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知られざる「諸子百家」の異端! その痛快無比なる面白さ――。

ひねくれ古典『列子』を読む

円満字二郎/著

1,404円(税込)

本の仕様

発売日:2014/07/25

読み仮名 ヒネクレコテンレッシヲヨム
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 236ページ
ISBN 978-4-10-603753-5
C-CODE 0310
ジャンル 古典、評論・文学研究
定価 1,404円
電子書籍 価格 1,123円
電子書籍 配信開始日 2015/01/23

死なない方法を見つけた男、ウィンクするアンドロイド、人格の入れ替え譚、あべこべ病、天が抜け落ちる「杞憂」……アイロニカルで残酷、そして突拍子もないユーモア、現代の我々をも十二分に魅了するストーリーテラーぶり。論理立った正論の儒家、逆説の無為を説く老荘思想、そのどちらでもない第三の道を行く列禦寇の世界。

著者プロフィール

円満字二郎 エンマンジ・ジロウ

1967年、兵庫県西宮市生まれ。大学卒業後、出版社に勤務し、高校国語教科書や漢和辞典などの編集を17年近く担当。現在、フリーの編集者兼ライターとして、主に漢字文化関係で仕事を展開。『常用漢字の事件簿』(生活人新書)、『漢和辞典に訊け!』(ちくま新書)、『心にしみる四字熟語』(光文社新書)、『数になりたかった皇帝』(岩波書店)、『政治家はなぜ「粛々」を好むのか』(新潮選書)、『漢字ときあかし辞典』、『部首ときあかし辞典』(以上、研究社)など、著書多数。

書評

波 2014年8月号より 難解な中国古典を面白く解き明かす新旗手

諏訪原研

“ひねくれ”とは、これまたお堅いイメージの中国古典の解説書としては、何とも“らしからぬ”タイトルである。が、本書を読み進めていくと、この“ひねくれ”という命名が決して奇をてらったものでなく、至極もっともなネーミングであることに気づくはずである。
列子は、中国の春秋戦国時代の紀元前五世紀後半から四世紀初めにかけて活躍した思想家で、系統的には無為自然を説く道家に属する。彼の言行を記したのが『列子』で、全八編一四〇余章からなる大部の書物である。
『列子』の魅力は、何といっても奇想天外な寓話にある。「朝三暮四」「多岐亡羊」などの成語のもとになった話や、天下一の力持ちだというのに臆病そうな男、何もかもあべこべに見えてしまう不思議な病気など、面白い話が次々に登場する。
本書では、それらの中から幾つかを選びだし、「漢文学を専門に勉強したわけではない私」(「あとがき」より)が、素人目線で『列子』の魅力を論じようという趣向である。
『列子』にある寓話といえば、漢文の教科書にもよく載っている「杞憂」の話をまず思い浮かべるだろう。天地が崩壊するのではないかと心配する杞の国の男を、そんなことは要らぬ心配だと友人が慰める話である。
実はこの話にはまだその先があって、その後に展開される逆説に次ぐ逆説こそ、『列子』の真骨頂であり、そこには“ひねくれ”の精神がよく現れていると、著者は熱っぽく語る。
本書で取り上げるのは二〇話であるが、なかでもイチオシなのがロボットの出てくる話である。先日、ソフトバンクが、人間の感情を認識して会話もできるロボット「ペッパー」君を発表したが、この話は紀元前一〇世紀頃の大昔が舞台である。
周の王様に或る腕利きの技術者がロボットを献上する。ところが、そのロボットは“男”だったらしく、王の愛姫たちにウインクする。それを目ざとく見つけた王様が、けしからんといって……、あとは読んでのお楽しみ。
『列子』は、『老子』や『荘子』に比べて深遠な思想を秘めているわけではないが、「次を読みたい」という期待感を抱かせるという点で、すぐれて物語的であると著者は言う。
そういう著者も、なかなかのストーリーテラーで、中国古典の持つ堅苦しさを払拭するために、「です・ます」調を使ったり、「マッチョな筋肉オタク」「キャラが立つ」などの俗語を織り込んだりして、表現に工夫を凝らしている。
著者は、『人名用漢字の戦後史』(岩波新書)でライターとして出発し、主に漢字や言語に関する本を多く発表してきた。本書は、“中国古典を論じる”という新たな方向に舵を切った最初の作品である。難解な中国古典を面白く解き明かす新旗手の登場に大いに期待したい。


(すわはら・けん 河合塾漢文講師)

目次

まえがき
I 『列子』の魅力と老荘思想
第1話 杞憂
第2話 あやしい名馬鑑定師
第3話 あべこべ病を治すには?
第4話 浮かない顔の孔子
第5話 力のない力持ちの話
II 列禦寇先生のプロフィール
第6話 不射の射
第7話 お出かけ好きの列禦寇さん
第8話 列禦寇先生、人気沸騰!
第9話 お隣さんとの確執
III 『列子』の成立と“語り”の意識
第10話 朝三暮四
第11話 死なない方法
第12話 ご先祖さまが生きていたら……
第13話 楊朱先生と永遠の命
第14話 多岐亡羊
IV 諸子百家の枠を超えて
第15話 財産なんか棄てちまえ!
第16話 なつかしい故郷
第17話 私の病気が治せるかい?
第18話 成功! 世紀の大手術
第19話 ロボットのウィンク
第20話 てんやわんやの鹿騒動
参考文献
あとがき

担当編集者のひとこと

ひねくれ古典『列子』を読む

「諸子百家」の異端、“ひねくれ”加減の魅力 中国の古典「諸子百家」――孔子や孟子、老荘思想あるいは墨家、法家など、紀元前四〇〇年頃に始まる春秋戦国時代に現れた思想家たちの残した言葉は、今日の日本でも根強い人気があるようです。特に社会人として常識的な見方を示す儒家・孔子の言葉を記した『論語』は、現代風に解釈され読み解かれた本が、今も常時出版されているほど。サラリーマン層が好んで繰り返し読んでいるということなのでしょう。また『論語』と同じように人気の高いのが老荘思想です。論理だった正論を説く儒家に対して、逆説の無為を説きます。型にはまらず、底知れぬ深さを垣間見せる世界観は、西洋思想にはない、東洋独自の自由な哲学を感じさせて、こちらも、いくら時代を経ても飽きることのない魅力を持っています。さらにここ数年、知名度が上ってきたものに『孫子』があります。勝つための「兵法」は、やはり現代社会でも充分通用するということなのでしょう。
 さて、本書のテーマは『列子』です。この『列子』、「諸子百家」の一つとして名前くらいは知っていても、きちんと読んだことのある方は恐らくほとんどいないのではないでしょうか。ただ「杞憂」「朝三暮四」「疑心暗鬼」「多岐亡羊」などの故事成語はご存知のはず。これらはみな、『列子』から取られたものなのです。いずれの故事成語もユニークな意味を持つものですが、『列子』に描かれているのはそれだけではありません。他にも例えば、死なない方法を見つけた男、ウィンクするアンドロイドの話、人格の入れ替え譚、あべこべ病の話など、奇想天外な人物や常識はずれのできごとが次々と登場してきます。アイロニカルで残酷、そして突拍子もないユーモアなど、「諸子百家」の中でももっとも現代人に近い感覚で書かれ、我々を十二分に魅了する書物なのです。
「諸子百家」の中では道家の範疇に括られてしまいがちな『列子』ですが、実はそうした括りに飽き足らず、儒家思想とももちろん違った「第三の道」をゆく独自の世界が繰り広げられます。その痛快無比な面白さ、いい意味での「ひねくれ」加減をぜひ味わってみてください。

2016/04/27

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