![]() | 24:00 上野広小路駅 |
ホームには、あまり人がいなかった。 最後尾のほうへ歩きながら、芳賀は、何を買おうか、と考えた。
若い女が一人、壁に寄りかかりながら手紙を読んでいた。学生だろうか? まだ、女というよりも、女の子といった感じだ。
芳賀に言ったのではなかったらしい。 何を買おう?
再び、それを考えた。 つまり、大きな買い物はできないということか……。 まとまったカネもやっかいなものだな、と芳賀は掌で顎を撫でた。ジャリジャリと伸びかけた髭が指の腹にあたる。
急に金遣いが荒くなったりして、税務署の人間でも押しかけてこられては困る。
芳賀は、なんとなく、愉快な気持ちになった。 芳賀は、力をこめて、ジャリジャリと顎をなで回した。
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![]() | 若い女 |