タイトルは、「無題」だった。その突き放した単語に愕然とする。しかし、綾音にはこれが「何」かわかる。(誌面のことば――秋ひのこ「でも、人が死んだ」より)
yom yom vol.67 2021年4月号
(隔月1、3、5、7、9、11月第三金曜日発行)
発売日 | 2021/03/19 |
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JANコード | F80351 |
定価 | 770円(税込) |
◆CLOSE UP
演芸写真家 橘蓮二セレクション
次世代の新星たち[連続企画第5回] 文・写真:橘 蓮二
春風亭昇々/柳家やなぎ/春風亭正太郎
四半世紀にわたり噺家たちの写真を撮り続けた目で、これからの活躍が期待される若手をご紹介。
◆SPECIAL STORY
秋ひのこ「でも、人が死んだ」
同級生の自殺をきっかけに誹謗中傷の的となった娘。身を守るため、夫の故郷での田舎暮らしを始めたが……。R-18文学賞大賞、待望の続編。
◆SERIES
最果タヒ「森森花畑ぼく森森海/森森花畑ぼく森森海 雷雷雷」[第9回]
朝食の詩/部屋/姉/千/少女漫画
橋本長道「覇王の譜」[最終回] 画:サイトウユウスケ
新たなタイトル・蒼天位。直江大と剛力英明、この一戦に勝ったものが得る。
小佐野 彈「我とひとしき人しなければ」[第11回] 写真:Dan Osano
ひとが聞いたら嘲笑うことだろう。でも、あの気持ちはまぎれもなく恋だった――。胸の高鳴りは二十歳の「僕」を新しい世界へと導いていく。
加藤千恵「手の中の未来」[第6回] 画:LIE
なんとなく飲みに誘われたり、新しい友達ができたり、しなくなるのが30代。誰かの結婚や妊娠を素直に喜べなくなったりもした。
中江有里「愛するということは」[第8回] 画:椋本サトコ
ママは自分を救いに来てくれたんだと思っていた。だけど、違った。やっぱりママは、何も変わっていない……。
馳 星周「眠らぬ王 極夜・第二部」[第4回] 画:ケッソクヒデキ
旧友・郭克泰が薬物中毒から脱した。その喜びも束の間――、楊偉民は新たな襲撃を受ける。
武田綾乃「君と漕ぐ4」[第2回] 画:おとないちあき
舞奈のデビュー戦で、いよいよカヌー部4人揃ってフォアで出場することに。結果はいかに!?
早坂 吝「探偵AI3 四元館の殺人」[第4回] 画:吉田ヨシツギ
再び起きた殺人。鍵のかかった部屋で一体どうやって?
◆COMIC
谷口菜津子「今夜すきやきだよ」[第9回]
うきうき気分で帰宅。何かつかんだ、はずだったのに……。
長谷川純子「脳出血で倒れたひきこもりの弟が憎いのか愛しいのかわかりません!」[第4回]
初めて弟の手を握った苦しいばかりに感じた時期にも、思えば立ち直りのきっかけがあり……。
◆CULTURE & COLUMN
南 沙良「届かない手紙を書きたい」[最終回] 撮影:石田真澄
お芝居と私――女優、モデル、18歳。南沙良が綴る等身大エッセイ。
荻上チキ「ポリアモリー・レポート 複数愛のリアル」[最終回]
夫と恋人と協力して、二人の子どもを育てている女性。ポリアモリーが作る新たな家族のかたちとは。
長井 短「友達なんて100人もいらない」[最終回] 撮影:亀島一徳
中学三年生っていうのはそういうもんなんだと悟った。女子も男子も異性への興味が止まらない年頃なのだ。
カレー沢 薫「モテる技術(仮)」[最終回]
堂々完結! 結局モテとはなんだったのか。最終回で語られる「最推し」と俺とモテ。
トミヤマユキコ「境界線に置くことば」[第17回]
『FEEL YOUNG』と女の欲望――安野モヨコ『ハッピー・マニア』『後ハッピーマニア』をめぐって
北村紗衣「結婚というタフなビジネス」[最終回]
『ミドルマーチ』における文化系女子
サンキュータツオ「世界のαに関するカルチャー時評」[第21回]
アップデートされていく言葉たち
今 祥枝「海外エンタメ考 意識高いとかじゃなくて」[最終回]
世界の変化に合わせた、自分の変化の必要性について考える。
清田隆之「一般男性とよばれた男」[第7回] 画:unpis
暴力とは殴る蹴るだけでなく、無視や監視なども含まれる。「DVと無縁だ」と言い切れる男性はどれほどいるだろうか? 恋バナ収集ユニット・桃山商事代表がインタビューして聞いてみる、
武田 鼎「“無視”されてきた男性不妊」[特別寄稿]
〜脚光を浴びる理由、不妊治療の未来は
平原 卓「知のバトン」[最終回]
――哲学者が考え、引き継いできたもの
近代以降、死の概念は大きく変わった。神話が失われ、拠り所を失った隙間を埋めたのは、ニーチェだった――。
渋谷直角「パルコにお店を出したくて」[最終回]
お店づくりプロジェクトも、とうとうクライマックス! これぞ、渋谷直角の集大成。その勇姿をしかと見届けてください!
