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ただ互いの差異を受け容れあい、いつか他者の一部が自己を形成していることに気付ける、そのような「未来の言葉」としての技法を探そうとしている。(誌面のことば――ドミニク・チェン「翻訳人生」より)

yom yom vol.60 2020年2月号

(隔月1、3、5、7、9、11月第三金曜日発行)

770円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2020/01/17

発売日 2020/01/17
JANコード F80336
価格 770円(税込)

◆NEW SERIES
中江有里「愛するということは」 画:椋本サトコ
こんなに穏やかな日々が自分に来るとは思わなかった――だけど、「愛」はどこに、どのように存在しているの?

長井 短「友達なんて100人もいらない」 撮影:亀島一徳
すべての人に受け入れられなくていい! すべての人を受け入れる必要もない! ……と思いつつも結局、そこそこ、みんなと仲良くしたい。対人関係への葛藤を抱いて止まない26歳・長井短、初めての連載エッセイ。

◆CLOSE UP
そして、僕たちは舞台に立っている。[連続企画第7回]
早乙女友貴インタビュー

〈『君と漕ぐ3』連載スタート記念〉
武田綾乃、母校同志社大学カヌー部に密着取材!
待望の第3シリーズが今号からスタートする、カヌー部小説「君と漕ぐ」。著者の武田綾乃さんの取材風景をレポートしました!

燃え殻×二村ヒトシ[特別対談] 撮影:菅野健児
大丈夫だよと言ってくれた、もう会うことのない彼女たち
『ボクたちはみんな大人になれなかった』オーディオブック化、記念対談。

◆SPECIAL STORY
恒川光太郎「真夜中の秘密」 画:尾花賢一
山の谷間の家で過ごす男の前に、深夜現れた不審な女。女の抱える闇が、男の日常を壊していき――。

◆SERIES
浅原ナオト「今夜、もし僕が死ななければ」[最終回] 画:新井陽次郎
生きてさえいれば、それが奇跡だと分かち合うことができる。それにどんな意味があるかなんて、まだわからないけれど。

武田綾乃「君と漕ぐ3」[新章スタート] 画:おとないちあき
ながとろ高校に“孤高の女王”こと利根蘭子が突如現れた。大人気カヌー小説、第3弾がいよいよスタート!

最果タヒ「森森花畑ぼく森森海/森森花畑ぼく森森海 雷雷雷」[第2回]

小佐野 彈「我とひとしき人しなければ」[第4回] 写真:Dan Osano
ハヤトの姿が消えて、またアイコちゃんとふたりきりで帰る日々が始まった――二十年を経ても消えることのない「罪と罰」。

馳 星周「極夜」[第6回] 画:ケッソクヒデキ
闇市の台湾人たちと渋谷警察署は全面対決に向かう。楊偉民は、その激流に身を投じることを決めた。

門井慶喜「地中の星」[第13回] 画:山田ケンジ
二度目の現場事故のあと掘削担当の勝治は職を辞した。胴八は横浜港の船渠を訪ね、姿を消した勝治を探す。

燃え殻「これはただの夏」[第4回] 画:森 優 デザイン:熊谷菜生
キミもボクもたくさんの嘘の結晶。

小林勇貴「殺界団地」[第7回] 画:石川晃平
史上最強ママの登場で死のメリーゴーランドが回る♬

結城充考「アブソルート・コールド」[第8回] 画:與座 巧
単軌鉄道に乗った産業密偵と来未を、佐久間種苗の警備隊が急襲した。激しい銃撃戦の末、来未は――。

青柳碧人「猫河原家の人びと3」[第4回] 画:MITO(監修:uki)
かおり姉の披露宴会場の隣に牛の首⁉ 名探偵嫌いの橋神家も登場してわちゃわちゃ推理合戦が。まさかのアンハッピーウェディング! 牛の花嫁殺人事件。

橋本長道「覇王の譜」[第3回] 画:サイトウユウスケ
奨励会時代からの友人、剛力英明。直江は彼にある疑惑を抱く――。

武内 涼「阿修羅草紙」[第7回] 画:加藤木麻莉
呪われた絵巻を奪った賊の正体に迫るすがると音無。しかし、すがるの脳裏に忌まわしき記憶がよみがえる――。

◆COMIC
谷口菜津子「今夜すきやきだよ」[第2回]
料理は確かに好きだけど、それは魔法使いになるためなの。

磯谷友紀「ぬくとう君は主夫の人」[第2回]
家に帰れず、子供も妻に任せきり。それがいけなかったのは分かっているが……。家事をやらせてもらえない神前さん、反省と発見の皿洗い。

◆WORLD TRENDS
木津 毅「トレンドを、読む読む。」
ハイパーなクィアたちが日本にやってきた!

