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次号予告────「新潮」2月新春号
           定価900円

まことの花
 先頃芸術院会員に選ばれた丸谷才一氏よりひさびさの
小説を頂戴しました。「今は何時ですか?」八四枚。意
表をつく題名ですが、その内容とスタイルは、趣向に富
んで懐が深く、さすが第一人者とうならされます。今号
の創作掲載は、これ一篇で決まり。
 女形にとって致命的ともいえる老いを逆手にとって
「まことの花」を咲かせた、不世出の名優の演技と、そ
の後半生を描いて、現代歌舞伎の奥義に迫るのは、四五
〇枚一挙掲載の渡辺保氏「歌右衛門伝説」。梨園の確執
等にも目の行き届いた、真に劇的な評伝です。
 対談は「ゴールドラッシュ」をめぐって、筒井康隆氏
と柳美里氏。評論は笠井潔氏「昭和の死」の第四回。世
の中の不況が出版界にも及んだ過ぐる一年でしたが、具
眼の士は、それでも好著を見逃しません。アンケート
「'98私のベストスリー」を、新年の読書ガイドにどう
ぞ。
■年間講読料一〇八〇〇円(12冊 税・発送費込)