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アベノミクスの源流がここにある――日本人必読の指導者論!

レーガンとサッチャー―新自由主義のリーダーシップ―

ニコラス・ワプショット/著 、久保恵美子/訳

1,944円(税込)

本の仕様

発売日:2014/02/21

読み仮名 レーガントサッチャーシンジユウシュギノリーダーシップ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 430ページ
ISBN 978-4-10-603742-9
C-CODE 0331
ジャンル 政治
定価 1,944円

冷戦期、停滞に苦しんでいたアメリカとイギリスに颯爽と登場し、劇的に国力を回復させた二人の指導者。彼らはなぜ権力を奪取できたのか。どうやって国内の左派勢力を打破したのか。いかにしてソ連を盟主とする共産陣営を崩壊に追い込んだのか。その新自由主義的な経済政策と、妥協なき外交・軍事戦略の功罪を鮮やかに描く。

著者プロフィール

ニコラス・ワプショット Wapshott,Nicholas

1952年英国生れ。ジャーナリスト、作家。「タイムズ」や「オブザーバー」誌などで記者・編集者として活躍後、アメリカに拠点を移す。キャロル・リード、レックス・ハリソンらの評伝を執筆、2011年に刊行した『ケインズかハイエクか』で注目を集める。他の著書に『レーガンとサ ッチャー』などがある。現在は新聞やテレビのコメンテーター、大学の客員教授としても活躍中。

久保恵美子 クボ・エミコ

翻訳家。東京大学経済学部卒業。訳書にバジョット『ロンバード街』、フリードマン、シュウォーツ『大収縮1929-1933』、クラーク『10万年の世界経済史』『格差の世界経済史』、ワプショット『ケインズかハイエクか』『レーガンとサッチャー』、モス『世界のエリートが学ぶマクロ経済入門』など。

書評

波 2014年3月号より アングロ・サクソン指導者の政治的恋愛

中山俊宏

「特別な関係」といわれる米英関係。これは国と国との関係であると同時に、同じ言葉や文化を共有する人と人との関係でもある。
そこにはアングロ・サクソン同士の間にしか成立しない特殊な信頼関係と、自分たちこそが文明の主流であるという優越感が見てとれる。さらに、これは世界的な覇権を達成した英国とそれを引き継いだ米国との関係でもあり、その根底には世界を正しい方向に導いていかなければならないという驕りにも近い自負心が横たわっている。
この「特別な関係」をレーガン大統領とサッチャー首相に投射して二人の関係を描いたのが本書である。筆者のワプショットは、本書の表題を「政治的な結婚」とした理由を尋ねられて、この二人は陰と陽のように全く正反対の存在でありつつも、完全に同一であり、最良の夫婦のような関係を築いていたからだと答えている。そのことをワプショットは、原書刊行当時(2007年)に公開されたばかりの二人の首脳の間の手紙や電話の会話録を用いて、彼ら自身の言葉を使いながら浮かび上がらせていく。
その関係はたまたま時を同じくして政権についた二人の首脳の関係をはるかに超えた深みと信頼によって支えられ、互いに厳しく国益を追求しつつも、優しさと思いやりのようなものさえ感じさせるものであった。本書を読んでいて、はたしてレーガンの夫人ナンシーとサッチャーの夫デニスが、二人の関係をどのように見ていたのだろうかという余計な心配さえしてしまうほど、二人は互いを必要としていた。
レーガンとサッチャーは共に政治的アウトサイダーであり、恐竜のように身動きのとれなくなっていた福祉国家に対して、新自由主義を掲げて正面から戦いを挑んでいったイデオロギー的盟友でもあった。興味深いのは、二人の保守主義が共に、幼少期の生活体験、とりわけ父親の働きぶりと人生観に大きな影響を受けていることだ。
しかし、このような二人でも激しい「夫婦喧嘩」をした。レーガンがゴルバチョフに対してレイキャビック会談で核廃絶を持ちかけたとき、サッチャーはレーガンの空想家ぶりに驚愕した。またフォークランド紛争で、レーガンが煮え切らない対応をしたことについてサッチャーは猛烈に抗議し、英国とアルゼンチンの間に入って仲裁しようとする米国の外交努力を無視した。このフォークランド紛争をめぐる米英のすれ違いについて論じた章は、いま尖閣諸島をめぐる問題を抱える日本の読者にとっても必読である。この章を読んでおけば、(想定しうる)米国からの混乱するメッセージにある程度備えておくことができるだろう。
本書によって新しい歴史的事実が浮かび上がってくるということはないが、二人の首脳の間の雰囲気を浮かび上がらせるワプショットの筆致は絶妙である。あえていうならば、私自身は結婚物語というよりも恋愛物語という感じがした。

(なかやま・としひろ 青山学院大学教授)

目次

序章
第一章 店の上階で
第二章 仕事の世界
第三章 権力の味
第四章 頂点への道
第五章 選挙での勝利
第六章 蜜月時代
第七章 「恋人たち」の諍(いさか)い
第八章 島を追われて
第九章 冷戦の戦士たち
第十章 ストライキ・バスターズ
第十一章 ロシアより愛をこめて
第十二章 勝利者たち
第十三章 残された者
終章
謝辞/解説 細谷雄一
原註/参考文献抜粋/人名索引

担当編集者のひとこと

レーガンとサッチャー―新自由主義のリーダーシップ―

レーガン、サッチャー、安倍晋三 アベノミクスという言葉を聞いて、レーガノミクス、そしてレーガンとサッチャーの時代を思い出した人も多いでしょう。
 実際、リベラル政権下で国中に蔓延していた沈滞ムードを、保守色の強いリーダーシップのもと、新自由主義的な経済政策とタカ派外交によって劇的に好転させたという点で、安倍政権はレーガン、サッチャー時代を彷彿させるところがあります。
 しかし、本書で描かれたレーガンとサッチャーの実像を読むと、やはり彼我の差は大きいと感じました。身も蓋もない言い方ですが、アウトサイダーから成り上がったレーガンやサッチャーと、政治エリート一家の“お坊ちゃま”としてエスカレーターを上ってきた安倍首相とでは、指導者としての信念の「強度」と「説得力」が違い過ぎるように思われたのです。
 果たして、安倍首相が「構造改革」や「尖閣問題」で国民の痛みを伴う決断をしようとした場合、レーガンが労組と闘った時、あるいはサッチャーがフォークランド戦争に踏み切った時のような、国民の根強い支持を得られるのか――。
 本書には安倍政権の「本当の実力」を考えるための材料がたくさん詰まっています。

2016/04/27

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