新潮新人賞
主催:新潮社 発表誌:「新潮」
第52回 新潮新人賞 受賞作品
わからないままで
追いつかれた者たち
受賞作品、各選考委員の選評については、2020年10月7日発売の「新潮」11月号にて掲載いたします。
受賞の言葉
《受賞作》
わからないままで/小池水音
【略歴】(こいけ・みずね)
1991年12月6日、東京都生まれ。28歳。慶應義塾大学総合政策学部卒業。東京都在住。
【受賞の言葉】
記憶の遠くにある些細な出来事を、スケッチするように書きはじめたことを覚えている。次第に生じた流れに筆を任せると、実際の記憶からは離れていったが、たしかに踏みしめる感覚はむしろ増していった。章を区切り、次の章へと移るとき、背の高い欅の木に囲まれたアパートの部屋の静けさが、一段ずつ深まるように聴こえた。書き手として足りないものを身につけていくこれから、しばらくはあの静けさが頼りになるのだろうと感じている。
[→]受賞者インタビュー 別れをいかに表現しうるか/小池水音
《受賞作》
追いつかれた者たち/濱道拓
【略歴】(はまどう・ひらく)
1980年12月5日、熊本県生まれ。39歳。明治大学法学部卒業。東京都在住。
【受賞の言葉】
小説は読み手の、素朴な欲求に応えなくなりました。大胆だ、面白い、惹きつけられる。それを跳び越え、極私的な心理の機微や、繊細・独特な語彙で狭い世界を再構成する離れ業が売り、となってはいませんか。私は、漫画、映画と張り合いたい。小説は内向的なものですが、いっそ拍車をかけて、絶望的な、身につまされる、一度、本の世界に抱かれてまた帰って来れるものをつくりたいのです。生意気ですが、そこを買ってください。
第52回 新潮新人賞 候補作品
鳥の顔 | 久栖博季 | |
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わからないままで | 小池水音 | |
追いつかれた者たち | 濱道拓 | |
石の交信 | 川瀬章太 | |
大団円 | 深町壮介 |
第52回 選考委員
過去の受賞作品
- わからないままで追いつかれた者たち
- 尾を喰う蛇
応募規定 第53回 新潮新人賞
本賞が待ち望むのは、
文芸の新たな可能性を拓く
未知の才能の劇的な登場です。
当選作 |
正賞―特製記念ブロンズ楯、副賞―五十万円 |
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締切 |
二〇二一年三月三十一日(当日消印有効) |
発表 |
「新潮」二〇二一年十一月号誌上に発表(予選通過作品・作者名は十月号に掲載) |
応募規定 |
未発表の小説に限る。枚数は四〇〇字詰め原稿用紙(ワープロの場合は四〇〇字換算)二五〇枚以内(短篇も可)。同人雑誌発表作や他の新人賞に応募済みの作品は対象外です。 原稿はしっかり綴じ、冒頭に表題、枚数(四〇〇字換算)、筆名、本名、住所、電話番号、年齢、職業、略歴を明記する。また、別紙一枚にも同様の内容を明記し、原稿に添付してください。 宛先は〒162-8711 東京都新宿区矢来町71 新潮社「新潮」編集部 第53回新潮新人賞係。 当選作の出版権は小社に帰属します。 原稿は返却しませんので、必要な方は必ずコピーをとっておいてください。応募や選考についてのお問い合わせには応じられません。 応募に関する個人情報は、賞の発表・連絡以外には利用いたしません。 |
第53回 選考委員(五十音順・敬称略)

大澤信亮オオサワ・ノブアキ
君が何かを期待しているなら、私はそれを殺す門になろう。君が何もかもに絶望しているなら、その闇に残る最後の光となろう。半端な気持ちなら止めてくれ。ここに立つために支払った代償のすべてを賭けて読む。
小山田浩子オヤマダ・ヒロコ
本当のことが好きです。どんなに壮大でもささやかでも荒唐無稽でも過去でも未来でも、なにかの現実が描かれていてほしい。そして読むよろこびがある作品になら私は必ず丸をつけます。どうか安心してご応募ください。
鴻巣友季子コウノス・ユキコ
日本語なのに異言語で書いてある気がする小説を読みたい。遠い彼岸に架けられない橋を架けようとする小説、自分がだれだかわからなくなるような小説を読みたい。読ませてください。
田中慎弥タナカ・シンヤ
作家を目差す人にとって、田中慎弥ほど御しやすい選考委員はいないだろう。田中一人を騙せないようではどうしようもない。田中一人を騙しているようでは心許ない。それもこれも、書かなければ始まらない。