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 24:12 銀座駅
 湯浅 賢
(ゆあさ さとし)


     葛原さんの後を追うようにして、湯浅は大股で階段を下りた。

「もう、入線してるぞ!」
 葛原さんが言う。
 見ると、ホームの端に、銀色の車両が見えた。

 ということは……。

 階段を駆け下りながら、湯浅は気がついた。
 つまり、すでに誘拐犯が現われている可能性もあるということだ……。

 ただ、ホームには警視庁の竹内さん狩野さんが張っていると聞いている。
 大ベテランだ。雲の上の人だ。
 つい、うわずりそうになる気持ちを必死で抑えつける。

 階段を下りて、ホームを見渡した。
 乗客たちが流れ動いている。電車に乗り込む人、下りて改札へ向かう人。
 葛原さんが足早にホーム中央へ向かうのを見て、湯浅は後を追った。
 その先にいる人物を見て、湯浅の心臓が高鳴った。

 竹内さんだ──。

「浅草行だ。ホシは浅草行から現われる」
 葛原と湯浅が寄っていくと、間髪を入れない口調で、竹内さんが言った。
「浅草行……?」
 葛原さんが、言いながら湯浅に目を返してきた。

 なんのことか、とっさの判断がつかなかった。


    葛原さん 竹内さん 狩野刑事

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