ホーム > 書籍詳細:武士の家計簿―「加賀藩御算用者」の幕末維新―

新史料発掘! 歴史観が変わる圧倒的面白さ! 仕事は経理、小遣い5840円、借金地獄、リストラ……混迷の幕末を算盤ひとつで生き抜いた武士がいた。

  • 受賞第2回 新潮ドキュメント賞
  • 映画化武士の家計簿(2010年12月公開)

武士の家計簿―「加賀藩御算用者」の幕末維新―

磯田道史/著

734円(税込)

本の仕様

発売日:2003/04/10

読み仮名 ブシノカケイボカガハンゴサンヨウモノノバクマツイシン
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 223ページ
ISBN 978-4-10-610005-5
C-CODE 0221
整理番号 5
ジャンル 日本史、家事・生活の知識
定価 734円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2010/05/28

国史研究史上、初めての発見! 「金沢藩士猪山家文書」という武家文書に、精巧な「家計簿」が完全な姿で遺されていた。タイム・カプセルの蓋を開けてみれば、江戸時代史や日本近代史の見直しを余儀なくされる驚きの連続。気鋭の研究者による意欲作。

著者プロフィール

磯田道史 イソダ・ミチフミ

1970(昭和45)年岡山市生まれ。歴史家。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。2018年3月現在、国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮ドキュメント賞受賞)、『天災から日本史を読みなおす』(日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、『日本史の内幕』など著書多数。

目次

はしがき 「金沢藩士猪山家文書」の発見
第一章 加賀百万石の算盤係
わかっていない武士の暮らし
「会計のプロ」猪山家
加賀藩御算用者の系譜
算術からくずれた身分制度
御算用者としての猪山家
六代 猪山左内綏之
七代 猪山金蔵信之
赤門を建てて領地を賜る
江戸時代の武士にとって領地とは
なぜ明治維新は武士の領主権を廃止できたか
姫君様のソロバン役
第二章 猪山家の経済状態
江戸時代の武士の給禄制度
猪山家の年収
現在の価値になおすと
借金暮らし
借金整理の開始
評価された「不退転の決意」
百姓の年貢はどこに消えたか
衣服に金がつかえない
武士の身分費用
親戚づきあいに金がかかるわけ
寺へのお布施は一八万円?
家来と下女の人件費
直之のお小遣いは?
給料日の女たち
家計の構造
収入・支出の季節性
絵にかいた鯛
第三章 武士の子ども時代
猪山成之の誕生
武家の嫁は嫁ぎ先で子を産むのか?
武家の出産
成育儀礼の連続
百姓は袴を着用できなかった
満七歳で手習い
満八歳で天然痘に感染
武士は何歳から刀をさしたのか
第四章 葬儀、結婚、そして幕末の動乱へ
莫大な葬儀費用
いとこ結婚
出世する猪山家
姫君のソロバン役から兵站事務へ
徹夜の炊き出し
大村益次郎と軍務官出仕
第五章 文明開化のなかの「士族」
「家族書簡」が語る維新の荒波
ドジョウを焼く士族
廻船問屋に嫁ぐ武家娘
士族のその後
興隆する者、没落する者
第六章 猪山家の経済的選択
なぜ士族は地主化しなかったか
官僚軍人という選択
鉄道開業と家禄の廃止
孫の教育に生きる武士
太陽暦の混乱
天皇・旧藩主への意識
家禄奉還の論理
子供を教育して海軍へ
その後の猪山家

あとがき
参考文献リスト

蘊蓄倉庫

時代劇でよく見る「小判」は、現代の価値に換算するといくらくらいか?

