新潮社入社2年目のKです。学生時代に読んだ本作を再び手に取ったのは、入社から1年が経ち、疲労感と不安で調子を崩していた頃のことでした。実際に働いている身として読んでみるとまた違う印象があり、深く励まされました。そんな思いを込めて手書きの帯を作ってみたところ多くの方々が共感してくださったようで、本作は2023年啓文堂書店文庫大賞を受賞しました。 主人公には職安で「コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますかね」と質問するような力の抜けたところがあって、くすくす笑いながら読み進めることができます。しかし「信じた仕事から逃げ出したくなって」しまった切実さは、小説が好きで出版社に入った自分にとって他人事ではありませんでした。 会議で一度も発言できなかったことや、書店できつく叱られたことを思い出すと、自分がうまくやっていけるのか不安になりますが、本作のラストにある通り「だいたい何をしていたって、何が起こるかなんてわからない」のです。4月から社会人になる皆様、無理せず元気に働いてください。そして入社前に(入社後でも)ぜひご一読を!!