本・雑誌・ウェブ
次号予告 「新潮」3月号
           定価900円

わが国、わが国人
 詩人の辻征夫氏は、平成八年「俳諧辻詩集」で萩原朔
太郎賞を受賞したのち創作に転じ、第一作「遠ざかる島」
が川端賞の最終候補作品に選ばれて、その清新な作風が
注目されましたが、今号の巻頭作「ぼくたちの(俎板の
ような)拳銃」一七〇枚は、作者の評価を決定づける佳
品。洗練の極致とも思える現代日本語が奏でる、昭和三
十年代東京下町の少年少女の運命は、切ないまでに読む
者の心をゆさぶります。これと好一対なのは、同じく詩
人伊藤比呂美氏の「ラニーニャ」一四〇枚。小説は、ほ
かに立松和平氏の短編「石」と、司修氏の連作「版画」
最終回の「幽霊」。
 谷川健一、岡野弘彦、前登志夫の長老三氏は、ともに
純然たる戦中派で、わが国の民俗・歴史・文化に造詣が
深く、その仕事の中心に歌を据えていることで共通して
います。新春特別鼎談「わが国、わが国人」は、21世紀
へ向けて、われわれがぜひとも心すべき指針を与えてく
れました。(編集長・前田速夫)
■年間講読料一〇八〇〇円(12冊 税・発送費込)