『しゃばけ』の冒頭シーン。
若だんなは、心中で「木戸が閉まる四つまでには店に帰っておきたい」と月もない夜道を急ぎます。その途中、思わぬ事件に遭遇してしまうのですが、「木戸が閉まる」って、一体どういう事でしょう?
江戸時代、日本橋を中心とする町人町は、京都の町をお手本に作られました。町は碁盤の目状になっており、道幅も、通町筋の道路は幅6丈(1丈=約3メートル)、横町筋は幅2丈、3丈、4丈とされました。そして、60間(約108メートル)四方を一区画とし、ブロックごとに木柵で囲み、町から町へ出入りする際には「木戸」と呼ばれる門を通らざるを得ないように出来ていたのです。これは町の治安を守ったり、放火を防いだりするための制度で、大坂や京都にもあった制度です。
木戸は「木戸番」と呼ばれる番人によって明六つ(季節により午前4時頃~6時頃)に開かれ、夜四つ(同じく午後9時半頃~10時半頃)に閉められてしまいます。ですので、夜の間は自由な出入りは許されず、木戸番に左右の小さな潜り戸を開けてもらって出入りするのです。
木戸が閉まってから帰ると、なぜこんなに遅くまで外出していたのかなど説明しなければならなかったり、あらぬ疑いをかけられたりと面倒なことも多い(もちろん手代の二人にもやいのやいの言われますし、ね)ので、若だんなは焦っていたというわけです。