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なんだか先生たちの中で「ハセエリを評価すること=わかってる教師」みたいなノリが生まれているようで、ハセエリも大変だなと思った。(誌面のことば――長井短「友達なんて100人もいらない」より)

yom yom vol.63 2020年8月号

(隔月1、3、5、7、9、11月第三金曜日発行)

770円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2020/07/17

発売日 2020/07/17
JANコード F80343
定価 770円(税込)

◆NEW!
丸山ゴンザレス「ドキュメント国連」
紛争の調停、疫病の阻止――「国連」に期待することは多い。にもかかわらず、私たちはその組織をよく知らない。どんな人が働いているのか。どの国が力をもっているのか。裏社会を観察し続けてきた著者から見た、生の国連の姿とは。

◆CLOSE UP
YOASOBI×橋爪駿輝「僕たちの音楽の答えは小説の中にある」[特別対談] 撮影:坪田充晃
楽曲を届ける2人と、その原作を紡いだ小説家、平成生まれの3人の対話が実現した――。

演芸写真家 橘蓮二セレクション
次世代の新星たち[連続企画第1回] 文・写真:橘蓮二
昔昔亭昇春風亭一花立川志の春
ようやく寄席に灯りが戻ってきた。四半世紀にわたり噺家たちの写真を撮り続けた目でこれからの活躍が期待される若手をご紹介。

そして、僕たちは舞台に立っている。[連続企画第8回] デザイン:椋本サトコ 写真:坪田充晃
俳優・平野良インタビュー
数多くの舞台、ミュージカルで華々しく活躍するキャストたち。彼らはなぜ、パフォーマンスという仕事を選び、邁進しているのか――。その胸のうちに秘めている真意に迫る。

ドリアン助川×ドミニク・チェン「まだ見ぬ地平と大いなる共感」[特別対談]
構成:塚田有那 写真:広瀬達郎(新潮社写真部)
ドミニク・チェンの近著『未来をつくる言葉〜わかりあえなさをつなぐために』を読み、共感を覚えたというドリアン助川。10年来の交友があるというふたりが、言葉の環世界と、その向こうにある共在をあぶり出す。

◆SPECIAL STORY
十市 社「三和音」 画:中島梨絵
大学時代から続く不思議な三角関係に、まさかの新展開!? 長年温めてきたプランを実行しようとした美緒だったが――。

◆SERIES
最果タヒ「森森花畑ぼく森森海/森森花畑ぼく森森海 雷雷雷」[第5回]
東から西/無限/夏の一部/ON/音楽

朱野帰子「わたし、定時で帰ります。 ライジング」[第2回] 写真:plainpicture/アフロ
生活費のために残業する部下にやる気を出させようと、給料アップに動きだした結衣の前に“社歴”の壁が立ちはだかる。

加藤千恵「手の中の未来」[第2回] 画:LIE
見ず知らずの人にむけた自己紹介ってむずかしい。強引な妹の薦めで開始したマッチングアプリで、最初の難関が立ちふさがる。

中江有里「愛するということは」[第4回] 画:椋本サトコ
彼と一緒にいると、気持ちが沈んだり、浮かんだり……。年上の大学生に惹かれる淡い恋心の行方と、ママの悲しげな声の理由。

小佐野 彈「我とひとしき人しなければ」[第7回] 写真:Dan Osano
ナルミさんはやさしい。それに、僕はナルミさんにまだ恋をしているわけじゃない――。期待とトラウマ。ふたつの感情が「僕」を追い詰める。

燃え殻「これはただの夏」[第7回] 画:森 優 デザイン:熊谷菜生
「これでも必死に走ってきたんだけど」「ふつう、大人はそんなに濡れないよね」――キミもボクもたくさんの嘘の結晶。

成田名璃子「ヤマワラウ」[最終回] 画:Miltata
芳乃と詩織。数十年の時を超え、二人の「織り人」の生がいま、ひとつに重なり合う。

結城充考「アブソルート・コールド」[最終回] 画:與座 巧
電子空間で父母と対面した来未。娘を思考体として生かすか決断する尾藤。コチと百の脱出劇は――。生命と非生命の相互感応を描く最終回!

