春らしい装画が好評のピクチャーブック『四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』(村上春樹、絵・高妍)がいま書店に並んでいますが、4月は期せずして「村上さん月間」になりました。

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今年は、1995年の阪神淡路大震災から30年目にあたります。連作短編集『神の子どもたちはみな踊る』は、村上さんが「地震」と向き合って書いた海外でも評価の高い作品集ですが、この小説4編を原作に4月5日(土曜日・午後10時~10時45分)から4週連続でNHK総合の土曜ドラマ「地震のあとで AFTER THE QUAKE」(全4話)が放送されます。

4月5日の第1話「UFOが釧路に降りる」の主人公は「ドライブ・マイ・カー」での好演が光った岡田将生、釧路で出会う不思議な女性を唐田えりかが演じます。第4話は世界中で愛読されている短編「かえるくん、東京を救う」をもとにした「続・かえるくん、東京を救う」。佐藤浩市が初老の元銀行員「片桐さん」を演じ、「かえるくん」の声をのんが担当します。脚本は映画「ドライブ・マイ・カー」の大江崇允、監督はNHKの朝ドラ「あまちゃん」を演出した井上剛、音楽は大友良英という魅力的な制作陣です。
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4月7日(月曜日)発売の文芸誌「新潮」には、130枚の中編「武蔵境のありくい――〈夏帆〉その2」が掲載されます。昨年3月に川上未映子さんとの朗読会に発表した短編「夏帆」に続く連作です。かえるくん、品川猿などが登場する奇妙な村上ワールドに、新たに「ありくい」があらわれました!
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同じく4月7日(午後10時25分~10時50分)に、NHKのEテレ「100分de名著 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』」(解説・沼野充義)も始まります。1990年代の村上文学を代表する壮大な長編を、世界文学に精通するロシア・東欧文学研究者の沼野充義さんが、4回にわたって鮮やかに読み解きます。
「村上春樹」からHARUKI MURAKAMIへ。海外で村上文学が高く評価されるきっかけとなった長編『ねじまき鳥クロニクル』をどう読むか――NHK「100分de名著」ならではの、分かりやすい解説です。
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そして4月23日(水曜日)には、いよいよ『街とその不確かな壁』の文庫が上下2巻で刊行されます。インドの民族画ゴンド・アート「夜の木」と題された絵を使った新たな装幀です。
1985年刊行の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』にも“街”と“影”が登場しました。幻想と現実の境界に40年ぶりにあらわれた村上春樹の“街”――。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を再読する愉しみもあります。
新潮社刊行の村上春樹作品を新たな視点でお楽しみください。

(編集担当者)