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ショックだった。
ほんとなら、こいつらと別れて、違うところへ行きたい。今、門田や櫛
部と一緒にいるのは耐えられないような気分だった。
なのに、峰生は2人を追いかけるようにしてホームを走っている。後ろ
から、ふてくされたように涌島が追ってきていた。
どうして、いつもこうなんだろう――。
門田がアイツとつき合っていたのは知っていた。でも、櫛部と? どう
してだ? なんでそんなことになるんだ。
櫛部に続いて、電車に飛び込んだ。
ほんとうは、別の車両に乗るか、そうでなければみんなと離れたシート
へ行って1人になっていたい。なのに、門田と櫛部が通路に立っているの
を見ると、峰生は2人の横へ行った。
「いいのかよ、お前」
と、櫛部が門田に言う。その口調は、まるで文句を言っているようだっ
た。
「いいって、なにが」
門田が訊き返す。その表情は笑っていた。いやな笑顔だ。
「いや、だから……」
言いよどんだ櫛部に、門田が吹き出した。
「だからって、お前、あいつが好きなんだろ?」
涌島が、割り込むようにして口を挟んだ。
「へんだよ、お前ら。普通だったら、お前ら殴り合いになるとかさ、そう
いう関係なんじゃないの?」
「なんでだよ」
門田が問い返したとき、電車のドアが閉まった。
涌島の言う通りだ。
門田もへんだし、櫛部もへんだ。
でも、一番へんなのはアイツじゃないか。
なんで、アイツ、オレの部屋に来たんだよ。門田から櫛部に乗り換えた
なら、どうしてオレなんかと寝るんだよ。オレが好きなら、どうして櫛部
の誘いに乗ったりするんだよ。
わかんないよ。
「だってさあ、門田、お前、彼女を櫛部にとられて、どうしてヘラヘラ笑
ってられるわけ?」
涌島が、そう言いながら峰生のほうへ視線を投げて寄越した。
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