編集長から 「新潮」新年特大号
豪華初顔見世と特集「現代日本の歌」
吉例の新年創作特集は、小説では本誌初登場の小田実
氏「玉砕」一九〇枚と、今が旬の稲葉真弓氏「夜の息子」
一〇〇枚の、力作二編に挟まれて、石原慎太郎、山田詠
美、筒井康隆、保坂和志、津島佑子、日野啓三、原田康
子、椎名誠、坂上弘、笙野頼子、黒井千次、曽野綾子、
後藤明生の一三氏が短編の技を競う豪華初顔見世。多彩
で奥深い味わいを、じっくりお愉しみください。
万葉の時代から、古今・新古今を経て、千年を越え詠
み継がれてきた、世界に類例のない短詩型文学である和
歌は、明治維新と太平洋戦争という二大転機をくぐりぬ
けて、今また息を吹き返してきました。その生命力の秘
密に迫りつつ今後の課題をも問う「現代日本の歌」は、
計一三五頁にわたる大特集。座談会「定型という逆説」
(大岡信・馬場あき子・佐佐木幸綱氏)、対談「歌・歴
史、人生」(斎藤史・桶谷秀昭氏)のほか、塚本邦雄、
山中智恵子から水原紫苑、俵万智におよぶ代表的歌人一
五氏の新作と、評論(岡野弘彦、篠弘、岡井隆氏)に加
えて、アンケート「私の好きな歌」(森澄雄、吉本隆明、
大原富枝、加賀乙彦、阿川弘之氏ら計二八名)に至るま
で、熱く確かな手応えが感じられました。
特別随想は大江健三郎氏「日本人から」、田辺聖子氏
「いきぎれ」、多田富雄氏「姥捨」。詩は渋沢孝輔氏
「物みなは歳日とともに」。福田和也氏「見張り塔から、
ずっと」は、ポップで威勢の良い現代文芸情勢論の第一
回。新連載小説は、庄野潤三氏「庭のつるばら」と宮尾
登美子氏「仁淀川」。なお、本年の表紙は司修氏。コン
ピュータ・グラフィックを駆使した意欲的な画面が衝撃
的です。
|