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 24:12 銀座駅
 葛原寿郎
(くずはら としお)


    「もう、入線してるぞ!」
 声を上げながら、葛原は階段を駆け下りる。
 ホームに人々の動きが見える。
 湯浅は、葛原のやや後ろを、二段おきにヒョイヒョイと下りている。

 いったい、課長はどういうつもりなんだ?

 階段を下りながら、葛原は胸の中で毒づいた。
 犯人を捕らえるつもりがないのか? 母親が確認したなら、それでいいじゃないか。あとは犯人をふん捕まえるだけだろう。
 どうして3回も確認しなきゃならないんだ。子供は無事だったのだ。それがわかれば、いいだけだろう。

 階段を下りきると、向こうに竹内主任の姿が見えた。その横には青いクーラーバッグを持った中年男性が立っている。写真で見た被害者の父親だ。
 父親の腕を狩野刑事が掴むようにしてホーム中央へ誘導している。

 それを横目で確認し、周囲に注意を払いながら、葛原は湯浅と一緒に竹内主任のほうへ歩いた。
 犯人らしい人物の動きは見えない。

 軽く、うなずく程度に会釈をすると、竹内主任が低い声で言った。
「浅草行だ。ホシは浅草行から現われる」
「浅草行……?」
 思わず訊き返し、葛原は隣の湯浅に目をやった。
 湯浅は、眼を細めるようにして葛原を見返した。

 浅草行から犯人が現われる?

 電車が停まっている反対側に目をやった。


     湯浅  竹内主任 被害者の父親
    狩野刑事

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