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編集長から  「新潮」11月特大号
フィクションの力
 14歳の少年による殺人事件が世を震撼させましたが、
柳美里「ゴールドラッシュ」(六〇〇枚一挙掲載)の主
人公も14歳の少年です。舞台は欲望の租界・横浜黄金町。
豪奢な邸宅の地下室で、少年は横暴な父親に対してため
らうことなく凶器を振います。その罪と罰をめぐって、
底の底まで追求される現代人の孤独と絶望は、フィクシ
ョンならではの真実性と衝撃にあふれ、薄っぺらな報道
や論評をはるかに凌駕しました。他は、新潮新人賞(青
垣進「底ぬけ」)と萩原朔太郎賞(財部鳥子「烏有の人)
の発表と、ル・クレジオ・ロングインタビュー、田村隆
一追悼など。
 次号予定は、小説はデビュー作「日蝕」で話題騒然の
新人平野啓一郎が明治日本に舞台を移しての第二作「一
月物語」ほか。特別企画は、新発掘の「三島由紀夫・十
代書簡集」。学習院在学中、「赤絵」同人の東文彦に宛
てて己れの文学観を披瀝した貴重な資料です。
■年間講読料一〇八〇〇円(12冊 税・送料込)