◎大江健三郎さんが逝去された。心からご冥福をお祈りする。1957年、短篇「他人の足」での初登場以来、大江さんの「新潮」への登場は数知れない。訃報に気が動転しながら、ふと目の前にある「新潮」創刊100周年号(2004年)を手に取った。
 
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2023年5月号(定価1200円)4月7日発売
新潮メールマガジン[2023/04/06] うまく表示されない場合はブラウザでご覧ください
編集長から
1935-2023
永遠の大江健三郎文学

大江健三郎さんが逝去された。心からご冥福をお祈りする。1957年、短篇「他人の足」での初登場以来、大江さんの「新潮」への登場は数知れない。訃報に気が動転しながら、ふと目の前にある「新潮」創刊100周年号(2004年)を手に取った。まだ60代だった大江さんが寄稿されたのは「難関突破ブレックスルー」という随筆。作家人生の危機的な難関を乗り越えた経験を回想しつつ、大江さんの眼前には「後期のスタイル」を完成させるための巨大な難関が立ちはだかっていた。「自分が小説家として経験する、あるいは最後のこの難関をなんとか突破できるとして、その時私はどのような感覚を抱くのだろうか?」――その「感覚」について大江さんに存分にうかがってみたかった◎『ハックルベリィ・フィンの冒険』のハックの台詞「よろしい、僕は地獄に行こう!」は大江さんが難しい選択を迫られた際の基本姿勢だった。その精神が新世代の創作者にバトンタッチされることを切に祈る。

編集長・矢野 優
新潮2023年5月号表紙
目次

【追悼】永遠の大江健三郎文学
お詫びその他。筒井康隆
Numquam est四方田犬彦
作家はカタルシス野田秀樹
重層川上弘美
時代に祝福された作家だった尾崎真理子
三度の出会い多和田葉子
戦後民主主義のレジェンドかつパンク島田雅彦
魂のこと町田 康
大江さんの若さ岡田利規
戦後民主主義と文学平野啓一郎
存在そのものが、文学のような人中村文則
大江さんの笑いを引き継いで佐藤厚志
【再掲載】
難関突破ブレックスルー大江健三郎
愛がすべて[一三〇枚]/山崎修平
一般国民が自衛銃を携行し、義勇兵に志願する東京の今。文芸誌初登場の気鋭が放つポップな想像力は愛の物語か文化瀕死の予兆か。
桜の詩 他二篇谷川俊太郎
苗代島佐伯一麦
松尾芭蕉の跡を追い、かつての大地震で変貌した象潟九十九島を巡る旅で見た風景とは?
カレーの日小山田浩子
野菜炒めカレー店で蘇る。結婚前の妻に、脇のしこりを潰され出た膿の強烈な匂いの記憶。
タムラマロ・ザ・ブラック円城 塔
金髪の征夷大将軍がガリアの族長阿弖流為アテルイと繰り広げた死闘。人類史を問う三十八年戦争。
原型瀬戸夏子
自撮り棒のない世界エトガル・ケレット 広岡杏子 訳
アルコール・ランプの揺らめく炎とともに 追悼 山根貞男蓮實重彦
ファーレ立川の岡崎乾二郎作品撤去撤回とパブリックアートという未来福永 信
生まれ消える心――傷・データ・過去下西風澄
この島にトトロはいない榎本 空
南イタリア、コラートの旅――セコップ書店の仲間たち山崎佳代子
【リレーコラム】街の気分と思考(16)
歩くだけで泣く青山七恵
吸引力の変わらないただ一つの存在平野紗季子
嫉妬と階級の『源氏物語』(五)/大塚ひかり
大楽必易――わたくしの伊福部昭伝(二十)/片山杜秀
小林秀雄(九十五)/大澤信亮
地上に星座をつくる石川直樹
第百十六回・聖地での順応
見えない音、聴こえない絵大竹伸朗
第二一五回・わからないまま
【私の書棚の現在地】
加藤瑞穂『田中敦子と具体美術協会』/【書評委員】高山羽根子
菱岡憲司『大才子 小津久足――伊勢商人の蔵書・国学・紀行文』/【書評委員】乗代雄介
■■ 本 ■■
◆滝口悠生『ラーメンカレー』/青野 暦
◆星野 太『食客論』/朝吹真理子
◆桐野夏生『真珠とダイヤモンド』/中西智佐乃
◆M・H・クリスチャンセン+N・チェイター『言語はこうして生まれる』/森田真生
■■ 新潮 ■■
文化のありがたみ(cultural appreciation)岩城けい
区切りの日加藤拓也
2023年3月17日19時12分金山寿甲
情熱の音溝――「JUKE/19.」(大竹伸朗他)を再アナログ盤化する湯浅 学
無形文化財としての神保町スーザン・テイラー
■■ 連載小説 ■■
大使とその妻(二十)/水村美苗
天使も踏むを畏れるところ(三十二)/松家仁之
漂流(四十二)/町田 康
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【選考委員】上田岳弘/大澤信亮/小山田浩子/金原ひとみ/又吉直樹


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小津のキャメラが捉える原節子の向こうに、戦死した天才・山中貞雄がいる!
『小津安二郎』平山周吉/著
両親が離婚した。母についていくべきだったのに見捨てた自分の弱さ、卑怯さが苦しい。
『影に対して―母をめぐる物語―』遠藤周作/著
あなたも何かを捜しているんですか? 良ければ一緒に捜しませんか。
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