◆COMIC
谷口菜津子「今夜すきやきだよ」[第5回]
恋愛は正義かよ。恋バナでなきゃダメ人間扱いされるのか!?

磯谷友紀「ぬくとう君は主夫の人」[第4回]
もし女性が働くなら「仕事と育児と家事」を全部――。そんな時代に好きな仕事を諦めたお母さんに言えずにいること。

◆WORLD TRENDS
堂本かおる「トレンドを、読む読む。」
BLM運動が向き合う“自覚なきレイシズム”〜「制度的人種差別」の実像。

◆CULTURE & COLUMN
新井見枝香×千早 茜「胃が合うふたり」[第7回 自宅編] 絵:はるな檸檬
おやつの小包、文通LINE。会えない時間をつなぐもの。書店員×作家、胃袋無尽蔵の食べ友エッセイ。

南 沙良「届かない手紙を書きたい」[第5回] 撮影:石田真澄
なんてことない散歩道なのに――女優、モデル、18歳。南沙良が綴る等身大エッセイ。

長井 短「友達なんて100人もいらない」[第4回] 撮影:亀島一徳
もうさ、私が嫌なやつだってバレてるから堂々と嫌なやつとしての案を発表するわ。長井短26歳、初めての連載エッセイ。

北村紗衣「結婚というタフなビジネス」[集中連載第2回]
シェイクスピア劇のカップルたち。

李龍徳「境界線に置くことば」
金学順さんの言葉、李容洙さんの言葉。

笠井信輔「午前一時のノスタルジア」
ネット上の《内と外》で起こる共感と評価の断層。

円城 塔「世界のαに関するカルチャー時評」[第17回]
呪術の世紀 パラノーマル・ネイチャー。

平原 卓「知のバトン 哲学者が考え、引き継いできたもの」[第9回]
マルクス主義が読み切れなかったヘーゲルの一つの到達点。それは、「一人前」の人間であるという自己確信に関する洞察だった――。

今 祥枝「海外エンタメ考 意識高いとかじゃなくて」[第10回]
役柄のイメージが固定化した俳優の苦悩について考える。

清田隆之「一般男性とよばれた男」[第3回] 画:unpis
面白い人になりたい! 顔もキャラも「普通」だけど――恋バナ収集ユニット・桃山商事代表がインタビューして聞いてみる、普通の男マジョリティたちの「なぜか口にできなかった自分語り」。

カレー沢 薫「モテる技術(仮)」[第20回]
2メートル空けて恋をしよう(?)リモート新時代のモテとは。

パリッコ「たそがれドリンカーズ」[第7回]
たった今、好きになった店なのに――思いつき途中下車、ちょい飲み物語。今回の思いつきは上石神井。

恒川光太郎「多摩川異聞録」[第7回]
「雪女」が生まれた青梅。狼信仰の広がる奥多摩の山々、そして湖底に沈んだ山姥の村……。豊潤なるフォークロアに触れる最上流域。

執筆者紹介/編集後記

「パルコにお店を出したくて」(渋谷直角氏)、
「覇王の譜」(橋本長道氏)は本号休載です

編集長から

それをイコールで結んではいけない

 今号の「世界のαに関するカルチャー時評」のなかで、筆者の円城塔さんは以下のように記しています。〈世の中色々、無邪気にイコールで結んではいけないことがあり、イコールをどんどん繋げていけばたいていのことは言えてしまう〉。
 NHKの番組「これでわかった! 世界のいま」は、「黒人=貧乏=怒る=暴れる」という図式でアメリカ全土に広がるブラック・ライブズ・マター(BLM)運動を解説しました。「黒人は貧乏だから怒っていて、怒っているから暴れている」と概説すれば、それは確かにわかりやすい。でも、そうしたざっくり理解が無視しているのは、アメリカの黒人400年の歴史(そのうち245年は「奴隷」)、その歴史が社会の中に経済的格差や偏見を固定化してきたということです。

