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あなたはなぜ誤解されるのか―「私」を演出する技術―

竹内一郎/著

858円(税込)

発売日:2021/01/16

  • 新書
  • 電子書籍あり

正論は印象に勝てない。『人は見た目が9割』著者が伝授する自己プロデュースの極意。

「あの人、一言多いんだよな」「あの癖、イライラする」等々、他人の「残念な面」に私たちは敏感だ。あの振る舞いを直せばもっと良くなるだろうに――しかしここで我が身を振り返ってふと気づく。あれ? 私もそんな風に見られ、誤解されているんじゃないか……自分の「残念な面」をどう変えていくか。不可欠なのは「私」を演出する技術なのだ。『人は見た目が9割』の著者が自己プロデュースの極意を伝授する。

目次
序章 誤解を減らすには演出家が必要だ
演出家の視点が印象を変える
残念な人は「見た目」が九割
言葉で真意は伝わらない
「自分は若い」と思いこむのは危ない
年をとった優等生は嫌われる
人は毎日誤解されている
自分の演出家は自分である
第1章 人生は舞台、人はみな役者
“らしく”振る舞うことの大切さ
人生はロール・プレイング・ゲームと心得る
誰もが「役割」を演じている
「役割」だと割り切れば気が楽になる
三割、三割、四割の法則
天敵がいることは認めよう
役に徹すれば上機嫌に生きられる
数値目標は仕事の楽しみにもなる
仕事は「見た目」全部を使う総力戦である
有名人は常に何がしかの演出をしている
趣味の中で別人格になる効用
演技することで相手の立場を理解できる
「大物」はみんなで作り上げる
「脇」が「主役」をつくる
ある年齢からは「余裕」を意識すべし
アドバイスを届けるにはタイミングが重要
ガス抜きを意識的に行う
蔑まれた経験があとに活きる
自己プロデュースのために他人を観察せよ
発信の方法をデータ・ベース化する
物まね芸人は観察の達人
相手の目を見て話すことで「キャッチ・ボール」は成り立つ
本物は時間をかけて発酵する
第2章 中身を磨くには、先ず「見た目」から
「中身」とは何なのか
中身を磨くには、先ず「見た目」から
五十歳を過ぎてからは総合力が問われる
美人、イケメンで得する時期は短い
年相応の振る舞い、頑張り方がある
無理は見た目にすぐ表れる
人前で話すには見た目の準備が必要
「幸せ」を考え抜くと自己流の演出が生まれる
自分のフォームとは何かを見つめる
安易にフォームを崩さない
第3章 「私」を俯瞰して演出を考える
モノの見せ方は自分の演出になる
チープな演出は大衆に受けるけど
味方千人、敵千人という覚悟を持つ
「褒め上手」と言われる人は褒め上手ではない
褒め上手は考え方が偏りがち
注意する際は脳をフル活用しなくてはならない
部下の伸ばし方に「褒める」と「叱る」の二種類あり
『朝まで生テレビ!』は反面教師に
「好き/嫌い」の原理を頭に入れておく
相手がわからない理由を整理する
「嫌われ言葉」を減らそう
「構ってちゃん」と「意識高い系」の問題
「ここだけの話」と言ってはいけない
常にホームかアウェイかを意識する
好調時と不調時の演出を変える
成功者の欠点は「成功法則」から逃れられないこと
第4章 表情も給料のうち
表情がないから空気は読める
生き方は顔に出る
小津安二郎の感情表現には国際性あり
顔と表情の違いに注意せよ
好きなものを持つと良い目になる
眉毛に意外な力あり
歯に見せ方あり
サラリーマンの髭には無理がある
笑顔に二種類あり
顔を洗う時は下から上に
眉間のしわを取り除け
寝ている時間にできる顔もある
一日をいい顔で始めよう
第5章 人は声に寄ってくる
異性は声に寄ってくる
嘘は声に表れる
リモート時代には抑揚が重要になる
棒読みはすべてに不利である
女性のナレーターにもっと光を
リポート・トークとラポール・トーク
定年後に顔が小さくなる理由
マスク生活の“怪我の功名”
マイクは口から十二センチ離して使おう
第6章 仕草の欠点は誰も教えてくれない
「動き」「音」絡みの癖は嫌われやすい
快感が悪い癖に変わってしまう
ため息は命を削る
もっとも嫌われるのは不潔な癖
目を適度に合わせるためには
他人の「癖」を直すのには工夫が必要になる
所作の美しさは、品格を語る
収集癖をプラスに見せる
癖ではなく「持ち味」を育てる
あとがき

書誌情報

読み仮名 アナタハナゼゴカイサレルノカワタシヲエンシュツスルギジュツ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 240ページ
ISBN 978-4-10-610891-4
C-CODE 0211
整理番号 891
ジャンル 人文・思想・宗教
定価 858円
電子書籍 価格 858円
電子書籍 配信開始日 2021/01/16

