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現在位置確認。
と、P13AXはスクリーンに座標を呼び出した。
北緯35度39分50秒、東経139度45分45秒。確認終了。
ターゲット補足中。ターゲット確認。距離8メートル30センチ。ターゲ
ット停止。パターン照合開始。照合終了。ターゲット確認。
AG機の改良型として作られたP13AXは、その内部に超小型の核燃料
を搭載している。AG機の連続稼働時間が5時間だったことを考えれば、こ
のAXの能力は飛躍的な進歩を遂げたと言えるだろう。なにせ、計算上では、
AXの連続稼働時間は1年6ヶ月なのだ。
ただ、むろん、その実証はP13AXの作動が終了するのを待たなければ
ならないのであるが。
P13AXは、完全自動によるヒューマノイド型殺人機である。
その優れた機能は、入力されたターゲットを、たった4時間20分で補足
し追尾状態に入ったことでもはかり知ることができる。
通信回路不良。
P13AXのスクリーンに、赤い点滅が現われた。
オートスキャン開始。通信不能。予備回路作動開始。
予備回路作動せず。オートスキャン終了。
問い合わせ開始。通信不能。問い合わせ不能。
回路強制切断。強制切断終了。
P13AXには、優秀な目的遂行機能が備わっている。
多少の故障が発生したとしても、補償回路がそのトラブルを回避するよう
に作られているのである。
だから、このとき発生した通信回路の不良に、P13AXは、自動的にそ
の回路を強制切断することによって対処した。それは、強制切断がもっとも
適切であるとAXの中枢システムが判断を下したからに他ならない。
ターゲット音声認識開始。音声フォーカス移動開始。
――おかしいと思わない? あたしはもう25なのよ。子守が必要に見え
る?
ターゲット音声補足。音声パターン照合開始。照合終了。
ターゲット確認。
P13AXには、当然のことながら感情が存在しない。
それは、殺人マシンとして必須の条件だった。
暗殺を試みる場合、人間の殺し屋では感情の起伏による失敗があり得る。
それは致命的な欠陥だった。だから、20年も前から機械による殺人の可能
性が探り続けられてきた。その大いなる成果が、現在、P13AXとして完
成したのだ。
ターゲット攻撃準備開始。
状況確認。
ミサイルによる攻撃――不適。
爆破攻撃――不適。
銃による攻撃――不適。
ナイフによる攻撃――不適。
絞殺――不適。
撲殺――不適。
毒殺――不適。
状況確認終了。
攻撃準備、一時停止。
待機開始。
P13AXは、最良の殺人を遂行すべく完璧にプログラムされているので
ある。
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