|
どうして自分がこんなにはしゃぎ回っているのか、寛敏にはよくわから
なかった。逆に大樹のほうが先ほどからふさぎ込んでしまっている。
秋葉たちがホームに到着している電車の最後尾へ向かって大声を上げな
がら走っていた。それを、寛敏も追いかけた。すぐ後ろから黙ったままの
大樹が追ってくる。
前の3人に続いて、寛敏も電車に飛び乗った。座席はたくさん空いてい
たが、なんとなく腰を下ろすのがおっくうで手すりにつかまって通路に立
った。
「いいのかよ、お前」
続いて乗ってきた大樹が脇に立って言った。
「いいって――なにが」
「いや、だから……」
歯切れの悪い口調で大樹が首をひねる。
寛敏は、プッ、と吹き出した。
宮地と涌島が2人を挟むようにして吊革につかまる。
「だからって」と寛敏は笑いながら言う。「お前、あいつが好きなんだろ
?」
「…………」
大樹は、黙ったまま寛敏から目をそらせた。
「へんだよ、お前ら」涌島が首を振りながら口を出した。「普通だったら、
お前ら殴り合いになるとかさ、そういう関係なんじゃないの?」
「なんでだよ」
寛敏が訊き返すと、涌島は口を尖らせた。
ドアが閉まり、電車が動き始める。
「だってさあ」と涌島は口を尖らせたまま言う。「門田、お前、彼女を櫛
部にとられて、どうしてヘラヘラ笑ってられるわけ?」
|