インタビュー/対談/エッセイ

コロナは社会の誤解を増やしている

竹内一郎

 コロナ禍はコミュニケーションに新たな問題を提起した。人々は日常的にマスクを付ける。相手の表情がわからないと、コミュニケーションがしづらいということを人が知ったのである。
 これまで口の中でもごもご喋る人と話すとき、私たちは口元の動きを凝視して、何を言おうとしているか推察していた。口元が見えないと「何を言っているかわからない」人さえいる。マスクのお陰で「もう一度仰っていただけませんか」という機会も増えた。一方で、自分がもごもご喋っていることに気付いた人は、はっきり喋る工夫をしているようだ。
 マスクのお陰で、顔の中で感情を伝えられる部位は、眉毛と目の二つになった。勘の良い人は、眉と目を少しオーバーに動かして、感情を伝える工夫をしている。堺雅人(俳優)の良く動く眉は「時代の象徴」にも見える。
 言葉は伝達の核心的道具である。しかし、声、抑揚、表情といった非言語情報とセットにして使わないと、意味が正反対に伝わることもある。そして、世の中に多くの誤解を生んでいるのが、言語情報と非言語情報との乖離である。
 人の話を聞いた後に、笑いながら抑揚のある明るい声で「もっともな話でした」と反応する人と、表情も抑揚もなく暗い声で、同じことを言う人がいると、後者の場合、本人の意思とは裏腹に「私は不快でした」と伝わることもある。
 スマホばかりを見て、表情筋(特に眼輪筋)をあまり使わない人が増えたので、若い人の間に誤解が増えている。表情の変わらない若者に「怒ってるのかなあ」と感じる中年も多いはず。コロナ禍でこの問題にいち早く気付き、対策を講じている人こそ非言語情報を上手に使っている。
 さて、わが国の総理の非言語コミュニケーション力である。言語に関しては、私が指摘するまでもなく、官僚が書いた紙を力なく平板に読むだけで、そこには個性もメッセージ性もない。
 次に表情がまったくといってよいほどない。私は、生き方は顔に現れるという持論を持っている。菅総理は小此木彦三郎という個性の強い政治家(大臣を二度経験)の秘書だった。表情を隠して、政治家の陰の仕事をする専門家として生きてきたので、彼の顔にはいつしか表情がなくなっていった。人の温かみが感じられない。
 就任当時はイチゴ農家の倅に生まれたことをアピールし、「愛されキャラ」を目指したが、彼の顔はその後の生き方をより強く反映している。
 新潮新書の新刊『あなたはなぜ誤解されるのか―「私」を演出する技術―』には、「正論は印象に勝てない」というコピーを付した。
 総理には温かみに欠けるという悪印象を挽回する秘策があるのだろうか。

(たけうち・いちろう 劇作家・演出家)
波 2021年2月号より

薀蓄倉庫

 めっきりパーティや披露宴などは減りましたが、それでもたまにマイクを用いて話をしなければならない場面があります。こういう時、マイクと口はどのくらい離すのが正解なのでしょうか。『あなたはなぜ誤解されるのか―「私」を演出する技術―』(竹内一郎・著)によれば、正解は約12センチ。著者の演出家としての経験から、そのくらいが良いとのことです。ラッパーのように口に密着させてはいけません。

掲載:2021年1月25日

担当編集者のひとこと

これは読む「姿見」です。

 編集者は著者(や本)に勉強させてもらって、それでお金が貰えるのだからいい仕事だ――本づくりを教わった先輩が、そんなことを言っていました。
 たしかにそうだ、と思うことはよくあります。1冊の本を担当すると、そのテーマについてかなりの知識が身につきます(私の場合、すぐ忘れるのが問題)。
『あなたはなぜ誤解されるのか―「私」を演出する技術―』の場合は、それに加えて、我が身を反省させられるところが多々ありました。書いてあるポイントが、いちいち堪えるのです。
 いわばこの本自体が、自分自身の姿見になっていました。
 たとえば、「『自分は若い』と思うのは危ない」という項。
「振る舞いは、役割に応じて、年齢や立場に応じて、変化させなくてはならない」
 アタマのどこかが中学生みたいなところで止まっている私のような者は、肝に銘じなくてはならない教えです。ちゃんと管理職をやる時は、それなりの服装、物言いをしなければならない。当たり前のことのはずですが、実行できているとはとても言えない。それは結局、若い人へのサービスにもつながらないと思いました。
 これに限らず、本書には、数多くの反省ポイントが詰まっています。自分用の姿見が欲しい方はぜひご一読ください。それによって、誤解されることも減るはずです。

2021/01/25

著者プロフィール

竹内一郎

タケウチ・イチロウ

1956(昭和31)年福岡県久留米市生まれ。劇作家・演出家。横浜国大卒。さいふうめい名義で漫画『哲也 雀聖と呼ばれた男』の原案を担当。演劇集団ワンダーランド代表。著書に『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』(サントリー学芸賞)、『人は見た目が9割』など。

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