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取り組み事例の紹介

読書を通して自分を見つめ直す「ワタシの一行」

米子市立湊山中学校(鳥取県)

 米子市立湊山中学校では、2013年夏期休業中の3年生の作文課題として「ワタシの一行大賞」に参加。最終学年の夏休みにも拘らず、95名もの生徒が作品を応募してくれました。
 3年国語科担当の田代慎一郎先生より、「ワタシの一行」についてのご感想が寄せられています。


新潮社 「ワタシの一行」コンクールについて
米子市立湊山中学校 国語科 田代慎一郎

 読書に親しみ読みを深めるための学習活動としては、これまで、アニマシオン(*読書を深めるゲーム活動)を取り入れたポップカードを作り、地域の書店に掲示してもらう活動などを行っていました。
 作文については、鳥取県主催の「少年の主張」などを中心に課題を出していましたが、いわゆる「読書感想文」にはそれほど取り組んでいませんでした。
 中学生と直に接する国語教員の実感として、読書感想文は生徒に心理的な負担が大きいと感じています。読書に親しみ、読書からより深く学ぶための課題が、逆に「読書嫌い」「作文嫌い」を増やす可能性があるのではないかとも思います。
 2014年度は、原稿用紙1枚(400字相当)という短さや、「一行抜き出せばいい」という気安さに惹かれ、「読書嫌いを作らないかもしれない」と考えて「ワタシの一行大賞」に参加をしました。


生徒作品を帯にして図書館に展示

 実際に生徒の取り組む様子や作品を見て、「ワタシの一行」を創作することは、一般的な「読書感想文」と大きく質が異なると感じました。それは、「読書感想文」を書く行為においてはあくまで対象の「本」の内容が主体であるのに対し、「ワタシの一行」に取り組む行為では「ワタシ」と向き合うことが主体になる、ということです。
「ワタシの一行」では、これまでの読書感想文とは根本的に異なる取り組みをすることができます。あくまで、主体は本ではなく「ワタシ」です。本全体の文脈がおぼろげでもかまわない。極端に言えば、主人公の名前やあらすじが抜け落ちていてもかまわない。ただ一節だけ、「ワタシ」の心に生きている言葉があればいいのです。逆に言えば、400字という短さは、「一行」と「ワタシ」との関係性だけに焦点を当てることとなります。その結果、生徒は本を紹介する書評としての読書感想文ではなく、読書を通して自分を見つめ直す文章を書くことが出来ました。
 これは、参考例としてあげられていた角田光代さんの作例が素晴らしかったことも大きな要因でしょう。「人は本を必要とする」の引用以後、引用元書籍『さがしもの』の内容に関しては一切触れられずに、その一文が呼び起こした筆者の記憶が語られます。自分の心と結びつく一文を、角田さんは「小説の心臓」と表現しています。そして、心臓は読み手によりいくつもある、とも述べた後にこう挑発します。「あなたの心臓はどこですか」と。
 生徒は、その挑発に応えるように本の中の心臓を探す行為を通して、自分の心臓と向き合いました。

 何となく読んだ一冊の中の、何となく目にとまった一行を選んでも「ワタシの一行」コンクールの規定は満たすことができます。しかし、「何となく」の出会いには満足することができない生徒も多かったようで、学校図書館だけでなく、郊外の書店で、市立図書館で、「しっくりくる一行が見つからないから」と本を求めて探す生徒の姿を見かけました。
 また、逆に「この本がいい」と決めた理想の本と出会えているにもかかわらず、最も心に響く一行を選ぶことができず何度も読み返した、という生徒もいました。
 文字数を原稿用紙1枚に限定する、引用を主体とする、という一風変わった読書感想文でコンクールを行うことは、新潮社にとっても野心的な試みだったのではないでしょうか。
 その意欲的な挑戦は、確かに生徒に届いていたようです。

 また、このコンクールの参加にあたっては、本校の学校図書館とも連携を行い、「該当書籍の展示」や、「生徒作品をもとに作成した帯の掲示」を行いました。
 本の帯に記された一行の引用文をみると、本の内容だけでなく、その引用を行った人物の内面に向き合うことができるように感じます。
 自分がもっともたくさんのものを受け取った一行を示す。自分と同じような体験をし、同じように悩み、喜んだ人にはきっとその一行の意味が通じるでしょう。「あなたも、ここを選んだんだ!」という思いを共有できるかもしれない。
 図書館での展示から、読書についてそんな新しい広がりがあるかもしれないと感じました。
 いつか、生徒たちの選んだ一行と、そこに込められた思いが全国の方に届き、新たな世界を広げていく手助けができたらと願っています。

*

 以上のように、田代先生は大いに手応えを感じて下さったようです。自分だけの「一行」を選ぶという行為によって、生徒たちに起った変化、そして図書館や書店など「本のある場所」での新たな出会いなど、湊山中学校での試みは「ワタシの一行」の可能性を教えてくれます。


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