◎内村薫風「ボート」(140枚)の主人公は運動選手のメンタルトレーナーを務めながら、匿名作家として「新潮」で小説を発表している。語り手=作家は、肺がんで余命宣告された父と家族の日々を丹念に描く。
 
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2024年2月号(定価1200円)1月6日発売
新潮メールマガジン[2024/01/05] うまく表示されない場合はブラウザでご覧ください
編集長から
内村薫風「ボート」
浅田 彰ロング・インタヴュー

内村薫風「ボート」(140枚)の主人公は運動選手のメンタルトレーナーを務めながら、匿名作家として新潮で小説を発表している。語り手=作家は、肺がんで余命宣告された父と家族の日々を丹念に描く。なにより魅力的なのは父だ。最後までヒューモアを絶やさず、末期がん=悲劇という固定観念を軽やかに揺さぶる。それだけでない。ヨーロッパの安楽死事情を知った父は、自らの命を素材に、意識を失う直前まで、〈命の哲学〉を手作りで生み出すのだ。その哲学を生きてみせるのだ。虚実のあわいから死と生を問う、これは真摯な物語だ◎浅田 彰「アイデンティティ・ポリティクスを超えて」は、氏のベストセラー・デビュー作『構造と力』(1983)刊行40年および文庫化を機におこなったロング・インタヴュー。少数者の権利承認を支持しつつ、少数者が自らを「アイデンティティの檻」に入れてしまうことをいかに回避できるか。今、「人間(Man)」の脱構築が問われている。

編集長・矢野 優
新潮2024年2月号表紙
目次

ボート[一四〇枚]/内村薫風
安楽死のない国で、迫る死を待ち受ける父。「自分の生を完結させる権利」を問う命の劇。
あなたたちはわたしたちを夢みる[連作4]/川上弘美
わたしたち眷属は砂漠を越えて旅をする。言葉を介さず意識をつなぎ、この世界の果てへ。
静かな場所小野正嗣
息子と犬を連れわたしは海に近い静かな土地に辿り着いた。台風がやってくると知らずに。
夢のなかの政治家の夢福永 信
中東で戦火が上がった夜、日本の閣僚はこんな夢を見ていた。チャーミングな政治小説!
ビッグバン崔 実
ビッグバン、それは宇宙の混沌の正体。小学六年の学年集会で「最後の審判」が始まった。
ブルーライトが目に刺さる本谷有希子
傷つくことは、私のアイデンティティだ――自意識と承認欲求しか信じられない私の世界。
スイスへ.docx藤野可織
ロックウッド/610北、610西ブライアン・ワシントン 訳・解説 柴田元幸
ヒューストンを舞台に家族の心情を微細に描く。「クイア/黒人」若手作家、本邦初訳。
■■ 連載小説 ■■
生活 第二部(五)/町屋良平
大使とその妻(二十九)/水村美苗
天使も踏むを畏れるところ(四十一)/松家仁之
漂流(四十八)/町田 康

第56回《新潮新人賞》応募規定 [ウェブ応募受付中!]
【選考委員】上田岳弘/大澤信亮/小山田浩子/金原ひとみ/又吉直樹
【ロング・インタヴュー】
アイデンティティ・ポリティクスを超えて――『構造と力』文庫化を機に浅田 彰
今こそ同一性の差異化と脱構築を――。一世を風靡した自著に対して、40年後に思うこと。
【対談】
小説家は嘘をつく小川 哲 高瀬隼子 司会・原稿構成 渡辺祐真
作家になった理由からサバイブ術まで。純文学とエンタメの気鋭による忌憚のない初対談。
[短期集中連載]
最後の山[第一回]チョオユー石川直樹
8000メートル峰14座の登頂制覇まで残り2座。最後の挑戦を追ったリアルタイム手記。
独りの椅子 石垣りんのために[新連載第二回]/梯 久美子
【リレーコラム】街の気分と思考(25)
冬人形の旅石沢麻依
香港、烏の目ハラサオリ
小林秀雄(一〇三)/大澤信亮
AIが音楽を変える日榎本幹朗
第六回・AIがアーティストになる日
見えない音、聴こえない絵大竹伸朗
第二二三回・「デビュー展」の先へ
【私の書棚の現在地】
土屋 葉 編著『障害があり女性であること』、児玉真美『安楽死が合法の国で起こっていること』/【書評委員】市川沙央
小山田浩子『かえるはかえる パイプの中のかえる2』/【書評委員】古川真人
■■ 本 ■■
◆大江健三郎『親密な手紙』/赤松りかこ
■■ 新潮 ■■
“幸せの国”、床の上の食卓岡根谷実里
我が良き友よ図野 象
Surviveからliveへ日比野コレコ
舌の裏には蜜と乳ピンク地底人3号


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