 社会の構造そのものが、黒人というマイノリティに生まれ落ちた瞬間から不利を強いる。そして、その不平等をマジョリティたる非黒人は意識できない。そうした「制度的人種差別(システミック・レイシズム)」の実像を「トレンドを、読む読む。」欄で伝えてくださったのは、ニューヨーク在住の堂本かおるさん。
 また「海外エンタメ考 意識高いとかじゃなくて」欄の今祥枝さんは、この問題の表出を映画・ドラマを中心としたエンタメ作品の中に探っています。本記事では、二十年ほど前に映画「キューティ・ブロンド」(“ブロンド美人は頭が悪い”という偏見を逆手にとった作品です)で主演したリース・ウィザースプーンが、いま「リトル・ファイアー 〜彼女たちの秘密」(Amazon Prime Video)で、貧しい黒人への白人エスタブリッシュメントの「無意識の『上から目線』」を演じていることも指摘されます。確かにここには、アメリカ社会の現在が生々しい姿を晒していると言えそうです。

 社会のマジョリティによる意識的・無意識的な差別は、ある人の「属性」を社会の側から定義して行く行為の中に潜みます。ここにおいて、アメリカのBLM運動は日本にも(日本で暮らす非黒人にも)接続されてくるのだと思います。
 もちろん、私たちは警官に射殺される社会に暮らしてはいません。しかし、ドリアン助川さんとドミニク・チェンさんは対談「まだ見ぬ地平と大いなる共感」で、次のように語っています。

〈ドミニク (「外人」は)「外の人」という排他的な感覚が際立つ言葉で、聞く度に傷つくのですが、日本にはそうした人種差別に対する想像力がなかなか広く共有されていないと思います。〉
〈助川 なぜこんな話をしているかといえば、新型コロナによって社会が不安定になると、この属性による差別が増大するからなんですね。いま政府が国民に10万円払うと言っていますが、ネット上では「外人にはお金を与えてほしくない」なんてことを平気で言う人がいる。〉

 ドリアン助川さんはこの後、〈「アイデンティティ」というのもとても乱暴な言葉で、こんな言葉は必要ないんじゃないかとすら僕は思うんです。けれどそれを好む人も中にはいて。〉と言葉を継がれるわけですが、それを以下の、前出の堂本かおるさんの記事の一節と読み合わせてみたいのです。

〈(大坂なおみ選手や八村塁選手のような)「日本人」もしくは「スポーツ選手」がアメリカでの反黒人差別運動にかかわるのはふさわしくないと言う批判も多い。そうした非難を投げ掛ける人々は、大坂選手や八村選手を「日本人のスポーツ選手」としてのみ捉えている。だが、人の文化背景やエスニック・アイデンティティは複雑にして複数あるものであり、他者が決められるものでは決してない。〉

 日本人としての強いアイデンティティを示す大坂選手が、同時に自分自身を「black girl」とも呼んでいること。「アイデンティティなんて言葉は必要ない」というのは、人の「属性」定義が当事者を無視して行われる様を指したドリアン助川さん一流のレトリックであって、自分の「属性」は常に自分自身で決めるものだという認識は、人種差別のみならずあらゆる「マジョリティ/マイノリティ」「優位性/劣位性」の関係から生じる圧力に向き合う私たちにとって、とても大切なことであるはずです。

 今号を作りながらこうした事ごとを意識したのは、加藤千恵さんの連載小説「手の中の未来」の原稿を読んだからでもありました。マッチングアプリへの登録作業で自分の属性定義に困ってしまう主人公、その姿はまさに、社会のシステミックな圧が日常生活へと侵入してくる瞬間そのもののように感じます。

 そして「誌面のことば」は、長井短さんの連載エッセイ「友達なんて100人もいらない」より。ある生徒を「高く評価する」ことが、先生たちが自らを「わかってる教師」側に立たせることに繋がってしまう。そうなったらその生徒は、好むと好まざるとにかかわらず、「わかってる教師に評価される人」というポジションから抜けられない。考えてみれば、教室の中にもいろいろな「属性」の強要がありました。
 いや、人種差別と学校生活の話じゃレベルが違うだろというご指摘もあるとは思いますが(そして実際、その違いと線引きを忘れれば、冒頭の円城さんの言う“無邪気なイコール結び”に陥ってしまうはずですが)、でも「この目の前の問題は、どこかで大きな問題に紐づいているのかもしれない」という感覚自体は、考える出発点として肯定したいと思います。

「yom yom」編集長 西村博一

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