 悪代官が菓子折りの下に隠された小判を見てニヤリ、というのは時代劇の定番です。では、あの小判一両は大体、現代の価値にしていくらなのでしょうか? 様々な計算式がありますし、なんと言っても江戸時代は300年ちかくもあります。正解を断言するのは難しいようです。日本銀行貨幣博物館の試算では、おおよそ一両=30万~40万円となっています。この場合、銭形平次でおなじみの寛永通宝の一文銭は一枚50円程度になるそうです。また、米価をもとに考えた場合には、一両=5万円となり、一文銭は10円程度、となるようです。いずれにせよ、小銭とはいえお金を撒いていた銭形平次は、ずいぶん気前が良い人だったのは間違いありません。『武士の家計簿─「加賀藩御算用者」の幕末維新─』(磯田道史・著)では、幕末のサラリーマン武士の生活ぶりが活き活きと描かれています。

掲載:2003年4月25日

立ち読み

はしがき 
「金沢藩士猪山家文書」の発見

「金沢藩士猪山家文書」という武家文書に、精巧な「武士の家計簿」が含まれていることを知ったのは、まったくの偶然であった。長年、武士の家計簿を探していた筆者にとっては、僥倖そのものであった。本書は、この武士家族の家計簿に焦点をあて、江戸時代から明治・大正にかけて、武士・士族がどのような日常生活をおくったのかを描くものである。
 まず「はしがき」として、この稀有な古文書が発見されたときの経緯をありのままに記しておきたい。
 私が、猪山家文書に出会ったのは、平成十三年の夏のことである。暑い日であったが、私は噴き出る汗もぬぐわず、地下鉄の階段を駆け上がって、神田神保町の古書店をめざしていたのを憶えている。ポケットには現金十六万円がねじ込まれていた。言うまでもなく古文書を買い取る代金であり、一刻もはやく目的の古文書をみようと、急いでいた。そして、古書店につくなり、主人にこういった。「見せてください。目録四番の金沢の古文書です。お願いします」。
 これほど慌てていたのには理由がある。
 私のもとに一冊の古文書販売目録が郵送されてきた。歴史研究者の自宅には、よくこの種の販売目録が送り付けられてくる。いつものように物憂い目でパラパラとめくってはみた。古文書が商品化されるのは、あまり好ましいことではない。しかし、史料が廃棄処分から救われ、古書市場に流れて、研究者の目にとまることもある。目録のあるページをひらいた瞬間、私の目は釘付けになった。
 そこには一つの古文書の写真があった。説明には「金沢藩楮山家文書 入拂帳・給禄証書・明治期書状他 天保~明治 一函 十五万円」とあった。私は直感した。(これは武士の家計簿かもしれない……。しかも、かなり大部で精密な)。急いで受話器をとって、販売元の古書店に電話をかけると「まだ売れていない」という。すぐに銀行に行って現金を引き出し、地下鉄に飛び乗って、神田神保町にあるその古書店秦川堂に駆けつけたのであった。
 見るからに慌てている私とは逆に、古書店の主人は落ち着いたものである。「それです」。ゆっくりと、ゆびさした。そこには古い和紙を詰め込んだ段ボールが一つおかれていた。温州みかんの箱であった。おそるおそる近づき、その古文書をめくった私は思わず息を呑んだ。それはまさしく「武士の家計簿」であった。しかも、ただの家計簿ではない。驚くべきことに、天保十三(一八四二)年七月から明治十二(一八七九)年五月まで、約三十七年間(三十六年分)にわたって残されていた。幕末武士が明治士族になるまでの完璧な記録であった。
 その日から、私と古文書との格闘が始まった。自宅の食卓が古文書を解剖する「手術台」になった。古文書の汚いホコリは不潔であり、食卓には禁物であるが、そんなことはどうでもよかった。一枚一枚めくって写真をとり複写をして解読していく。すると、いろいろなことがわかってきた。金沢藩、今日では加賀藩と呼ばれることのほうが多い。販売目録には「楮山家」とあったが、これは読み違えであり、正しくは「猪山家」の文書であること。家計簿だけでなく明治初年の家族の書簡や日記が含まれていること。毎日が発見の連続であった。古文書を調べるにつれて、この家族の経験した歴史が次第に浮かび上がってきた。驚いたことに、猪山家は、すでに幕末から明治・大正の時点で、金融破綻、地価下落、リストラ、教育問題、利権と収賄、報道被害……など、現在の我々が直面しているような問題をすべて経験していた。
 古書店で購入した古文書には、すさまじい社会経済変動を生き抜いた「ある家族の生活の歴史」が缶詰のように封じ込められていたのである。

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