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ひたすらに感謝

小説家 阿部智里

 私の「十二国記」との出会いは『図南の翼』でした。中学校の図書室で、偶然にも自分とほとんど年の変わらないしゅしょうが王を目指す物語を手に取ったわけです。王の不在により苦しむ人々に囲まれながら、自分は何不自由なく暮らす彼女の姿は、己と重なるものがありました。

『風の万里 黎明の空』においてけい国の王であるようが国民の一人一人に対し「王であれ」と願ったように、「十二国記」は、全編を通し、今この世界を生きる全ての人間に対して「王であれ」という、非常に強いメッセージを投げかけています。同時に、それぞれのエピソードとキャラクターから、「王とは何か」という問いを常に発し続け、その問いへのひとつの答えも誠実に示し続けているように思います。

 たい国をめぐる物語において、既に問いは投げかけられました。今度の新刊で、その問いに対する答えが描かれているはずです。

 産みの苦しみという言葉がありますが、小野先生は、あれだけ広大な世界を産み出されたのです。それだけでも信じられないほど大変なのに、とてつもなく巨大な問いを投げかけ、なおかつその答えをも描かなければならないというのは、外野の想像を絶する苦しみがあったに違いありません。

 故に、新刊が発売されると聞いた時には、読者として歓喜すると同時に、純粋な尊敬の念と多大なる感謝の念を覚えました。

「十二国記」の続きを書けるのは、この世でたった一人、小野不由美先生だけなのです。

 小野先生、我々読者の目に見える形で物語の続きを示して下さったことに、心からの御礼を申し上げます。

 本当にありがとうございました。

 新刊、めちゃくちゃ楽しみにしております!

yom yom vol.57 2019年8月号より)