ホーム > 雑誌 > 雑誌詳細:波 > 雑誌詳細:波 2006年11月号

波 2006年11月号

(毎月27日発売)

105円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2006/10/25

発売日 2006/10/25
JANコード 4910068231161
定価 105円(税込)

梅原 猛『歓喜する円空』
辻 惟雄/梅原猛が円空か、円空が梅原猛か

【インタビュー】梅原 猛/円空に「美と宗教の結合」を見た

小川洋子『海』
吉田篤弘/勇気を与えてくれるガイド

楡 周平『ラスト ワン マイル』
池上 彰/IT産業よりラストワンマイルだ!

森見登美彦『きつねのはなし』
大森 望/京都小説家の怪談噺

柴谷 晋『静かなるホイッスル』
藤島 大/障害を乗り越える過程から露わになる、普遍的な命題

G・ガルシア=マルケス『コレラの時代の愛』
高山文彦/繁茂する愛

ルル・ワン『睡蓮の教室』(新潮クレスト・ブックス)
叢 小榕/殺すべくして辱しむべからず

佐江衆一『剣と禅のこころ』(新潮新書)
佐江衆一/活人剣のやわらかなこころ

一志治夫『魂の森を行け―3000万本の木を植えた男―』(新潮文庫)
野口 健/魂の現場主義者たち

[南 直哉『老師と少年』刊行記念対談]
内田 樹×南 直哉/「本当の私」というフィクション

田中美代子『三島由紀夫 神の影法師』
中条省平/孤独な多面体を浮き彫る

有馬哲夫『日本テレビとCIA―発掘された「正力ファイル」―』
保阪正康/緻密な努力と精緻な分析

中野香織『着るものがない!』
河毛俊作/上質な知的エンターテイメント

杉本 彩『京をんな』
中森明夫/過剰な愛の伝道者による、禁断のフルコース

小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞決定発表
新潮文庫の海外エンタテインメント
とんぼの本編集部通信
「考える人」-家族が大事 イスラームのふつうの暮らし コラム

連載
赤川次郎/ドイツ、オーストリア旅物語 第19回
宮城谷昌光/古城の風景 第40回 横地城
佐野洋子/シズコさん 第10回
日高敏隆/猫の目草-やっとベトナムを訪れて
大平 健/治療するとカワイクなります。 第3回
木田 元/反哲学入門 第5回
山本一力/研ぎ師太吉 第21回

●編集室だより ●新潮社の新刊案内

編集長から

 玉虫厨子といえば、むかし教科書で、あるいは斑鳩の里で実物をご覧になった方も多いのでは。法隆寺にあり、厨子本体の宮殿部に玉虫の上羽が実際に使われていることから、この名がつきました。今月の表紙の筆蹟は、『玉虫と十一の掌篇小説』を刊行した小池真理子氏。「玉虫の羽は千四百年の歳月を経ても、輝きを失うことはない」というのは驚くべきことで、小池氏も変わることのない男女の出会いや別離、営みを独自の切り口で描き出してみせます。しかも短篇よりも短い「掌篇小説」によって。『虹の彼方』(毎日新聞社)で柴田錬三郎賞を受賞したばかりの著者の小説宇宙をご堪能ください(写真協力・「むし社」、玉虫の標本)。
 その小池真理子氏が選考委員の一人をつとめる、島清恋愛文学賞(第十三回)を、石田衣良氏の『眠れぬ真珠』(新潮社)が受賞しました。この賞は、「大正時代に活躍し、奇才と謳われた作家『島田清次郎』」の名を冠し、その出身地である石川県白山市が創立した賞で、「恋愛小説で、夢と希望に満ちあふれた文芸作品」に授与されます。
 嵐山光三郎氏の『悪党芭蕉』(新潮社)が、第三十四回泉鏡花文学賞を受賞しました。幼少より松尾芭蕉に憧れ、中学三年の夏休みには、日光、白河まで行くが、お金がなくなり途中で帰宅。長じて、『野ざらし紀行』、『鹿島紀行』、『笈の小文』、『更科紀行』、『奥のほそ道』と連なる芭蕉の全紀行を完全踏破した嵐山光三郎氏。そんな氏ならではの、芭蕉への愛情や造詣の深さが文章の端々から伝わってくるのと同時に、この作品、俳聖と呼ばれた芭蕉の、美少年の門弟との禁断の恋や、豪商のパトロンとのつきあい方、弟子たちとの対立など、これまで学者が避けていたタブーにもあえて挑戦し、通説と異なる新解釈がさらりと述べられる問題作です。
 本誌連載の『憑かれた旅人』や『一人の男が飛行機から飛び降りる』(ともに新潮社)などで知られる作家バリー・ユアグロー氏が十一月、アメリカからやってきます。四年前の初来日時は携帯電話の虜となっている日本人に着目。帰国後、日本の読者に向け、“ニホン発、世界初”と話題となった新潮ケータイ文庫の書下ろし配信が始まりましたが、今回の来日では何を発見するのか。来日イベントがあります(詳細は96頁参照)。どうか、この機会をお見逃しなく。

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。