ホーム > 書籍詳細:「スイス諜報網」の日米終戦工作―ポツダム宣言はなぜ受けいれられたか―

1945年夏、人知れず日本を壊滅から救ったインテリジェンスの男たちがいた。

「スイス諜報網」の日米終戦工作―ポツダム宣言はなぜ受けいれられたか―

有馬哲夫/著

1,512円(税込)

本の仕様

発売日:2015/06/25

読み仮名 スイスチョウホウモウノニチベイシュウセンコウサクポツダムセンゲンハナゼウケイレラレタカ
シリーズ名 新潮選書
雑誌から生まれた本 新潮45から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 302ページ
ISBN 978-4-10-603772-6
C-CODE 0331
ジャンル 日本史
定価 1,512円
電子書籍 価格 1,210円
電子書籍 配信開始日 2015/12/11

「無条件降伏」以外譲ろうとしない米国、「国体護持」が認められなければ徹底抗戦しかないとする日本、両者相容れぬ緊張状態の中、在スイスの米OSS支局長アレン・ダレスの下で、とある諜報網が作られた。日本の陸・海軍武官、公使、国際決済銀行のスウェーデン人、亡命ドイツ武器商人……両政府の間を取り持ち暗躍する陰の主役達を描く。

著者プロフィール

有馬哲夫 アリマ・テツオ

1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学社会科学総合学術院教授(公文書研究)。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。2016年オックスフォード大学客員教授。著書に『原発・正力・CIA』『歴史問題の正解』など。

目次

まえがき――本書のテーマと視点
第一部 藤村神話の崩壊

第一章 ドラマ版「藤村ストーリー」の真偽
「緊急暗号電、祖国ヨ和平セヨ!」/歴史番組として違和感を覚える/そんなことがあり得たか/原作そのものに演出が目立っていた
第二章 ほころびだらけの「痛恨! ダレス第一電」
工作は四月二三日に始まったという/朝日新聞の笠信太郎も打電/海軍省は謀略を疑った/海軍大臣米内に説教/「藤村ストーリー」は当初から疑われていた/暗号電報の「発信者」は「西原」だった/藤村は終戦の呼びかけなどしていなかった/日付は一カ月ずれている/打電のときダレスはスイスにいなかった/西原はダレスの不在を伝えていた/工作は外務省に任された
第三章 「第一電」は終戦に貢献したか
海軍は「第一電」を歓迎はしたが/なぜソ連に終戦交渉の仲介を頼んだのか/西原たちはヤルタ情報も送っていた/藤村のスタンドプレー/単なる「情報とり」だった藤村/「藤村工作」が外務省に移管を命じられた理由/歴史認識を誤らせる躓きの石
第二部 スイスの終戦工作、七〇年目の真実を検証する