◆CULTURE & COLUMN
新井見枝香×千早 茜「胃が合うふたり」[第4回 神楽坂編] 絵:はるな檸檬
夢の国じゃなくても、夢のような美味を。ふたり、神楽坂にて。書店員×作家、胃袋無尽蔵の食べ友エッセイ。

南 沙良「届かない手紙を書きたい」[第2回]
私をつくる“ものがたり”のはなし。

今 祥枝「海外エンタメ考 意識高いとかじゃなくて」[第7回]
ポリコレは娯楽を窮屈なものになんてしない。365日ドラマと映画を見ながら考える。

尹 秀姫「日プの次はG-EGG![ジーエッグ]
ファンダム爆誕「アイドル・オーディション番組」の見方」
[K-POP & CULTURE]

飯塚みちか「K-POPアイドルの相次ぐ死は、わたしたちにとっても決して無縁のものではない」[K-POP & CULTURE]

樋口聖典「境界線に置くことば」
僕はSNSで募集した相手と交際0日で結婚を決めた。

カレー沢 薫「モテる技術(仮)」[第17回]
やばいと思ったが好きになってしまった。今では反省している。そんな闇モテの可能性とは。

パリッコ「たそがれドリンカーズ」[第4回]
とかくこの世はままならぬ。とはいえ腹を立ててもつまらない。今日は開き直って酒にする。そうして、いい日に変えて明日につなぐ。思いつき途中下車、ちょい飲み物語。今回の思いつきは川崎。

渋谷直角「パルコにお店を出したくて」[第6回]
ついに、新生「渋谷パルコ」完成。デカい! 濃密! カオス! プレオープンの熱狂ぶりをレポート!!

中川龍太郎「午前一時のノスタルジア」
三島由紀夫とは誰だったのか。

円城 塔「世界のαに関するカルチャー時評」
赦さないことを赦すや否や。

ドミニク・チェン「翻訳人生――『未来をつくる言葉』」[特別寄稿]

平原 卓「知のバトン 哲学者が考え、引き継いできたもの」[第7回]
近代を経て凋落したはずの〈外部〉への要求。なぜ再び、希求する人が増えつつあるのか――。

執筆者紹介/編集後記

「ヤマワラウ」(成田名璃子氏)、
「東京デストロイ・マッピング」(新納翔氏)、
「多摩川異聞録」(恒川光太郎氏)は本号休載です

編集長から

自由と空虚のパラドックス

 今号は中江有里さんの小説「愛するということは」、長井短さんのエッセイ「友達なんて100人もいらない」の連載が始まりました。中江さんは『残りものには、過去がある』に続く二度目の連載。心理描写の名手が描く、奇妙な運命の下で誕生した“母と子”の物語にご期待ください。長井さんは女優として舞台や映画、テレビドラマなどで幅広く活躍中。「みんなに受け入れられなくてもいい。でも、そこそこみんなと仲良くしたい」……対人関係への葛藤を抱いて止まない胸の裡。

 人気のインタビューコーナー「そして、僕たちは舞台に立っている。」は、2月15日から始まる2020年劇団☆新感線39興行・春公演「いのうえ歌舞伎『偽義経冥界歌にせよしつねめいかいにうたう』」にも出演する早乙女友貴さん。ほかにも、燃え殻さん×二村ヒトシさんの対談、新章が始まる「君と漕ぐ」取材レポート「武田綾乃、母校同志社大学カヌー部に密着取材!」など、特別記事も満載です。