パリッコ「たそがれドリンカーズ」[最終回]
あの頃から、私たちは「未曾有の事態」を何度か越えた。コロナの時代に友の姿が頼もしい。思いつき途中下車、ちょい飲み物語。今回の思いつきは記憶の中の「あのお店」。
押見修造「午前一時のノスタルジア」
yom yomのこと
執筆者紹介/編集後記
本号休載「ぬくとう君は主夫の人」(磯谷友紀氏)の続きは、「くらげバンチ」にて掲載されます。
編集長から
この秋、ウェブマガジンに進化!
この度、「yom yom」は現在の電子書籍の形態から、ウェブマガジンへとリニューアルすることになりました。創刊時からずっと受け継がれてきた――「いま読みたい作家」による「いま読みたいテーマ」を描いた作品を掲載する――という編集方針を遵守し、より読者の皆さまに近い場所で、「いま」の欲望に忠実な、新しい物語を紹介していきます。リニューアルオープンは、今秋の予定です。すこしの間お休みをいただき、もっともっと読者と物語がひとつになれる場所を目指して準備してまいります。
最新情報は、「yomyom」公式サイト、「yomyom」公式ツイッター(@yomyomclub)に掲載します。どうぞご期待ください!
ウェブマガジン「yom yom」編集長 藤本あさみ
藤本あさみ次期編集長のメッセージにある通り、電子書籍での刊行は本号で最後になります。ウェブマガジンというのは、つまりインターネットで「yom yom」を開くとそのまま読める形です。2017年に電子書籍の雑誌へと姿を変えてちょうど4年、装い新たな門出にどうぞお力添えを。リニューアルオープンまでしばらく間が空きますから、連載途中の作品については各末尾に先の予定などを記しました。
私事ではありますが、2012年の春号から着任し、決して短いとは言えない時間をこの雑誌で過ごせて幸せでした。文芸誌とは、執筆者が時代や人生といった得体の知れないものと、言葉というやはり得体の知れないものとともに切り結ぶ、そのフルパワーの軌跡の集合です。「小さなことだけ描いてある」と唱える作品ほど大きな影と向き合っていたり、世の中には文芸ほど誠実なものはないんじゃないかと思ってきました。
“女子マンガ”というジャンルを確立した雑誌「FEEL YOUNG」の歩みからフェミニズムを捉え直すトミヤマユキコ氏の論考(「境界線に置くことば」)、あるいは医療の現場で“無視”されてきた男性不妊の実態をレポートした武田鼎氏の特別寄稿など、今号も私たちのかけがえのないリアルに向き合う記事をお届けします。もちろん、先ごろ『愛されなくても別に』で吉川英治文学新人賞を受賞した武田綾乃氏の連載「君と漕ぐ4」はじめ、充実の連載作品もお楽しみください。
「誌面のことば」は、秋ひのこ氏の読み切り短編「でも、人が死んだ」より。
〈タイトルは、「無題」だった。その突き放した単語に愕然とする。しかし、綾音にはこれが「何」かわかる。〉
「無題」なもので溢れた世界を、ただ一身において直観する勇気を、私に、そしてもちろん皆さまにも。
「yom yom」編集長 西村博一
バックナンバー
雑誌から生まれた本
yom yomとは?

世界はこんなにも様々な可能性に満ちているから。
「yom yom」はそんな物語の囁きを、あなたがこっそり聞きに来る雑誌です。あなたと一緒に歩いてくれる、あなたのための物語が、見つかる場所になりたいのです。それでお気に入りを読み終えたら、「しょうがない。明日も生きていってやるさ」とでも思っていただければ幸せです。注目作家の小説も詩もコミックも……文芸の「イマココ」に必ず出会えるボリュームたっぷりの文芸誌です。