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斯界の泰斗が伝える「生ける古代学」、真の魅力。「これは後学への私の遺言である」――

日本古代史をいかに学ぶか

上田正昭/著

1,430円(税込)

本の仕様

発売日:2014/09/26

読み仮名 ニホンコダイシヲイカニマナブカ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 246ページ
ISBN 978-4-10-603755-9
C-CODE 0321
ジャンル 日本史
定価 1,430円
電子書籍 価格 1,144円
電子書籍 配信開始日 2015/03/20

歴史を学ぶとは、史実や年号を暗記したり文献を漁ることではない。過去の人々の息遣いを感じ、喜び、悲しみを共に味わい、それを現在の自分たちの生活の中に生かし、未来を展望することである――。折口信夫、西田直二郎に学び、爾来六十余年、「生きた歴史学」を目指し続けた著者が自らの研究史を振り返り、その真髄を伝授する。

著者プロフィール

上田正昭 ウエダ・マサアキ

(1927-2016)1927年兵庫県生まれ、歴史学者。京都大学文学部史学科卒業。京都大学教授、大阪女子大学(現大阪府立大)学長、島根県立古代出雲歴史博物館名誉館長などを歴任。東アジア全体を視野に入れた古代史研究で知られる。著書に『日本神話』(岩波書店)、『上田正昭著作集 全八巻』(角川書店)、『私の日本古代史 上下』(新潮社)など多数。2016年没。

書評

巨視・微視兼備の眼差しとつながりの古代史

白江恒夫

 京都の古代研究会で、反故の紙背にコピーした自筆原稿を見ながら、出席者の質問に耳を傾けすらすらとメモして丁寧に答える。著者のその姿を隣席から見ていて、モノ・コト(言と事)・トキとツナガリを大切にされる方だなと感じた。著者は青年純情多感な折に津田左右吉の記・紀の文献批判に強い衝撃を受け、敗戦で多くの人々の価値観が崩れた中、自らの戸惑いと疑問に学問を通して真摯に向き合った。ものを無駄にせず生かす、出会いの時とつながりを大切にし、物事を双方向から検証して判断する。この一貫する研究姿勢の素地は、学問に覚醒する以前の、人として確かで心豊かな育みの中で培われたのであろう。
 著者は「日本古代史をいかに学んできたか」を語り、読者には古代文化を深く考え、現代から将来・未来につなぎ生かしてもらいたいという期待があるのであろう。古代から現代へという方向は、多大な影響を受けた師折口信夫の古代学(考古の学)に重なる。とは言え、異郷意識が南方だけにとどまり、古代の中国や朝鮮等東アジアへの眼差しがその展望の中に開花しなかった折口になずむことはない。その結果、本年米寿を迎えられた著者の研究は、古来稀となり大海の広がりをもつ。今後の古代学の前進のためにまとめられた本書は、第一・二章で文字史料、第三・四章で非文字史料を扱い、第五章で折口古代学の発展的継承、第六章で歴史のみかたの再検討を説く。ここにいう「発展的継承」とは、先師の業績顕彰のみを指すのではなく、むしろ、批判的継承というに近い。例えば、古代芸能の発生と展開に巡遊伶人の役割を重視した折口には「上から下へ」の視点があっても「下から上へ」の視点が欠けていた為に、古代における芸能が国家の成立と不可分の関係にあったことを見落していると著者は指摘する。又、文化事象は文化の創造や文化享受の場とのつながりに於いて把握されるべきとする西田文化史学の考えを認めながらも、渡来初期の佛教と固有信仰との関係のとらえ方は異なる。津田左右吉の帝紀や旧辞の成立時期説には、稲荷山鉄剣銘文の検証を踏まえて異を唱える。師説の足らざるを補い、時には批判をも厭わない。これこそが、学恩に報いる発展的継承となるのであろう。巨視・微視兼備した眼差しで、つながりを育む本書は、古代学に入門する徒への書でもある。理解を一層深めるには、引用史料の原典や著者の原著にあたり、自分の目で確かめられたい。最後に著者は古来の難問スメラミコト(天皇)の語源に言及する。かつて国語学者大野晋が音韻と意味の一致する梵語と蒙古語の例を紹介したが、その後者(sumel最高の山)だという。
 上田正昭博士は、病魔と闘いつつ、左手骨折の不自由の中で執筆三昧の日々。著者のその眼差しは遥か彼方を見据え、さらなる学問の樹立と発展を願っておられるのではないだろうか。

