた「第二の世界」
五、ポルトガルとスペインが東西に分割した大西洋
六、世界図に「第二の世界」を登場させたヴァルトゼーミュラー
七、カリブ海から始まった南アメリカの変貌
八、銀がつないだ新大陸とヨーロッパ
九、海図化・地図化された北アメリカ
第五章 遅れて登場する「第三の世界」
一、太平洋の輪郭を明らかにしたマゼラン
二、突然に姿を現した「第三の世界」
三、命懸けの航海と引きかえに
四、定期化したマニラ・ガレオン貿易
五、「第三の世界」の幹線ルートによりアジアに流れる銀
第六章 三つの「世界」を定着させたフランドル海図
一、世界の海を変容させたオランダ
二、ニシン漁と造船とフランドル海図
三、新時代を拓いたメルカトル図法
四、オルテリウスの『世界の舞台』による世界像の革新
五、金銀島から解明が始まった「第三の世界」の北部海域
六、「世界図」から消えた「未知の南方大陸」
第七章 イギリス海図と一体化する世界
一、科学の時代と地図・海図の精密化
二、カリブ海域の砂糖と産業革命
三、「第三の世界」を海図化したジェームズ・クック
四、系統的な測量に基づくイギリス海図
五、大西洋からアジアへのルートを変更したスエズ運河
六、「第三の世界」開拓の流れをつくったマハン
七、二つの世界大戦と海図共有の時代
あとがき
参考文献

担当編集者のひとこと

海図の世界史―「海上の道」が歴史を変えた―

世界史は『プトレマイオスの世界図』から始まった 地図の歴史を振り返ると、古代ローマ時代では、いわゆる地図といえば陸上の、自分たちの知りうる範囲だけが描かれたものに過ぎませんでした。それは現在の「マップ」の語源となる「マッパ」と呼ばれるもので、中世のヨーロッパでは地図はこの「マッパ」のみであったといっていいでしょう。中世の「マッパ」は、自分たちの知りうる範囲以外の「地の果て」には大きな滝が流れ、巨人や大亀が地上を支えているといった、想像の範囲を超えることのないものでした。
 その一方で、古くから地中海で活躍する商人たちが航海の必要上、陸地の目印となるものを記した「チャート」つまり海図も存在していました。初期の海図は、あくまで限定された航海のために使う、部分的な海域を表しただけのものでしたが、西暦一五〇年頃のこと、アレクサンドリアの地理学者プトレマイオスが画期的な地図を発表します。「チャート」を集大成し、精確な地理学に基づき、自分たちが知りうる範囲以外にも緯度と経度を付して、俯瞰した視点から陸地と海を描いた『世界図』を作成したのです。この地図により、人々は初めて大洋に乗り出すことが可能となりました。しかしこの『プトレマイオスの世界図』は、はじめに書いた通り、皮肉なことにヨーロッパでは中世には全く顧みられることのない存在でした。地動説はもとより天動説ですら認めない中世のカトリック支配の社会では、「マッパ」のみしか存在を認められなかったからです。ヨーロッパでは忘れられた存在の『世界図』でしたが、海上を行き来し交易を盛んにするイスラム商人たちの間では重用されることになります。そして、ルネッサンス期になるとそれが逆輸入の形でヨーロッパに入り、改めてその偉大さが知られる事となったのです。この俯瞰的な『世界図』がきっかけとなって、やがてマゼランやコロンブスが登場する大航海時代へと展開してゆきました。
 プトレマイオスに限らず、本書には、イドリーシー、トスカネリ、マルテルス、ヴァルトゼーミュラー、クック、鄭和、マハンといった海図や海上の道に関わりを持った多くの人物たちが登場します。本書をお読みいただければ、世界史上の重要な出来事の陰には必ずといっていいほど一枚の海図の存在があったことがお分かりいただけるでしょう。

2016/04/27

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