料理に失敗なんて、ない! 『一汁一菜でよいと至るまで』ほか、5月の新潮新書
 
「新潮新書」メールマガジン[457号] 2022年5月10日発行
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今月の編集長便り
提案・道程・予測
 GWが終わり、また蒸し暑い時期がやってきます。気象庁によると、今夏は全国的に猛暑の予測、マスクの日々がよけいつらくなりそうです。コロナの感染状況は落ち着きつつあるものの、欧米諸国のように思い切って規制を緩めるとも思えず、周囲に気をつかうマスク生活は当分続きそうです。
 5月新刊『「脱・自前」の日本成長戦略』は、デロイト トーマツ・グループ執行役の松江英夫氏による日本再生のための組織論。「失われた30年」からどうすれば抜け出せるのか、これまでも様々唱えられてきましたが、アメリカや中国など成長国に比べて、依然として日本の立ち遅れ感は否めません。本書では、企業を中心に日本的な組織の思考スタンス=タコツボ的な自前主義を脱却し、それぞれの組織の強みをフレキシブルに最大化していく新たな方策を提案します。
一汁一菜でよいと至るまで』は、料理研究家の土井善晴氏による初めての新書。昭和の家庭料理の第一人者・土井勝氏の息子に生まれ、フランス料理と日本料理の名店で料理修業を重ね、試行錯誤を重ねてたどり着いたのが「一汁一菜でよい」という料理哲学でした。料理人として頂点を極めながらも、日常の暮らしの中で人を幸せにする料理を探究し続けるドキュメント・エッセイとも呼びたくなる一冊は、ベストセラー『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)と併せて読むと、「具沢山の味噌汁・ご飯・お漬物」の味わいがさらに深まります。
 そして今こそ注目の一冊は『自衛隊最高幹部が語る台湾有事』。昨年、米インド太平洋軍司令官が公聴会で「6年以内に中国が台湾に侵攻する恐れがある」と証言。ウクライナ戦争が始まって以来、台湾有事は次に起こる「大国による強引な侵略」として世界の注目を集めています。それが現実となった時、日本の政治・軍事・外交はいったいどう対応するのか、岩田清文(元陸上幕僚長)、武居智久(元海上幕僚長)、尾上定正(元航空自衛隊補給本部長)、兼原信克(元国家安全保障局次長)の4氏が、高度なシュミレーションでシナリオを描き出します。 前著『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』に続き、すぐそこにある日本の安全保障リスクを突きつけられる思いです。
編集部便り
〈その230〉
メシか酒か
 先日、1月刊『「やりがい搾取」の農業論』の著者、野口憲一さんと「打ち上げ」の会食をしました。野口さんは現役の農業者、「1本5万円のレンコン」も売っている商売人、なおかつ博士号も持つ民俗学者といろんな活動をされているので、せっかくの会食の機会には、ご本人にとって何か参考になる店を選びたいと考えて、銀座にある「八代目儀兵衛」というお店に行きました。
 このお店の運営会社はもともと、京都にあるごく普通の町のお米屋さんだったのですが、商売が先細りする中で、「お米ギフトのネット通販」という市場を創って大復活しました。さらに、炊きたてのお米のうまさを味わって貰うために「お米のフルコースを提供する日本初の業態」として開業したのが、「米料亭」をうたうこのお店です。実を言うと、ここは私が編集を担当した『衰退産業でも稼げます―「代替わりイノベーション」のセオリー―』(藻谷ゆかり・著)という本の中で事例として紹介されていて、編集している時から「いつかチャンスがあったら行ってみよう」と狙っていたのでした(笑)。
 実際に食べてみると、「お米を食わせる」というコンセプトで一貫しているので、お米のうまさ&おかず能力の高さはさすがでした。一方で、すべてのお皿でお米が使われていて、お米をバクバク食べてしまうので、あんまり酒は進みません。結局、ビール一杯と日本酒一合飲んだところで食事が終わってしまい、あとはお茶を飲みながらの歓談となりました。
 私は白いお米は大好きなのですが、お酒のアテにはあんまりなりません。白飯で腹一杯になってしまうと、酒を飲みたい気も落ち着いてしまいます。結局、私のような意地汚い呑兵衛なら、ランチに腹一杯白飯を掻き込むつもりで来るのが正解の店、という気がしました。ま、銀座でランチなんて年に一回あるかないか、ですけど。
 ここ2年ほどはコロナでほとんど会食に行けていないのですが、実際に出歩くと、やはり何かしらの気付きはあるものです。
新刊情報
『一汁一菜でよいと至るまで』土井善晴/著
『自衛隊最高幹部が語る台湾有事』岩田清文/著 、武居智久/著 、尾上定正/著 、兼原信克/著
『「脱・自前」の日本成長戦略』松江英夫/著
5月刊は5月18日発売!
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中野信子/著 、三浦瑠麗/著、『不倫と正義』
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