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 24:01 赤坂見附駅
 大野功一
 (おおの こういち)


     前の電車が行ってしまったばかりなのか、銀座線側のホームにはあまり人がいなかった。

 次の電車あたりが最終だろうと思いながら、大野功一はホームの一番先頭に向かって歩いた。

 気分が良かった。
 今度はうまく契約がまとまりそうだ。あの若宮部長の酒癖の悪さにはいささか参ったが、感触だけは上々だった。来週中には向こうの決定が下りるだろうし、そうなれば太いパイプが通ることになる。お百度参りも報われるというものだ。

 ベンチに座って電車を待とうかとも思ったが、先客が一人いた。男が一人、ベンチで本を読んでいた。男の横も裏側も空いているが、大野はなんとなくベンチの後ろを回ってさらにホームの端まで歩いた。そのあたりは、ホームが極端に狭くなっている。

 ちょっと、飲んじゃったなあ。
 ぐい、と大野は両腕を上げて背伸びをした。
 その拍子に、思い出した。

 そう言えば、千佳子三宅のデートは今日だったな。
 やつら、うまくオフクロさんを騙せたんだろうか? まあ、千佳子はけっこううまくやるだろうけど、問題は三宅のほうだよな。あの男、ほんとにボンボンだもの。

 膝に手をあてて、何度か屈伸運動をやった。
 さほど、酔ってはいないようだ。
 帰ったら、千佳子に電話してみるか。こんな時間じゃ、もう寝てるかな。


    先客  千佳子 三宅

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