特集 生誕一〇〇周年 よみがえる三島由紀夫
新潮 2025年2月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2025/01/07 |
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JANコード | 4910049010259 |
定価 | 1,200円(税込) |
特集 生誕一〇〇周年 よみがえる三島由紀夫
【講演録】
◆三島由紀夫の絶望の先へ/平野啓一郎
なぜ彼は「天皇陛下万歳」を叫び、割腹自殺を選んだのか。虚無の思想を克服するためのいくつかの問い。
【論考】
◆『金閣寺』担当編集者の葛藤――菅原國隆宛書簡を読む/井上隆史
「人間病」の構想が代表作へと結実するまで。作家と編集者の蜜月を証立てる11通の手紙とその後の関係。
特別企画 1――三島由紀夫への手紙
◆拝啓、三島由紀夫/川本 直
◆私へ/九段理江
◆残された〈結び目〉の謎/佐藤 究
◆「文化の不満」をどう解消するか/島田雅彦
◆陳腐な死に方の陳腐でないあなたヘ/田中慎弥
◆別の「生を」/中村文則
特別企画 2――三島由紀夫の文
【随筆】
◆三島の死/ゴア・ヴィダル(川本 直・訳)
◆創造と礼節/横尾忠則
【創作】
◆ナラヤン家の人々/アキール・シャルマ(小野正嗣・訳)
◆中野家の人々/小野正嗣
米国インド人コミュニティを舞台にした短篇と、それに触発された訳者=小説家からの海を越えたアンサー。
◆アンザイレン/高山羽根子
時代とともに変化する登山の倫理。シマモリはネイトウさんをパートナーに、戸山公園で予行演習を試みる。
【ノンフィクション】
◆触れるポートフォリオ(第7回)ディストピアないしはユートピア/島本理生
【対談】
◆食のフィールドワーカー/平野紗季子×吉本ばなな
飲食店ひとつひとつに、宇宙が丸ごと詰まっている――食いしん坊ふたりが分かち合う、受け身の奇跡!
◆悲しみを乗り越えるために書く/津村記久子×島田潤一郎
『うそコンシェルジュ』の執筆背景にあった、幼い頃の疎外感。人生はモテて解決することばかりではない。
【リレーコラム 街の気分と思考】
◆透明な詩人・谷川俊太郎/マーサ・ナカムラ
◆下高井戸シネマで映画と出会う/ゆっきゅん
■■ 新潮 ■■
◆水浴び/小原 晩
◆「穴のあいた言語」が「真理」をゆさぶる/斎藤 環
◆チーズの好きな王さま/鈴木ジェロニモ
◆追悼すること、地図を描くこと、批評を書くこと/松田 樹
◆ニューヒッピー/山谷佑介
【書評委員による 私の書棚の現在地】
◆小池水音『あのころの僕は』/高瀬隼子
◆ジャン・アメリー『老いについて 反乱と諦念』(初見 基・訳)/小池水音
■■ 本 ■■
◆円城 塔『コード・ブッダ 機械仏教史縁起』/石井遊佳
◆鈴木涼美『不倫論 この生きづらい世界で愛について考えるために』/石島亜由美
◆上田岳弘『多頭獣の話』/島口大樹
◆金原ひとみ『ナチュラルボーンチキン』/鈴木涼美
◆石田夏穂『ミスター・チームリーダー』/砂川文次
◆小川洋子『耳に棲むもの』/竹中優子
◆アンドレイ・クルコフ『灰色のミツバチ』(沼野恭子・訳)/豊崎由美
◆内村薫風『ボートと鏡』/長瀬 海
◆四人のファーガソンの生涯――ポール・オースター『4 3 2 1』(柴田元幸・訳)を読む/津村記久子
【連載コラム】
◆料理の人類学のかたわらで(第7回)/藤田 周
オオゼキ下北沢店だけの家庭料理
◆見えない音、聴こえない絵(第233回)/大竹伸朗
縄文駐車場
【連載評論】
◆独りの椅子――石垣りんのために(第10回)/梯 久美子
◆小林秀雄(第113回)/大澤信亮
■■ 連載小説 ■■
◆Ifの総て(第8回)/島田雅彦
◆湾(第9回)/宮本 輝
◆荒れ野にて(第82回)/重松 清
第57回新潮新人賞 応募規定
執筆者紹介
この号の誌面
編集長から
生誕一〇〇周年
よみがえる三島由紀夫
◎一九二五年一月十四日、平岡公威はこの世に生を享けた。十六歳で「花ざかりの森」を発表してから、四十五歳で「豊饒の海」を完結させた日に自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を遂げるまで、彼は作家・三島由紀夫として短くも濃密な人生を送ることになる。その死に方もあって、三島ほど好悪の分かれる文豪もいないだろう。大著『三島由紀夫論』をものして近年の再評価に寄与してきた平野啓一郎氏は、作り物めいた華麗な文体の根底にある虚無を指摘し、克服を試みる。井上隆史氏の論考は新発見書簡の読解を通して、楯の会の活動に邁進する作家に忠告した(それゆえ絶縁されてしまった)『金閣寺』担当編集者の存在を浮かび上がらせる。さらに、特別企画「三島由紀夫への手紙」では三島の影響を公言する現代の書き手たちが、批判も含めてこの先輩作家への思いを率直に綴ってみせた。これは三島を過度に称揚するのでも貶めるのでもない、生誕一〇〇年の節目に等身大で見つめるための特集である。
編集長・杉山達哉
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
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文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。