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半分、腹が立っていた。
前をピョコピョコ走っている門田の襟首をつかんで壁に押しつけてやり
たくなってくる。
ホームの一番後ろまで走り、門田が電車に乗り込んだ。その顔は、いか
にも楽しそうに笑っている。そう、いかにも楽しそうに。
「いいのかよ、お前」
通路に立ったままの門田に、大樹は並びかけながら言った。
「いいって、なにが」
ニコニコと笑いながら訊き返す門田を、大樹は、溜息をつきながら見返
した。
「いや、だから……」
門田が、吹き出して大樹の顔を覗き込む。
「だからって、お前、あいつが好きなんだろ?」
大樹は、秋葉たちのほうへ目をやった。
秋葉と飛沢がシートに座り、南雲はその前に立っていた。飽きもせず、
ゲームを続けているらしい。
「へんだよ、お前ら」と、横から涌島が口を出してきた。「普通だったら、
お前ら殴り合いになるとかさ、そういう関係なんじゃないの?」
「なんでだよ」
と、門田が笑いながら言った。
その通りだと、大樹も思う。
なんで怒らないんだ。
どうしてオレを殴らないんだ。
強がってみせてるのか?
電車が動き始めたとき、涌島が重ねるようにして言った。
「だってさあ、門田、お前、彼女を櫛部にとられて、どうしてヘラヘラ笑
ってられるわけ?」
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