次の時刻

  

 24:06 神田駅
 涌島道博
(わくしま みちひろ)


     チエッ、と道博はホームに唾を吐き捨てた。
 ちょうど電車が着いたところで、みんないっせいに最後尾の車両へ向かって走っている。仕方なく道博も走る。当然ながらビリだった。

 いやなんだよな、オイラ、走るのって。

 みなさん、元気のいいことで――と、道博は前を黙々と走っている宮地の背中を眺めた。門田などは、なんだかリオのカーニバルみたいな雰囲気で踊るようにして走っている。そのすぐ後ろに櫛部が続いていた。櫛部は門田とは対照的に暗い。

 みんなの最後から電車に飛び込むと、門田、櫛部、宮地は席にも着かず、突っ立って吊革にぶら下がっていた。

 元気のよろしいことで。
 道博は、首をすくめた。

「だからって、お前、あいつが好きなんだろ?」

 門田が櫛部に言っている。
 逆だ、お前ら、態度が逆。
 つい、思っていることが口に出た。

「へんだよ、お前ら」
 言うと、門田が視線を寄越した。
「普通だったら、お前ら殴り合いになるとかさ、そういう関係なんじゃないの?」
「なんでだよ」

 ドアが閉まる。電車は、走る。
 やってらんねえよなあ、と道博は顔をしかめた。

「だってさあ、門田、お前、彼女を櫛部にとられて、どうしてヘラヘラ笑ってられるわけ?」


 
    宮地 門田 櫛部

   次の時刻