町屋良平の新連載小説「生活」(一三〇枚掲載)の魅力を何に喩えようか。主人公の青年・椿は二十歳のフリーアルバイター。小説家の父と編集者の母を持ち、ファッションと書道と女性を愛してやまない椿には《夢もなければ人生設計もない。それでも、いまをいまなりに生きている》《「いま/現在」だけは、まちがいなくおれのものとしてここにある》(本文より)。
 
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2022年6月号(定価1200円)5月7日発売
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編集長から
新連載小説
町屋良平「生活」の挑戦

町屋良平の新連載小説「生活」(一三〇枚掲載)の魅力を何に喩えようか。主人公の青年・椿は二十歳のフリーアルバイター。小説家の父と編集者の母を持ち、ファッションと書道と女性を愛してやまない椿には《夢もなければ人生設計もない。それでも、いまをいまなりに生きている》《「いま/現在」だけは、まちがいなくおれのものとしてここにある》(本文より)。 そんな椿のいまを充たすのは、一枚の美しいシャツをまとうことの喜び。恋人に去られた悲しみ。春の光の一瞬の輝き。まるで優雅で刹那的な動物のような椿の生=情動をみずみずしく描く町屋良平の眼差しは、では、いまの世界の過酷さを無視しているのだろうか? だが、本作に先立つ野心的長編「ほんのこども」(二〇二一)で、町屋は小説家としての日常とナチスドイツの戦争犯罪(侵攻と大量虐殺)を大胆に接続してみせたばかりだ。その書き手の新たな挑戦がいま/現在の文学の最前線をさらに拓くことを確信している。

編集長・矢野 優
新潮2022年6月号表紙
目次

【新連載】
生活[第一回・一三〇枚]/町屋良平
父は作家で母は駆け落ち、夢もなければ金もない二十歳のかれは今を生きる。書道をしてすきな服を着て――流れる時間を掴む挑戦作!
いくらかの男たち黒川 創
互いに気持ちが通じる相手との性体験が道しるべだった。性愛と暴力をめぐる連作最終章。
詩人ちゃん・キル・ミー(十五)[連載完結]/最果タヒ
プリニウス(八十一)/ヤマザキマリ+とり・みき
第46回 川端康成文学賞発表
旅のない上田岳弘
【選評】荒川洋治/角田光代/辻原 登/堀江敏幸/村田喜代子
■■ 連載小説 ■■
TRY48(七)[第7章]アイドルおたくを罵倒せよ!/中森明夫
大使とその妻(十)/水村美苗
聖都創造(十九)/天童荒太
天使も踏むを畏れるところ(二十三)/松家仁之
漂流(三十四)/町田 康
チェロ湖(三十五)/いしいしんじ
荒れ野にて(七十)/重松 清
第35回《三島由紀夫賞》候補作品発表
第55回《新潮新人賞》応募規定 [ウェブ応募受付中!]
上田岳弘/大澤信亮/小山田浩子/金原ひとみ/又吉直樹
【特別対談】
自由だから書いている小泉今日子 エリイ
集団で創造したから分かる、一人きりの表現の特異性と喜び。それらを言葉で探り合う。
ドナルド・キーン十七歳の「フローベール論」角地幸男
初公開論考に予見された日本文学の巨星誕生。
それでもロシアはなぜ懐かしいのか四方田犬彦
忘却の「混血児作家」から辿る戦争の現在。
青山真治をみだりに追悼せずにおくために蓮實重彦
魂の呼応について――追悼・真木悠介今福龍太
精神の考古学(六)/中沢新一
第四部 ゾクチェンの扉が開く
【リレーコラム】街の気分と思考(5)
溶けてゆく淡雪のように川上弘美
プラットホーム塩田千春
小津安二郎(十八)/平山周吉
小林秀雄(八十五)/大澤信亮
地上に星座をつくる石川直樹
第百六回・遠征と遠征のあいだ
見えない音、聴こえない絵(二〇五)/大竹伸朗
■■ 新潮 ■■
言葉と音楽石橋英子
今とつながる神話――「君の名は。」を題材として沖田瑞穂
異郷で演じるということ洞口依子
『ドライブ・マイ・カー』についての覚え書き大澤信亮
【私の書棚の現在地】
『「その他の外国文学」の翻訳者』/【書評委員】滝口悠生
ショクーフェ・アーザル『スモモの木の啓示』/【書評委員】古谷田奈月
■■ 本 ■■
遠藤周作『善人たち』/古川真人


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「新潮」から生まれた本
突如現れた未知の先住民は仲間(ノモレ)か、それとも敵か。現代の価値観を根底から覆す圧巻の記録。
『ノモレ』国分拓/著
日だまりですやすやと眠っていた子猫の花ちゃんは、まるで小さなお饅頭みたいだった。
『ハレルヤ』保坂和志/著
作家の私は、柔道家を取材して作品を執筆しようとするが――。焦れったさ満点の恋愛小説。
『格闘』高樹のぶ子/著
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