新潮社

「なにしろ歳月こそが」

 二十九歳のときに生まれて初めて小説(らしきもの)を書き、それが文芸誌の新人賞をとるまで、自分が小説家になるなんてまったく考えもしなかった。しかし受賞の知らせを受けたその時点から、「僕は小説家なのだ」と確信するようになった。性格がただ厚かましいだけなのか、それともそこで僕は「本来の自分を見いだした」ことになるのか、どちらかは今でも判別しがたい。
 しかしともあれ、それから半世紀近く、ほぼ休みなく小説を書き続けてきた。書きたいときに書く、書きたくないときは書かない、というのが小説家としての僕の一貫した方針だった。原則として注文は受けない。そのようにいわば気の向くまま、勝手にこつこつ書き上げてきた作品が、全集という改まったかたちになった。積み上げるとけっこうな高さになる。
 最初の頃のものと、あとになってからのもの、年を経るにつれて作品の中身も文体もずいぶん変化を遂げている。そしてそれに合わせて、僕自身ももちろん変化を遂げた。いや、それともその逆なのか。僕の変化に合わせて作品もそれなりの変化を遂げたのか? いずれにせよ、できるだけ長くこれらの作品が人々の手に実際に取られ、読み継がれていくといいなと思う。なにしろ歳月こそが、作品の値打ちを判定するものなのだから。

村上春樹

村上春樹WORKS 全巻内容

第1巻 長編小説Ⅰ

2
配本

風の歌を聴け
1973年のピンボール
羊をめぐる冒険

すべてはここから始まった。現代文学を更新したポップな風が吹きわたる〈僕と鼠、そして羊男〉の織りなす初期三部作

2027.3 刊行

第2巻 長編小説II

3
配本

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

広範な読者の心に突き刺さる、もっと柄の大きな小説を──そんな意図をみごとに達成した、はじめての書下ろし小説

2027.5 刊行

第3巻 長編小説III

6
配本

ノルウェイの森

強靭で透徹したリアリズムの文体で、ある時代の戦闘の人的損耗カジュアリティーズ を描き尽くす「一〇〇パーセントの恋愛小説」

2027.11 刊行

第4巻 長編小説IV

8
配本

ダンス・ダンス・ダンス

作者自ら〈宿命的に引き寄せられる〉という羊男とはいったい何か? 高度資本主義社会を生きる「僕」の、初期三部作の世界への帰還

2028.3 刊行

第5巻 長編小説V

12
配本

ねじまき鳥クロニクル(全)

第1部:泥棒かささぎ編、第2部:予言する鳥編、第3部:鳥刺し男編

ねじまき鳥は世界のねじを巻き、世田谷の路地は歴史と人間の闇奥へと主人公を運んでいく。圧倒的な総合小説の誕生

2028.11 刊行

第6巻 長編小説VI

10
配本

スプートニクの恋人
アフターダーク

それまでの「村上春樹的文章」に訣別するため敢えてレトリックを全開にし、もう一方では初の三人称長編小説での実験へと突き進む。転換点をなす二作品

2028.7 刊行

第7巻 長編小説VII

14
配本

海辺のカフカ

君は世界でいちばんタフな十五歳になる──。〈カフカ少年〉の一人称パートと〈ナカタ老人〉の三人称パートを並行させ、物語はより豊かで複合的に広がっていく

2029.3 刊行

第8巻 長編小説VIII

1
配本

1Q84(全)

BOOK1〈4月-6月〉、BOOK2〈7月-9月〉、BOOK3〈10月-12月〉

多彩なキャラクター、ノンストップの展開、根源的な悪や信仰の描出、摩滅することのない愛、そして無類のリーダビリティ。作家的膂力を満喫すべき超大作

2027.1 刊行

第9巻 長編小説IX

5
配本

国境の南、太陽の西
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

『ねじまき鳥クロニクル』から切り離した章を成長させた『国境~』、短編の構想が大きく膨らんでいった『色彩~』。過去の響きと向き合う男たちの物語

2027.9 刊行

第10巻 長編小説X

9
配本

騎士団長殺し(全)