第四章 一九四四年までのインテリジェンス・ネットワーク形成
それはハックから始まった/ゲフェルニッツがハックとダレスをつないだ/ハックの日本人協力者/情報のバーターをしたか/国際決済銀行幹部ヤコブソン/ヤコブソンと吉村、岡本、北村の結びつき/ダレスが送った女性マッサージ師/そしてダレスともつながった/国際決済銀行というインテリジェンス機関/ハックはOSSのエージェントとして扱われた
第五章 対日終戦工作と並行して行われた対独終戦工作
スイスで対日情報網を築く/ダレスの対日終戦工作始動/吉村・北村が工作に動く/「サンライズ作戦」/ソ連の横槍/棚上げされたダレスの功績/「作戦」の挫折が落とした暗い影/なぜ作戦は成果をあげられなかったのか/「サンライズ作戦」中の対日工作/ザカライアスはグルー、ダレスとつながっていた/ヤコブソンはフィンランドへ行って不在だった
第六章 グルーの対トルーマン工作
トルーマンは無条件降伏方針を引き継いだ/ソ連参戦を阻止し極東密約を空文化しなければならない/グルーの対日・対トルーマン両面工作/ザカライアスの対日放送/グルー、原爆開発を知る/加瀬の終戦交渉開始の決意/東郷は判断ミスを犯したか/OSSは「マジック文書」を読めなかった/極東密約破棄を働きかける/条件付降伏案と原爆がリンクした/駐ポルトガル公使館も和平打診
第七章 トルーマンに無条件降伏方針を破棄させよ
ダレスは藤村を置いてワシントンへ飛んだ/ザカライアス放送が日本首脳に与えたインパクト/リーヒに呼び出される/対トルーマン工作にスティムソンも加わる/マクロイは大統領に天皇制存置条件付降伏案を提案した/バーンズ、トルーマンがマクロイ案を拒否/スティムソンが天皇制存置条件案を復活させた/自説を主張できない国務省親日派の事情/スティムソン案とグルー案は発出のタイミングが違った/グルー案は国務省でリコールされた
第八章 ポツダム会議をめぐる攻防
吉村、北村―ヤコブソン・ラインの復活/天皇と大統領をつなぐホットライン/「日本皇室及国体に関する米国意見探索の件」/ヤコブソン・ゲフェルニッツ会談/グルーに残された手段/ダレス・ヤコブソン会談の準備/「天皇が戦争終結を懇願」/北村のダレスへの質問事項/前例に照らしてアメリカは政権や皇室に干渉しない/ダレス・ヤコブソン会談初日/もっとも安全な方法は、リスクを冒すことだ/トルーマンはダレス情報を黙殺/スティムソン、ポツダム宣言発出を求める/岡本、いまだ打電せず/天皇制存置条項を葬った暗号電報/七月二〇日、ダレスの最後の訴え/グルーの最後の呼びかけ/「大決心」して直接アメリカと対話すべし/ダレス、グルー、ザカライアスの呼びかけが東郷の心を動かした/一件は外務省に任すべし/原爆は投下しなければならない/天皇制存置条項削除/原爆投下へのカウントダウン
第九章 ポツダム宣言受諾コミュニケーション
ポツダム宣言発出/ダレスのメッセージから生まれた「ポツダム三国宣言に関する観察」/原爆投下への動き/加瀬―佐藤―東郷のポツダム宣言受諾コミュニケーション/原爆投下/けだものはけだものとして扱え/ソ連、ついに参戦/スイスの終戦工作の効き目が東郷にあらわれた/トルーマンとバーンズの妥協/鈴木のふらつきで東郷が辞任を覚悟する/天皇の決意を揺るぎないものにした電報/これを拒否するのは馬鹿か狂人/ついに終戦に至る/スイス終戦工作が終戦をもたらした
エピローグ――終戦から戦後へ
冷戦インテリジェンスの巨頭、ダレスとゲーレン/日本版「クラウン・ジュエル作戦」
スイスの終戦工作年表
あとがき

