「どんなすぐれたボクサーも、さいごはボクシングに裏切られて、そうしてボクシングをやめる。それが才能というものの残酷さだ」
 
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#40 新潮社 総合メールマガジン「Mikazuki」 2019/01/31
Yukky's COLUMN
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芥川賞を受賞したボクシング小説の秀作『1R1分34秒』
 営業担当役員の伊藤幸人です。
 このたび、町屋良平さんの『1R1分34秒』が芥川賞を受賞しました。新潮社作品が受賞するのは、一昨年の山下澄人さんの『しんせかい』、昨年の石井遊佳さんの『百年泥』に続いて、3年連続です。年明け早々の“慶事”に、我が営業部は大いに盛り上がっています。
『1R1分34秒』はボクシングをテーマにした青春小説の秀作です。
 ボクシングを扱った作品といえば、映画では「ロッキー」「レイジング・ブル」「ミリオンダラー・ベイビー」など数多くの名作が思い浮かびます。しかし活字となると、沢木耕太郎さんの『一瞬の夏』などノンフィクションが多く、意外に小説では少ないかもしれません。そんな中、ボクシング小説の傑作が誕生したと言えると思います。
『1R1分34秒』の主人公は、21歳のプロボクサーの「ぼく」。初戦こそ勝利で華々しくデビューを飾ったものの、そのあとは負けがこんでいる4回戦ボーイ。才能はあるのでしょうが、いろいろなことを考え過ぎてしまうという欠点を持っています。対戦相手が決まると、必ず相手のビデオを見て研究するのですが、熱心に見るあまり、夢にまで相手が現れるようになり、夢の中で親友になってしまうという妙な性癖を持っています。つまり、勝負に徹することのできない、心優しい男なのです。
 ボクシングは、実に過酷なスポーツです。試合に勝てば栄光が得られますが、公衆の面前での負けは屈辱以外のなにものでもありません。それだけでなく、事前の練習と減量も過酷を極めます。そのプロセスで、「ぼく」は考えに考えてしまう。「どんなすぐれたボクサーも、さいごはボクシングに裏切られて、そうしてボクシングをやめる。それが才能というものの残酷さだ」というように。「ぼく」にとってボクシングを考えることは、人生を考えることそのものなのです。
 何と言っても、『1R1分34秒』の迫力は、ボクサーの生態や心情を等身大に描いたリアリティにあります。著者の町屋さん自身が、数年間ボクシングジムに通ったという実体験が生きています。
 ボクシング好きな人はもちろん、関心のない人でも十分に楽しめる青春小説としてお薦めします。
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「村上RADIO」第4回放送決定!
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村上春樹さんがDJをつとめるTOKYO FM「村上RADIO」ですが、〈今夜はアナログ・ナイト!〉と題した第4回(2月)の放送が決定しました。バレンタイン・デー直前ということで、村上さんが番組内でリスナーからの「恋愛相談」に答えます。
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村上RADIO - TOKYO FM 80.0MHz
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ご好評につき、表題作「月まで三キロ」の公開を、2月以降も継続いたします。
星六花」 の公開は2019年1月31日までとなります。
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日々の生活にちょっと疲れている人に。誰かの心無い言葉に傷ついてしまった夜に。
そっとページを開いて欲しい。
世界を形づくる科学のきらめきが人の想いを結びつける六篇の物語。
「月まで三キロ」を読む

「星六花」を読む
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平成年間に刊行し、ベストセラーとなった単行本・新書から、100冊をご紹介します。
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