第1部:顕れるイデア編、第2部:遷ろうメタファー編

古代の争い、ホロコースト、今も続く悪と善とのせめぎ合い。肖像画家の「私」は謎の絵画「騎士団長殺し」に導かれ、歴史と世界の綻びに気づき始める

2028.5 刊行

第11巻 長編小説XI

15
配本

街とその不確かな壁

四〇年前に封印した中編をリブートし、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と共鳴する長編小説。「壁」はより甘美に、さらに怖ろしく迫ってくる

2029.5 刊行

第12巻 連作小説集

13
配本

回転木馬のデッド・ヒート
神の子どもたちはみな踊る
東京奇譚集
女のいない男たち
一人称単数

阪神大震災が題材ながら地震も神戸も直接描かず、象徴性に溢れる『神の子ども~』、都市生活者を巡る怪異譚『東京~』等、連作形式の粋と技倆を極めた五作品

2029.1 刊行

第13巻 (ほぼ)全短編小説

7
配本

中国行きのスロウ・ボート
カンガルー日和
螢・納屋を焼く・その他の短編
パン屋再襲撃
TVピープル
使いみちのない風景
夜のくもざる
レキシントンの幽霊
ふわふわ
バースデイ・ガール
恋するザムザ ほか
単行本未収録作も収録

「長編小説で掬えないものを掬うのが短編小説のひとつの目的である」──デビュー以来の短編を網羅する待望の作品集。約一〇〇編を収録

2028.1 刊行

第14巻 ノンフィクション

11
配本

アンダーグラウンド
約束された場所で underground 2

時代を震撼させた地下鉄サリン事件の被害者たち、そして加害者側のカルト教団内部にいる/いた者たちの肉声を聞き届けた二部作

2028.9 刊行

第15巻 エッセイ

4
配本

走ることについて語るときに僕の語ること
職業としての小説家/猫を棄てる 父親について語るとき
自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)
「壁と卵」──エルサレム賞・受賞のあいさつ

作家としての歩みを振り返った〈語られざる講演録〉や、文学的立場を明らかにするステイトメント、戦争体験を持つ亡父の思い出などを精選

2027.7 刊行

第16巻 最新作

16
配本

夏帆 The Tale of KAHO ほか

初めてひとりの女性を主人公に据えた長編小説ほか、『村上春樹WORKS』刊行開始後の最新作を収録する

2029.7 刊行

村上春樹WORKSに寄せて

井戸の底に、深い森に、ひとりの部屋に、風に季節に、村上春樹の文章は、見えないもの、名づけられないものを映してきた。その言葉にふれるたび、世界は輪郭を変え、わたしたちは何度でも、見知らぬ懐かしい風景へと降りていく。ここにあるのは物語だけが辿り着くことのできる夢であり、本当であり、それは遥かな時間をかけて紡がれ届けられた、まったくの贈り物なのだ。

川上未映子[作家]

『ドライブ・マイ・カー』脚本執筆は不思議な体験で、3つの短編を結び合わせるうちに、思いがけずより一層深い「村上春樹的世界」と出会った。「物語」というものの底知れなさを知る体験だった。この全集を読む者は誰しも、底なしの海に潜ることになる。

濱口竜介[映画監督]

改めて、文字や文章を書く事の作業って凄いなぁと思う。リズム良く気持ち良いねェと思って読んでいると、いつの間にか『現実のリアリティとファンタジー』が同時にやって来ている。
お互いに対極であるはずのモノが一緒に文章の中に。
文字は奇妙な世界を進んで行く「スタンド」って訳だ。
創作の全体像を見渡せる「村上春樹WORKS」は本当に嬉しい。

荒木飛呂彦[漫画家]

村上春樹は、ずっと事件で、ずっと日常だった。私自身も、装飾的でないのに魅力的な日本語(どうしたら、こんなことができるかは未だに謎)に、惹かれ続けてきた一人だ。元祖、考察されがちな人。それでも、考察されつくせない人。ヲタクにもミーハーにも愛される人。「村上春樹WORKS」はまた事件となり、日常となっていくだろう。

