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 24:06 神田駅
 宮地峰生
(みやじ みねお)


     ショックだった。

 ほんとなら、こいつらと別れて、違うところへ行きたい。今、門田櫛部と一緒にいるのは耐えられないような気分だった。
 なのに、峰生は2人を追いかけるようにしてホームを走っている。後ろから、ふてくされたように涌島が追ってきていた。

 どうして、いつもこうなんだろう――。

 門田がアイツとつき合っていたのは知っていた。でも、櫛部と? どうしてだ? なんでそんなことになるんだ。

 櫛部に続いて、電車に飛び込んだ。
 ほんとうは、別の車両に乗るか、そうでなければみんなと離れたシートへ行って1人になっていたい。なのに、門田と櫛部が通路に立っているのを見ると、峰生は2人の横へ行った。

「いいのかよ、お前」
 と、櫛部が門田に言う。その口調は、まるで文句を言っているようだった。
「いいって、なにが」
 門田が訊き返す。その表情は笑っていた。いやな笑顔だ。
「いや、だから……」
 言いよどんだ櫛部に、門田が吹き出した。
「だからって、お前、あいつが好きなんだろ?」

 涌島が、割り込むようにして口を挟んだ。
「へんだよ、お前ら。普通だったら、お前ら殴り合いになるとかさ、そういう関係なんじゃないの?」
「なんでだよ」
 門田が問い返したとき、電車のドアが閉まった。

 涌島の言う通りだ。
 門田もへんだし、櫛部もへんだ。
 でも、一番へんなのはアイツじゃないか。

 なんで、アイツ、オレの部屋に来たんだよ。門田から櫛部に乗り換えたなら、どうしてオレなんかと寝るんだよ。オレが好きなら、どうして櫛部の誘いに乗ったりするんだよ。
 わかんないよ。

「だってさあ、門田、お前、彼女を櫛部にとられて、どうしてヘラヘラ笑ってられるわけ?」
 涌島が、そう言いながら峰生のほうへ視線を投げて寄越した。


 
    門田 櫛部 涌島

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