インタビュー/対談/エッセイ

天皇はなぜポツダム宣言受諾を決意できたのか

有馬哲夫

 先の戦争を終わらせたのは、原爆投下とソ連の参戦だといわれている。原爆投下だけで充分だったとか、いやソ連の参戦の方が決定的だったと唱える研究者もいる。
 筆者はこのどれにも与しない。原爆投下とソ連の参戦は、必要条件ではあるが、十分条件ではなかったからだ。十分条件は、ポツダム宣言を受諾し、降伏しても国体護持ができるという確信を天皇と重臣たちが持てたことだ。
 事実、昭和二〇年八月一二日の皇族会議で、天皇が連合国に降伏することにすると告げたとき、朝香宮に「講和は賛成だが、国体護持ができなければ、戦争を継続するか」と問われたのに対し「勿論だ」と答えている。つまり、国体護持ができるという確信を天皇や重臣が持てなければ、戦争は続いていたということだ。
 また、天皇は八月一二日と八月一四日の二度、国体護持に不安があるので、ポツダム宣言を受諾しないよう求める阿南惟幾陸軍大臣を「朕には確証がある」といって退けた。降伏するならクーデターを起こすと陸軍強硬派が叫んでいるのも知っていた。内乱状態になるかもしれないという緊張感のなかで、天皇は確信をもって日本と日本国民の命運がかかったこの決断をしたのだ。
 にもかかわらず、天皇と和平派の重臣がこのときどんなインテリジェンスを持っていたのか、これまで問われることはなかった。天皇が運まかせで、この重大な決断をしたかのように思われてきた。
 拙著『「スイス諜報網」の日米終戦工作―ポツダム宣言はなぜ受けいれられたか―』で筆者は、「スイス諜報網」が日本側の天皇と重臣たちとアメリカ側の大統領および閣僚たちの間の秘密のコミュニケーションの回路となり、彼らに戦争終結を決断するために必要なインテリジェンスを与えていたことを明らかにした。
「スイス諜報網」とは、日本側の北村孝治郎、吉村侃(ともに国際決済銀行勤務)、岡本清福(スイス公使館付武官、陸軍中将)、加瀬俊一(駐スイス公使)とアメリカ側のアレン・ダレス(米戦略情報局スイス支局長)を、フリードリッヒ・ハック(ドイツ人で元日本海軍御用達の武器商人)、ペール・ヤコブソン(スウェーデン人で国際決済銀行幹部)がつなぐことで形成された諜報・コミュニケーション網のことだ。
 このネットワークこそが、ポツダム宣言のアイディアをジョセフ・グルー(米国務長官代理)に与え、エリス・ザカライアス米海軍大佐に対日放送を構想させ、天皇にポツダム宣言受諾を決断させるインテリジェンスを与え、最終的に終戦に導いたのだ。
 戦後も七〇年になるが、見落とされてきたものはまだある。本書がその一つを見つめなおすきっかけになればと思う。

(ありま・てつお 早稲田大学教授)
波 2015年7月号より

担当編集者のひとこと

あのとき天皇はなぜ「国体護持」を確信できたのか?

 今夏、戦後70年を迎え、先の戦争に関するたくさんの書籍、あるいは記事、論考が出されています。もちろんどれも真実の一面を鋭く突くものであり、充分意義あるものなわけですが、しかしそれでも結局のところ、あの戦争はどのように始まり、いかにして終わったのか、その全体像を正確に把握できたとは未だにいえないのではないかと思えてしまいます(歴史における真実など多方面から捉えられるものですから、しょせん「全体像の正確な把握」など端から無理な話なのかもしれませんが)。あの戦争の「始まり方」と「終わり方」については、まだまだ解明されざる多くの謎があるといえるでしょう。
 たとえば「終わり方」において、連合国からポツダム宣言が出された直後には「講和は賛成だが、国体護持ができなければ戦争を継続する」としていた天皇それに重臣たちが、その数日後には、確たる証拠もないまま、なぜかすんなりと「受諾」となってしまうのです。国体護持に不安を持ちポツダム宣言受諾に強く反対を促す阿南惟幾陸相に対しても、天皇は「朕には確証がある」といって退けたといいます。また、降伏するならクーデターを起こすとすごむ陸軍強硬派もしり目に、内乱状態になるかもしれない緊張感の中、天皇は確信をもってポツダム宣言の受諾を決断したのでした。これまではそうした天皇の「受諾」の意思決定は、あたかも運まかせでなされたかのように思われてきました。でも、実は運まかせなどではなく、天皇は国体護持を確信してポツダム宣言の受け入れを決断したようなのです。一体それはなぜなのか――。
 1944年、中立国スイスにて、あるインテリジェンス網が作られました。米OSS支局長アレン・ダレスをはじめ、亡命ドイツ武器商人のフリードリッヒ・ハック、国際決済銀行のペール・ヤコブソン、あるいは同じく国際決済銀行の北村孝治郎、吉村侃、駐スイス公使の加瀬俊一、公使館武官の岡本清福陸軍中将――みな日本を壊滅から救いたいとする有志たちでした。表舞台には現れぬ彼らの暗躍によって、日本側の天皇と重臣、それにアメリカ側の大統領と官僚たちの間に秘密のコミュニケーション回路が開かれていったのです。そのコミュニケーション回路が、土壇場でポツダム宣言受諾という“軟着陸”を成功させたのでした。これは、70年目に明かされる終戦秘史です。

2015/06/25

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