俵万智[歌人]

『村上春樹WORKS』の特色

全著作のうち、ほぼすべての小説、そして著者自らが精選したノンフィクション、エッセイを集成する。半世紀近くに及ぶ多彩な文業の軌跡を堪能できる全16巻。◉単行本で3巻本だった『1Q84』(約3400枚)や『ねじまき鳥クロニクル』(約2200枚)など大規模な作品も1巻に収める。◉安西水丸氏の絵をあしらい、軽快で堅牢かつ風格ある筒函入豪華愛蔵本。

[形態]A5判(左右148ミリ×天地210ミリ)角背/小口折り/筒函入り

第1回配本 〈2027年1月27日発売〉
第8巻 1Q84(全)
自作解題 村上春樹「それだけではまだ足りない」
月報連載 三宅香帆「村上さんと走る 1」
予価 17,000円(税別)

第2回配本 〈2027年3月25日発売〉
第1巻 風の歌を聴け/1973年のピンボール/羊をめぐる冒険
自作解題 村上春樹「キッチン・テーブル小説の誕生/初めての本格的長編小説」
月報連載 三宅香帆「村上さんと走る 2」
予価 14,000円(税別)

以後、隔月に1巻ずつ刊行予定。
[予価]11,000円~17,000円(税別)
*都合により編集内容、刊行時期、仕様、価格などを一部変更することがあります。ご諒承ください。
協力:早稲田大学国際文学館 絵:安西水丸

購入特典

購入特典 『村上春樹自選 単行本未収録エッセイ集』

第1回配本(第8巻『1Q84(全)』2027年1月刊)~第5回配本(第9巻『国境の南、太陽の西/色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』2027年9月刊)の5冊すべてをご購入の方に、特典としてブックレット『村上春樹自選 単行本未収録エッセイ集』(100ページほどを予定)を無料進呈いたします。応募方法は第1回配本/第8巻『1Q84(全)』に挟み込むハガキをご覧ください。

「新潮ショップ」限定 有償特典付全巻セット(数量限定)9月25日(金)AM11:00より予約開始

特典は著者直筆サイン入り『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』手描き地図

新潮ショップ」で有償特典付『村上春樹WORKS』全16巻セット(2029年7月完結予定)を予約購入した方には、有償特典として全巻刊行後に著者直筆サイン入り『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』手描き地図(作品執筆時に著者によって描かれた地図の精妙美麗な複製版に、新たに一枚ずつサインを入れます)を進呈します。予約販売開始は9月25日(金)AM11:00です。ご購入には「新潮ショップ」の会員登録(無料)が必要ですので、9月25日までに事前登録を済ませておくことをお勧めします。
セット価格を含め、詳細は9月14日(月)に「新潮ショップ」商品販売ページ、およびプレスリリースにてお知らせいたします。

◆注意事項:各巻を発売日ごとに都度発送いたします。
◆注意事項:著者直筆サイン入り地図のお届けは全巻刊行後です。
◆注意事項:上記「購入特典」のブックレット『村上春樹自選 単行本未収録エッセイ集』も、準備が整い次第お届けします。

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■ご注文につきまして
ご注文は、書店店頭のパンフレットに貼付されている注文書(はがきサイズ)または以下の注文書(PDF)に必要事項をご記入頂きお近くの書店へお申込みください。
「新潮ショップ」限定 有償特典付全巻セット(数量限定)をお買い求めのお客様は9月25日以降に新潮ショップのサイトにてご注文をお願い申し上げます。

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18,700円(税込)

村上春樹

村上春樹

ムラカミ・ハルキ

1949年京都府生まれ。『風の歌を聴け』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『東京奇譚集』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』『夏帆─The Tale of KAHO─』などの小説の他、『レイモンド・カーヴァー全集』、J.D.サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』、スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』、トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』『遠い声、遠い部屋』『草の竪琴』など訳書多数。

村上春樹 Haruki Murakami 新潮社公式サイト (外部リンク)