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高樹のぶ子「格闘」(新連載)
野田秀樹「足跡姫 時代錯誤冬幽霊」(長篇戯曲)

新潮 2017年3月号

(毎月7日発行)

947円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2017/02/07

発売日 2017/02/07
JANコード 4910049010372
定価 947円(税込)

格闘[新連載]/高樹のぶ子

 今こそ私は読み返す。かつて彼について書き、失敗し、自ら捨て去った作品を――。小説家と孤高の柔道家、その愛と闘いに迫る挑戦作。

足跡姫 時代錯誤冬幽霊ときあやまってふゆのゆうれい[長篇戯曲]/野田秀樹

 時は江戸、看板踊り子が御法度の女カブキを舞い、夢見がちな弟は一座に物語を紡いだ。十八代目中村勘三郎丈へ捧げるオマージュ。

◆岩塩の女王/諏訪哲史

 岩塩、なんと崇高で魅惑的な鉱物――伝説の岩塩の女王を求め、天涯孤独な青年は旅立つ。

◆微文字/円城 塔

 人類誕生以前から文字は存在していた。顕微鏡下に見る発掘微小文字化石、その研究報告。

◆今日の記念/滝口悠生

 別れた妻、愛すべき同僚、一晩泊めた見知らぬ女。重層的に浮かび上がる十年間の男の生。

■■ 連載小説 ■■

■野の春(六)/宮本 輝

■ミライミライ(十)/古川日出男

■TIMELESS(十一)/朝吹真理子

■光の犬(十九)/松家仁之

■荒れ野にて(二十二)/重松 清

第49回《新潮新人賞》応募規定

□□ 対談 □□

◆ふたりの「狂うひと」
――島尾敏雄とミホの闘い/瀬戸内寂聴×梯久美子

 文学は暴力なのか、精神の浄化なのか。「死の棘」の夫婦の狂気と愛、作家の業を語り合う。

◆闇のなか、カメラを灯火トーチにして/小野正嗣
――ジャンフランコ・ロージ『海は燃えている』をめぐって

 「難民の玄関口」の現実をどう切り取るか。

◆アメリカという名の悪夢
――ナサニエル・ウエスト論/川本 直

 七十年の時を越え、規格外の異才を召喚する。

◆編集者 漱石[第三回]/長谷川郁夫

 異文化との葛藤が文豪を編集者に鍛え上げた。

■批評の魂[第十四回]/前田英樹

■小林秀雄[第四十一回]/大澤信亮

■地上に星座をつくる/石川直樹
第四十九回・岬の記憶

■見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
第一四九回・縁景の雀

■新潮
・八戸市を「本のまち」に/小林 眞(八戸市長)
・二〇一六年一二月二一日 コロンビア、メデジン‐ダリエン/来田亮二
・MELODY KOGAと音楽と言葉/矢野利裕
・義母の家の小さな犬/栗原俊秀

■本
・古川真人『縫わんばならん』/小山田浩子
・岸 政彦『ビニール傘』/柴崎友香
・曹泳日『世界文学の構造――韓国から見た日本近代文学の起源』/福嶋亮大
・羽田圭介『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』/藤野可織
・高橋弘希『スイミングスクール』/前田英樹
・ブライアン・エヴンソン『ウインドアイ』/松浦 泉

この号の誌面

立ち読み

編集長から

足跡は残る。そして伝わる。
野田秀樹「足跡姫」

野田秀樹氏の最新戯曲「足跡姫~時代錯誤冬幽霊ときあやまってふゆのゆうれい~」を発表する。本作は盟友であった中村勘三郎(二〇一二年没)へのオマージュであり、「『肉体を使う芸術、残ることのない形態の芸術』について、いつか書いてみたいと思い続けていました」と野田氏は語る(公式サイトより)。たしかに舞台上の表現は残らない(映像は「記録」にすぎない)。だが、肉体が消え去った後にも足跡だけは残る。そして、伝わる。中村勘三郎が「十八代目」であったように、時を超えて伝わるのだ。野田氏の戯曲を読む歓びとは、脳内の舞台に立ち上がる虚構世界を存分に「体験」することだが、舞台表現そのものを主題にした本作は、亡き者へのオマージュ――それは文芸の根幹にある営みだ――という特別さもあわせ、表現者・野田秀樹の精神がきわだって高い純度で結晶化したのではないか◎高樹のぶ子氏の新連載小説「格闘」を開始する。肉体と精神を結ぶ高樹氏の新たな挑戦にご期待いただきたい。

新潮編集長 矢野 優

次回予告:又吉直樹「劇場」新潮 4月号で発表

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