(しらえ・つねお 芦屋大学臨床教育学部教授)
波 2014年10月号より

目次

はじめの章 古代学をめざして
わが研究史を顧みて/クローチェの「生きた歴史」/総合的な古代史/古代学の展開
第一章 文書と記録の活用
文献批判/『帝紀』・『旧辞』/先代の書/和風諡号と諱/天皇の名と和風諡号のかかわりあい/継体朝の意義/論証の不足/西田文化史との出会い/文化史とは何か/文化史学の新たな学風/『日本文化史序説』の課題/文書・記録の誤読/多神教ではなく汎神教/自我の誤認
第二章 木簡・金石文に学ぶ
国・評里と庚寅戸籍/万葉歌木簡など/王仁博士の伝承/“なにはづ”の歌/墨書した手習いの木簡/大仏造立/高句麗の広開土王碑/建国神話の重要性/参謀本部とのかかわり/碑文の検討
第三章 遺跡と史料の対応
遺物より遺跡を/酒船石遺跡と斉明朝/飛鳥池遺跡と富本銭/「富本」の思想/出水の苑池
第四章 口頭伝承の内実
神話とは何か/柳田國男と折口信夫の神話論/『古事記』と『日本書紀』の神話/天孫降臨神話の比較/神話の背景/織女神の神格/西王母の信仰/七夕の伝承/『出雲国風土記』の神話/国引き神話/伝説と昔話/『播磨国風土記』の伝承/笑話と世間話
第五章 折口古代学の発展的継承
神 やぶれたまふ/平田国学への憧憬/現人神事件/まれびと論/御神楽「韓神」のからおぎ/神道神学の課題/歴史学と民俗学
第六章 歴史のみかたの再検討
海上の道/渡来人と漢才の文化/大和飛鳥と河内飛鳥/深草と太秦/東アジアの動向と外交/裏日本観のあやまり/天下無双の大廈/身分と階級/尊卑の差序/身分法の具体化/大王と氏姓制度/英雄時代とは何か/英雄時代論争/古代の天皇制
あとがき

担当編集者のひとこと

「天皇制」とは何なのか――“上田歴史学”の原点

 二〇一二年十二月に刊行した上田正昭さんの前著『私の日本古代史』は、上下巻合わせて五万部に迫るヒット作となりました。そして今回、上田さんが今年四月に米寿を迎えられたのを機に書き下ろされた本書は、『私の日本古代史』に続く、いわば「上田歴史学」の集大成といっていい一冊です。古代史観の全貌を俯瞰した前著とは異なり、自身の研究史を顧みる形で「歴史を学ぶとはどういうことか」を提言する内容になっています。
 上田さんは、いわずと知れた古代史研究における泰斗といっていい存在。そもそも歴史、特に古代史に興味を持ち始めたのは、旧制中学二年生の時だったといいます。時代は戦前の言論統制下、遊びに訪ねた担任の先生の自宅にあった発禁本の津田左右吉著による『古事記及び日本書紀の新研究』をふと手にしたところ、そこに描かれている内容に大いにショックを受けたのだとか。学校で教わる歴史とは全く違ったリアルな古代史がそこにあったからでした。以来「歴史における真実とは何か」、それが興味の中心となり、ついには学者の道に進むことになったのだそうです。
 さらに長じて大学生の頃、今の「上田歴史学」につながる、ある決定的なことと遭遇します。敗戦です。昨日まで学徒出陣、学徒動員で多くの学友たちが「天皇陛下のために」と散っていった現実が、一夜明けるとすっかり忘れられてしまっている……。学友たちを死に追いやった「天皇制」とは一体何なのか、はっきりとそれが自らの歴史学を学ぶ主要な目的となったのでした。
 中国・朝鮮半島をはじめ広く東アジア全体を見通す巨視的な視点、また記紀神話の敗者に寄り添い弱い者の立場に立つ優しい眼差し――「上田歴史学」の原点は、実はこうしたところにあったのです。

2014/09/26

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