「なにしろ歳月こそが」
二十九歳のときに生まれて初めて小説(らしきもの)を書き、それが文芸誌の新人賞をとるまで、自分が小説家になるなんてまったく考えもしなかった。しかし受賞の知らせを受けたその時点から、「僕は小説家なのだ」と確信するようになった。性格がただ厚かましいだけなのか、それともそこで僕は「本来の自分を見いだした」ことになるのか、どちらかは今でも判別しがたい。
しかしともあれ、それから半世紀近く、ほぼ休みなく小説を書き続けてきた。書きたいときに書く、書きたくないときは書かない、というのが小説家としての僕の一貫した方針だった。原則として注文は受けない。そのようにいわば気の向くまま、勝手にこつこつ書き上げてきた作品が、全集という改まったかたちになった。積み上げるとけっこうな高さになる。
最初の頃のものと、あとになってからのもの、年を経るにつれて作品の中身も文体もずいぶん変化を遂げている。そしてそれに合わせて、僕自身ももちろん変化を遂げた。いや、それともその逆なのか。僕の変化に合わせて作品もそれなりの変化を遂げたのか? いずれにせよ、できるだけ長くこれらの作品が人々の手に実際に取られ、読み継がれていくといいなと思う。なにしろ歳月こそが、作品の値打ちを判定するものなのだから。













村上春樹WORKSに寄せて
『ドライブ・マイ・カー』脚本執筆は不思議な体験で、3つの短編を結び合わせるうちに、思いがけずより一層深い「村上春樹的世界」と出会った。「物語」というものの底知れなさを知る体験だった。この全集を読む者は誰しも、底なしの海に潜ることになる。
濱口竜介[映画監督]
改めて、文字や文章を書く事の作業って凄いなぁと思う。リズム良く気持ち良いねェと思って読んでいると、いつの間にか『現実のリアリティとファンタジー』が同時にやって来ている。
お互いに対極であるはずのモノが一緒に文章の中に。
文字は奇妙な世界を進んで行く「スタンド」って訳だ。
創作の全体像を見渡せる「村上春樹WORKS」は本当に嬉しい。
荒木飛呂彦[漫画家]
村上春樹は、ずっと事件で、ずっと日常だった。私自身も、装飾的でないのに魅力的な日本語(どうしたら、こんなことができるかは未だに謎)に、惹かれ続けてきた一人だ。元祖、考察されがちな人。それでも、考察されつくせない人。ヲタクにもミーハーにも愛される人。「村上春樹WORKS」はまた事件となり、日常となっていくだろう。
俵万智[歌人]
『村上春樹WORKS』の特色
全著作のうち、ほぼすべての小説、そして著者自らが精選したノンフィクション、エッセイを集成する。半世紀近くに及ぶ多彩な文業の軌跡を堪能できる全16巻。◉単行本で3巻本だった『1Q84』(約3400枚)や『ねじまき鳥クロニクル』(約2200枚)など大規模な作品も1巻に収める。◉安西水丸氏の絵をあしらい、軽快で堅牢かつ風格ある筒函入豪華愛蔵本。
[形態]A5判(左右148ミリ×天地210ミリ)角背/小口折り/筒函入り
- 各巻に著者が執筆当時を振りかえる「自作解題」を付す。
- 月報には文芸評論家・三宅香帆氏が全作品を読みなおす「村上さんと走る」を連載。
- [購入特典]ブックレット『村上春樹自選 単行本未収録エッセイ集』
『村上春樹WORKS』を第1回から第5回配本までお買上げの方に特典として無料進呈。 - [購入特典]「直筆サイン入り『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』手描き地図」
「新潮ショップ」限定 有償特典付全巻セット(数量限定)をご購入された方に進呈。
第1回配本 〈2027年1月27日発売〉
第8巻 1Q84(全)
自作解題 村上春樹「それだけではまだ足りない」
月報連載 三宅香帆「村上さんと走る 1」
予価 17,000円(税別)
第2回配本 〈2027年3月25日発売〉
第1巻 風の歌を聴け/1973年のピンボール/羊をめぐる冒険
自作解題 村上春樹「キッチン・テーブル小説の誕生/初めての本格的長編小説」
月報連載 三宅香帆「村上さんと走る 2」
予価 14,000円(税別)
以後、隔月に1巻ずつ刊行予定。
[予価]11,000円~17,000円(税別)
*都合により編集内容、刊行時期、仕様、価格などを一部変更することがあります。ご諒承ください。
協力:早稲田大学国際文学館 絵:安西水丸
購入特典
購入特典 『村上春樹自選 単行本未収録エッセイ集』
第1回配本(第8巻『1Q84(全)』2027年1月刊)~第5回配本(第9巻『国境の南、太陽の西/色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』2027年9月刊)の5冊すべてをご購入の方に、特典としてブックレット『村上春樹自選 単行本未収録エッセイ集』(100ページほどを予定)を無料進呈いたします。応募方法は第1回配本/第8巻『1Q84(全)』に挟み込むハガキをご覧ください。
「新潮ショップ」限定 有償特典付全巻セット(数量限定)9月25日(金)AM11:00より予約開始
特典は著者直筆サイン入り『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』手描き地図
「新潮ショップ」で有償特典付『村上春樹WORKS』全16巻セット(2029年7月完結予定)を予約購入した方には、有償特典として全巻刊行後に著者直筆サイン入り『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』手描き地図(作品執筆時に著者によって描かれた地図の精妙美麗な複製版に、新たに一枚ずつサインを入れます)を進呈します。予約販売開始は9月25日(金)AM11:00です。ご購入には「新潮ショップ」の会員登録(無料)が必要ですので、9月25日までに事前登録を済ませておくことをお勧めします。
セット価格を含め、詳細は9月14日(月)に「新潮ショップ」商品販売ページ、およびプレスリリースにてお知らせいたします。
◆注意事項:各巻を発売日ごとに都度発送いたします。
◆注意事項:著者直筆サイン入り地図のお届けは全巻刊行後です。
◆注意事項:上記「購入特典」のブックレット『村上春樹自選 単行本未収録エッセイ集』も、準備が整い次第お届けします。
■ご注文につきまして
ご注文は、書店店頭のパンフレットに貼付されている注文書(はがきサイズ)または以下の注文書(PDF)に必要事項をご記入頂きお近くの書店へお申込みください。
※「新潮ショップ」限定 有償特典付全巻セット(数量限定)をお買い求めのお客様は9月25日以降に新潮ショップのサイトにてご注文をお願い申し上げます。
- 18,700円(税込)
村上春樹
ムラカミ・ハルキ
1949年京都府生まれ。『風の歌を聴け』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『東京奇譚集』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』『夏帆─The Tale of KAHO─』などの小説の他、『レイモンド・カーヴァー全集』、J.D.サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』、スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』、トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』『遠い声、遠い部屋』『草の竪琴』など訳書多数。





井戸の底に、深い森に、ひとりの部屋に、風に季節に、村上春樹の文章は、見えないもの、名づけられないものを映してきた。その言葉にふれるたび、世界は輪郭を変え、わたしたちは何度でも、見知らぬ懐かしい風景へと降りていく。ここにあるのは物語だけが辿り着くことのできる夢であり、本当であり、それは遥かな時間をかけて紡がれ届けられた、まったくの贈り物なのだ。
川上未映子[作家]