 今号の「誌面のことば」は、ドミニク・チェン氏の特別寄稿より抜粋させていただきました。新刊『未来をつくる言葉―わかりあえなさをつなぐために―』(1月22日発売)執筆の根底にあった、複数の言語文化を背景に持つ生い立ちと、その言語文化間を繋ぎたいという思いに突き動かされる“翻訳欲の遍歴”は、コミュニケーションの表層を「いいね」だけが滑って行くような現代のあり方を見つめて、とても興味深いものでした。

「ただ互いの差異を受け容れあい、いつか他者の一部が自己を形成していることに気付ける、そのような『未来の言葉』としての技法を探そうとしている」。この「誌面のことば」の一文は、実は直前に「わかりあえなさから出発し、それを解決したり乗り越えようとはせず」というくだりが置かれています。筆者は「解決すること」「乗り越えること」をしない――つまり他者との差異を消し去る方法論ではなく、差異の内包を前提とする主体のあり方を模索しているように思います。

 円城塔氏は「世界のαに関するカルチャー時評」の中で、“自由なコミュニケーション、開かれたウェブ”を標榜したネットが人類の可能性の拡大をもたらしたことは間違いないとしつつ、「あらゆることに通じることは決してできない人間が、あらゆることを表明できる立場にまた一歩近づいたときに露呈したのは、他のコミュニティに属する人々が何世代にもわたって積み上げてきた思索を、自分の直感、自身のコミュニティの慣習で否定できると考える全能感で、他のコミュニティへの説明、解説のための言葉の圧倒的な不足ということになっている」と指摘します。多くの主体が自律的に活動する中で出現したのは、まさに室町時代的な「強訴」の状況。

「あらゆることに通じることは決してできない人間」について、平原卓氏は「知のバトン 哲学者が考え、引き継いできたもの」の中で、その本質を「私たちの能力を絶対的に超え出ている」「その運命から自由であることは、原理的に不可能である」生死に対する無力に求めています。この不可能性に意味を与えてきたのが、来世や不死の魂といった宗教的な〈外部〉の観念であり、一方で近代以後の人の思索は、たとえば自然科学や資本主義のような死後の世界に依拠しない「現実の世界の内から生の意味を説明」する方法によって、この〈外部〉を代替させてきました。

 平原氏は、この代替プロセスが行き着いた場所である現代が、必然的に抱え込む問題に着目します。「〈外部〉は、単に私たち人間自身の存在(=実存)を制約するだけではなく、同時に生の内実を与える条件でもある。一切が任意かつ即座に入手可能な世界では、欲望は生まれず、欲望が達成された時の喜びに満ちあふれることも無い。(中略)これが示唆しているのは、生を制約する〈外部〉の否定が、私たちの実存を空虚にするという論理である」。

「生を制約する〈外部〉の否定」とは、人が根源的な自由を求め獲得してゆく歴史、そのものだったとも言えるでしょう。であるならば、自由の爆発的な拡大が実現したネット社会で、私たちという個々の主体は、まさに円城氏が論ずるように自分の直感だけを拠り所として漂い始め、平原氏が見つめているように、ふたたび「生の内実を与える条件」を求め始めているのでしょう。この自由と人の実存の未来像には、本誌でもこれから様々な論者が考察を重ねてくださることと思います。

 そうして誌面を振り返ってみると、最終回を迎えた浅原ナオト氏の小説「今夜、もし僕が死ななければ」が、ひときわ鮮やかな印象とともに想起されます。「人の死期が見える」能力が主人公に与えられていること。それによって主人公の人生は宿命的に制約され、かつその制約の「意味」は何者によっても与えられないこと。そうした状況の中を生きて行く青年は、人の原理的な不可能性を受け容れると同時に「生の内実」を探し続けねばならない、私たち自身の姿に他ならないと感じるからです。

「yom yom」編集長 西村博一

次号予告

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雑誌から生まれた本

yom yomとは?

世界はこんなにも様々な可能性に満ちているから。

「yom yom」はそんな物語の囁きを、あなたがこっそり聞きに来る雑誌です。あなたと一緒に歩いてくれる、あなたのための物語が、見つかる場所になりたいのです。それでお気に入りを読み終えたら、「しょうがない。明日も生きていってやるさ」とでも思っていただければ幸せです。注目作家の小説も詩もコミックも……文芸の「イマココ」に必ず出会えるボリュームたっぷりの文芸誌です。

yom yom

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